【完結】愛すればこそ奪う

つくも茄子

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全てを捨てて愛に生きた夫婦のその後

駆け落ちした幸せな夫婦


王都を脱出して八年。
嘗ての侯爵家の若君と男爵家出身の美しいメイドは夫婦として田舎町で幸せに暮らしていた。
互いに貴族出身であったため平民の暮らしは大変だったが、持ち得ていた教養らが役に立ち、何とか暮らせていた。

夫のアーサーは、初等学校の教諭の職に就いていたため生活は安定していたし、妻のアンヌは、専業主婦であったが器用な裁縫術を駆使して、刺繍ものや編み物を売り生計を支えていたのだ。
田舎町のため、教養ある人物の存在は大変重宝された。
二人も、初めての平民生活に目を白黒させながらも、周りの人々に支えられながら一つ一つ慣れていった。
周囲も美しく教養もありながら市民生活に慣れていない二人が”訳アリ”であることは気が付いていたが、気さくな二人に対して何かをいう事もなかった。

それと言うのも、二人がとても愛し合っていて、一生懸命田舎町に慣れようとしていたからだった。


若い夫婦は、幼馴染であり、互いに初恋の相手であり、秘密の恋人同士だった。
何故、秘密の恋人かというと、身分違いでもあり、アーサーには婚約者がいたからだ。
貧乏侯爵家の次男で、金のために成り上がりの子爵令嬢と婚約していたのだ。
しかもアンヌは、男爵令嬢ではあるものの、そこまで裕福でなかったため、夫の家である侯爵家でメイドとして働いていた。
もっとも、メイドと言っても奥方付きの上級メイドである。

秘密の関係は、アーサーの結婚を機に解消されるはずであった。
メイドと言えども、アンヌは男爵令嬢であるし、大変美しい女性でもあった。
彼女と結婚したい男性は多くいた。

愛するアンヌを他の男に奪われることに対する嫉妬はじわじわとアーサーを苛んでいた。
そして、アーサーの結婚が迫るなか、二人は手に手を取って駆け落ちをしたのである。


そこでたどり着いた辺境に田舎町。
余所者の二人にも優しい人々。

最初の一年は慣れない環境に四苦八苦する毎日だった。
慣れ始めた三年目に可愛い女の子を出産した。子育てに右往左往する日々は、あっという間に過ぎていった。
早いもので、生まれた女の子は、来年には初等学校に通う年にまで成長していた。
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