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第一章 『日常』
しおりを挟むーーパシーン!
(はっ!)
周りを見るとみんなが俺の方を見てニヤニヤ笑っている。
「何寝てるんだ、大和。」
後ろから世界史の教科書で先生に頭を叩かれたのだ。
(痛いなー!)
俺がそんな事を思っているとは知らず、
「よーし、授業に戻るぞ。」
と、先生はそ何事も無かったかのように授業を再開した。
(さっきの夢は何だったんだ…やたらと現実味を帯びていたなぁ…。)
おぼつかない表情で教科書の文を見ながらそう思った。
しかし、その後の授業も眠さと、あの夢の事が頭に残っているせいで、集中出来なかった。
最近の授業はテストが近いせいか、先生の気合いの入り方が違う。でも、そんな先生の話でさえも、全く頭に入ってこなかった。
ただただ、あの夢が気になってしょうがなかった。
(ただの夢なのに…でも、普段の夢とは…)
放課後、俺は、いつもの仲の良いメンバーと帰るため、学校の正門の前でいつものように待つ。数分後、校舎の方から、大蔵大聖《おおくら たいせい》、大間太陽《おおま たいよう》、三浦光音《みうら らいと》が、俺を見つけて走って来た。
大聖は柔道で、太陽は陸上の百メートルで全国大会に出場するほどの実力だ。二人とも中学校から始めたのだが、どんどん、才能の花を開かせた。光音もモデルとして活躍している。間違いなく、学校で一番モテている。
三人は俺と今日の学校での出来事を話しながら一緒に残りの三人を待つ。それから十分程経って、松風楓生《まつかぜ ふうき》と滝川湊《たきがわ みなと》が勉強の話をしながら歩いて来る。そして、その後をつけるように、湊の弟の海斗《かいと》が二人の話を聞きながら歩いてる。
楓生と湊は常に学年トップを争ってうほど頭がいい。頭の悪い俺とは、全く違う。海斗は湊の一つ下の弟で彼も、今年、この学校を学校を成績トップで入学した。
楓生が「お待たせ。」と笑顔で言って、俺達に合流する。
俺達七人は家が近所のため、昔から一緒に遊んだり、学校への登下校を一緒にしていた。高校生になった今はも、休みの合うときは七人で買い物に出掛けたり、登校する時は毎日一緒だ。ただ、七人で下校するのはテスト期間の部活がない間だけだ。
俺は、みんなに今日の夢の話を切り出す。
「今日さ、授業中に中世のヨーロッパの夢を見たんだけど、中世のヨーロッパに海帝っていう名前の国王いた?なんか『世界を統一した』みたいな事言ってたんだけど…」
早く、あの夢に出て来た人の正体を知りたい思いで、二人に尋ねる。
「そんな、国王いたっけ?楓生。」
「いや、僕は聞いたことがないよ。世界を統一した人なんてそもそもいないでしょ!だいたい夢だろ?それ。」
楓生は俺を馬鹿にするように笑いながら問いかける。
「確かに夢だけど…なんか、ただの夢じゃないように感じたんだ!」
俺は夢と知っていながら、何故かムキになって言い返していた。
「だいたい、授業に寝るって、大和らしいなぁ。昨日も夜遅くまでゲームしていたの?」
光音が俺に笑ながら聞いてくる。
「ああ、そうだよ!」
俺はふてくされたように言い返した。
「ゲームのやりすぎで頭おかしくなったんじゃねーの。」
太陽の言葉に俺は何も言い返すことができなかった。俺も中学校の時は空手で全国大会に出場するほどだったが、引退してからは、部活のせいでやりたくても我慢していたゲームにのめり込んでいった。この高校にも、空手の推薦のおかげで入ることができたのだ。
「大和君もゲームばかりしてないで、たまには体を動かしたりした方がいいよ!」
海斗が俺を心配そうに言う。
「海斗の言う通り、ゲームは程々にしとけよ!あんまりやりすぎると、大好きな柊《ひいらぎ》アリスちゃんが嫌われるぞ!」
大聖は俺を見ながらニヤニヤしながら言ってくる。
アリスはイギリス人の父親と日本人の母親から生まれたハーフで学校一の美少女だ。まるで、アニメのヒロインにいそうな感じで、ポニーテールで結ばれた綺麗な茶色の髪が、廊下ですれ違う度俺の目を引く。今年からクラスが同じになったが、同じクラスになって三ヶ月経った今まで一度も話したことない。
「うるせぇな!どおせ、あんなに可愛いんだから彼氏ぐらいいるだろ!」
俺は自分の顔が、赤くなっているのがわかった。
そんな会話をしながら帰り、家の近くになったので、皆と別れた。
家に帰ると母さんが晩ご飯の準備をしているのが玄関のドアを開けた瞬間に、ご飯の匂いで分かった。
そのドアの音に母さんはすぐに気づいた。
「あら、おかえり。どうする、ご飯もうすぐ出来るけど、すぐ食べる?」
「うん。」
俺は荷物を二階の自分の部屋に置くと下に降りてテーブルに座った。母さんが目の前にサラダ、カレーを置いた。カレーは昔から好きな食べ物だった。
しかし、口に入れた瞬間、俺は自分を疑った。
味がしないのだ。
(ーーオイオイ、これは冗談だろ!)
二口、三口とカレーを食べては見るものの味がしないのだ。
「母さん、これ、いつものカレー?」
「何言ってん、当たり前じゃない。」
自分の分のカレーを分ける母が自分を見て笑っている。自分でもおかしな事を言っているのは分かっていた。ただ、自分が信じられなかった。
「ごめん、食欲ないから、もういいや。ごちそうさま。」
俺は、スプーンをテーブルにおいて、自分の部屋に戻った。
(一体、俺の体、どうしたんだよ。昼までは普通に弁当の味分かったのに…まぁ、どうせ最近寝不足が続いたから疲れが溜まってるんだろう。)
その日は早く寝ることにした。
「お母さーーん!助けてー!」
少女の声が燃えている家から聞こえる。周りに何人か人がいるが、何もしないで見ている。
(なんで、誰も何もしないんだ!中に人がいるんだぞ!)
「いいか、お前達!この村の家すべて燃やすのだ!この村の住人を神への生贄にするのだ!」
(コイツらが…コイツらがこの家を燃やしているのか。)
そして、その瞬間、目の前が暗闇に包まれたのと同時に、低い声が聞こえた。
「お前の手で、腐りきったこの世界を救いたくはないか…」
「俺が…何を言ってるんだ…」
「お前の手で世界を変えろ。」
「いや、だからどういう事だよ!」
「大和!朝よ!いい加減起きなさい」
母さんの、声が頭に響く。
「 あっ、母さんおはよう…」
眠い目を擦りながら、母さんに言う。
「やっぱり、あれは、夢だったのか…また、現実味を帯びた夢だったなぁ…」
「何訳の分からない事を言ってんの!もう、七時半よ!みんなと七時五十分に待ち合わせでしょ!」
「はぁ!?」
時計をすぐに確認すると、
ーー7:30ーー
布団から、飛び起きて、急いで着替え、階段をダッシュで降りてリビングに行くと、ハニートーストが用意されていた。
「早く、食べちゃいなさい!」
母さんが急かす。
急ぎながらも、昨日の夜の出来事が頭をよぎる。
(どうか、味がしてくれ。)
祈りながら、トーストを口に入れる。
(ーー味がする!やっぱり昨日のは疲れていただけか!)
安心して、心にあった不安が無くなっていった。
が、焦る気持ちに変わりわなかった。
急いで食べ終わると、歯を適当に磨いて、家から飛び出した。梅雨の時期の独特な空気の匂いがする。
待ち合わせの時間まであと少し、目の前にはみんなが待っているのが見えた。
「セーフ!」
俺は息を切らして言う。
「おはよう!大和!セーフじゃないよ。一分過ぎてる!」
湊が背中を軽く叩きながら俺に言う。
「マジかー!みんなわりぃ!」
「しょうがないなー。よし!じゃあ行くか!」
楓生がそう言うと、学校へ歩き始めた。
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