愛のバランス

凛子

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七話

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自宅に戻ったのは、日が変わる間際だった。
テーブルの上に置かれた離婚届と結婚指輪はそのままだった。倫也はやはり帰っていなかった。

どこにいるのだろう。このままもう帰ってこないなんてことは、ない……はずだ。
静かすぎる部屋が落ち着かなくて、麻里絵は見もしないテレビを付け、大きな溜め息を吐いて項垂れた。
倫也は今、何を思っているのだろうか。


ふと時計に目を遣ると、二時をまわっていた。
倫也はまだ起きているだろうか。
麻里絵はスマホの通話ボタンに触れた。

待っていたかのように、一回のコールで繋がった。

『はい』

「倫君、起きてた?」

『うん、起きてたよ』

「夜に倫君がいないのって、会社の旅行の時くらいだったから……寂しい」

『……うん』

倫也はそう言っただけだった。

「今日、寛人君に会って来たんだ」

『……うん』

「倫君に話したいことがあるから、戻ってきてほしい」

『わかった。朝戻るよ』

倫也は淡々と答えた。

「待ってる……」

『あ!』

「ん?」

『戸締まり、ちゃんとして寝るんだよ』

「――はい」

と言って電話を切ると同時に涙がこぼれた。

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