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全てを捨てて愛に生きた夫婦のその後
贖罪
アーサーから、自分達の駆け落ち後に起こった出来事、実家の悲劇を聞かされたアンヌは呆然とした。
(何を言っているのかしら…お父様たちが死んだ…? お姉様が売られた? ネリーが娼婦になったですって? アーサーを襲った犯人がコレット…。男爵家が断絶してた? 私たちはもう貴族ではない?)
情報量の多さから、アンヌは上手く脳内処理が出来なかった。
いや、余りにも悲惨な家族の末路に、現実逃避をおこしかけていた。
ショックで声も出ないアンヌに、アーサーは哀れみを覚えた。
アーサーの実家である侯爵家は何とか無事であるが、アンヌの家族は、一家離散の憂き目にあっている。せめて、残されたアンヌの家族を何とかしたいと思っても、アーサーにはいい考えが浮かばなかった。
(コレットは精神病院で治療を受けている最中だ。未だに私の事を認識できない状態だ。アンヌと会っても、姉だとは分からないだろう。ネリーなら、娼館に行けば会えるが…謝ったところで許されないだろう。しかも、ネリーはただの娼婦じゃない。高級娼婦だ。会って話をするにしても莫大な費用が掛かることは間違いない。
だが、何もしないという訳にはいかない。コレットだけでも引き取ってやりたいが…病院から外に出られることはないだろう。引き取り手がないというだけじゃない。使用していた薬物に汚染されて、現実と妄想の区別が出来ていない。
医者の話では、これからも正気に戻る事は難しいらしい…)
八方ふさがりの状態であった。が、唯一、贖罪が出来るであろうコレットに、できうる限りのことをしてやりたいとアーサーは思っていた。
それが、自分自身の罪を軽くしたいがための行為である事は重々承知している。偽善だと分かっていても、手を尽くしてやりたかったのだ。
薬物依存は回復する者は殆どいない。
だが、近年、ある薬の開発が成功し、それが薬物依存者の回復に一役買っていると言う話も聞く。大量生産できない代物らしく、その分、お金もかかる。
大学での出世コースにいるアーサーは、このままいけば、数年後には教授の椅子が約束された立場だ。給料も今よりもずっと貰える。生活を質素にすれば治療費は何とか工面できるのだ。
目の前にいる妻は、何時までもショックから立ち直れずにいる。恐らく、数日間、もしくは数週間は呆けた状態かもしれない。
妻の気持ちを代弁するように、アーサーはその日を境に、大変な締り屋になった。義妹になるコレットを助けるために最善を尽くす。
それが自分達夫婦の贖罪になると信じて。
アーサーは疑うことがなかった。アンヌも自分と同じ気持ちであると。だからと言うべきか、アンヌに相談もなく決定事項のように、不必要な家財道具等を売り払い、コレットの治療代にした。
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