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「菜々子ちゃん、こっちおいで」
平野に手招きされ、菜々子は空いたばかりのカウンター席に移動した。
テキパキと調理する平野を眺める。
目が合い、口元を緩めた平野に、菜々子も笑みを返した。
幸せ過ぎる……
きっと先程の女性客と同様、菜々子の瞳もハートになっているはずだ。
「ん~っ、めちゃくちゃ美味しい!」
満面の笑みを浮かべた菜々子を見て、平野は満足げに微笑んだ。
サラダにはラディッシュの花が咲いている。
「マスタ~ァ、レシピ教えてくださぁい」
今度は悪戯な笑みを浮かべながら、菜々子は先程の女性客の言葉を真似てみた。
「教えたら作ってくれる?」
平野が菜々子に顔を寄せ小声で言う。
「え?」
「作ってくれるなら、教えるよ」
更に小声で言った。
「え……だ、だって平野さん自分で作れるじゃないですか」
「俺は、菜々子ちゃんが作ったのを食べたい」
思いも寄らない平野の言葉にどぎまぎした菜々子は、咄嗟に返す言葉が見付からず、ぎこちなく笑って視線を逸らした。
デザートのアイスを食べ終えると、菜々子はバッグから財布を取り出した。
「お勘定お願いします」
「来てくれてありがとう。今日は俺の奢り」
「えっ、そんなの困……」
言いかけると、平野は人差し指を口の前で立てた。
傍に客がいることに気付き、菜々子は口を噤んだ。
「気を付けて帰ってね。また明日」と、カウンター越しに微笑む平野にキラキラの笑顔を返し、「ご馳走さまでした」と挨拶して店を後にした。
平野に手招きされ、菜々子は空いたばかりのカウンター席に移動した。
テキパキと調理する平野を眺める。
目が合い、口元を緩めた平野に、菜々子も笑みを返した。
幸せ過ぎる……
きっと先程の女性客と同様、菜々子の瞳もハートになっているはずだ。
「ん~っ、めちゃくちゃ美味しい!」
満面の笑みを浮かべた菜々子を見て、平野は満足げに微笑んだ。
サラダにはラディッシュの花が咲いている。
「マスタ~ァ、レシピ教えてくださぁい」
今度は悪戯な笑みを浮かべながら、菜々子は先程の女性客の言葉を真似てみた。
「教えたら作ってくれる?」
平野が菜々子に顔を寄せ小声で言う。
「え?」
「作ってくれるなら、教えるよ」
更に小声で言った。
「え……だ、だって平野さん自分で作れるじゃないですか」
「俺は、菜々子ちゃんが作ったのを食べたい」
思いも寄らない平野の言葉にどぎまぎした菜々子は、咄嗟に返す言葉が見付からず、ぎこちなく笑って視線を逸らした。
デザートのアイスを食べ終えると、菜々子はバッグから財布を取り出した。
「お勘定お願いします」
「来てくれてありがとう。今日は俺の奢り」
「えっ、そんなの困……」
言いかけると、平野は人差し指を口の前で立てた。
傍に客がいることに気付き、菜々子は口を噤んだ。
「気を付けて帰ってね。また明日」と、カウンター越しに微笑む平野にキラキラの笑顔を返し、「ご馳走さまでした」と挨拶して店を後にした。
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