愛のバランス

凛子

文字の大きさ
上 下
11 / 11

十一話

しおりを挟む
「倫君? 私の気持ち伝わってなかった? 私、倫君のこと大好きなんだよ。きっと倫君の『麻里絵愛』が大きすぎて、私の気持ちが隠れちゃってたんだね」

そう言って麻里絵が倫也の胸に顔を埋めると、倫也は両手で優しく抱きしめた。

「体調は大丈夫? 一昨日……しちゃったけど」

耳元で倫也が言った。

「うん。平気だよ」

麻里絵はクスッと笑った。

「俺、ずっと不安だったんだ。麻里絵の笑顔を見てても、麻里絵と身体を重ねて幸せを感じてても、ふとあの日の麻里絵の言葉が頭を過って――」

「今も?」

麻里絵が顔を上げて聞いた。

「今は――」

と言って、倫也ははにかんだ。



「今は?」

もう一度聞く。


「今は、今までで一番の幸せと麻里絵の愛を感じてる」


そう照れながら言った倫也の頬を、麻里絵は両手で優しく包んだ。



「倫君? 愛情注ぎっぱなしだと無くなっちゃうよ」

「えー? そんなことないだろ……」

「でもね、その時は継ぎ足すから『足りない』ってちゃんと言ってね」

「うん。そうするよ」

「倫君。ずっと傍にいるよ。約束する」





【完】
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する


処理中です...