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「じゃあ、あれはただの市販薬ってことですか?」
「いや、あれは……ラムネみたいなものだよ」
「えぇっ!?」
希は耳を疑った。
「ごめんね、騙すようなことして」
徹が冗談でそんなことをするとは思えず、希は戸惑いを隠せなかった。
「どうしてそんなこと?」
「それは勿論、プラセボ効果があればいいなと思ったからだよ」
「え?」
「希ちゃんの薬の飲み過ぎがやっぱり凄く心配だったんだ」
思いもよらない理由を知り、徹の思い遣りの深さに胸が熱くなる。
「だけど、あの日はたまたま頭痛が治まっただけかもしれないし、さすがに旅行にラムネを持たせるなんて出来ないからね」
徹は苦笑いを浮かべている。
「恥ずかしすぎる……」
希は独り言のように呟く。
徹の言葉をすっかり信じ込み、噛まずにプラセボのラムネを一気に流し込んだ自分を思い出し、可笑しさが込み上げて、ぷっと噴き出した。
「それに、俺は希ちゃんの頭痛が治まった理由が、プラセボ効果ではなかったと思うんだ」
笑い話で終わるのかと思ったが、徹はまだ難しい顔をしている。
「どういうことですか?」
「俺は医者じゃないけど、希ちゃんの体調不良は、心因的な要素が大半を占めてると思うんだよね。緊張とか不安とか……」
「ああ……はい、確かに」
それは希も自覚していたことだ。
「希ちゃんの特効薬は、実は……俺、なんじゃないかって」
「え……」
不意に頬が熱くなる。
「なんて……今、キュンとした?」
徹が白い歯を見せた。
「もうっ、からかわないでくださいよぉ!」
特効薬の副作用は――身体の火照りと、激しい動悸だ。
「別にからかってる訳じゃないよ。薬にばかり頼らないで、もっと俺に甘えて頼って欲しいんだ。俺は、希ちゃんの心を癒す特効薬になりたい」
からかっている訳じゃないのは、表情を見ればわかる。徹が返事を待つように視線を向けている。
希はそんな甘過ぎる言葉に見合う言葉を必死に探していた。
つい数分前に起こった激しい頭痛は、嘘のようにすっかり治まっている。徹といると度々起きるこの魔法のような現象に、希は早くから気付いていた。
「いや、あれは……ラムネみたいなものだよ」
「えぇっ!?」
希は耳を疑った。
「ごめんね、騙すようなことして」
徹が冗談でそんなことをするとは思えず、希は戸惑いを隠せなかった。
「どうしてそんなこと?」
「それは勿論、プラセボ効果があればいいなと思ったからだよ」
「え?」
「希ちゃんの薬の飲み過ぎがやっぱり凄く心配だったんだ」
思いもよらない理由を知り、徹の思い遣りの深さに胸が熱くなる。
「だけど、あの日はたまたま頭痛が治まっただけかもしれないし、さすがに旅行にラムネを持たせるなんて出来ないからね」
徹は苦笑いを浮かべている。
「恥ずかしすぎる……」
希は独り言のように呟く。
徹の言葉をすっかり信じ込み、噛まずにプラセボのラムネを一気に流し込んだ自分を思い出し、可笑しさが込み上げて、ぷっと噴き出した。
「それに、俺は希ちゃんの頭痛が治まった理由が、プラセボ効果ではなかったと思うんだ」
笑い話で終わるのかと思ったが、徹はまだ難しい顔をしている。
「どういうことですか?」
「俺は医者じゃないけど、希ちゃんの体調不良は、心因的な要素が大半を占めてると思うんだよね。緊張とか不安とか……」
「ああ……はい、確かに」
それは希も自覚していたことだ。
「希ちゃんの特効薬は、実は……俺、なんじゃないかって」
「え……」
不意に頬が熱くなる。
「なんて……今、キュンとした?」
徹が白い歯を見せた。
「もうっ、からかわないでくださいよぉ!」
特効薬の副作用は――身体の火照りと、激しい動悸だ。
「別にからかってる訳じゃないよ。薬にばかり頼らないで、もっと俺に甘えて頼って欲しいんだ。俺は、希ちゃんの心を癒す特効薬になりたい」
からかっている訳じゃないのは、表情を見ればわかる。徹が返事を待つように視線を向けている。
希はそんな甘過ぎる言葉に見合う言葉を必死に探していた。
つい数分前に起こった激しい頭痛は、嘘のようにすっかり治まっている。徹といると度々起きるこの魔法のような現象に、希は早くから気付いていた。
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