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第一章―イニティウム皇国 『皇国の悪女』
12-4.覚醒
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クリスティーナはリオに導かれ、横たわる騎士達から背を向けた。
その時。
――駄目だ。
ふとクリスティーナへ声が届き、彼女は足を止める。
「……お嬢様?」
突然立ち止まったクリスティーナにリオが声を掛ける。
彼は主人が足を止めた理由に気付いていないようだ。
「リオ、今……」
声が聞こえなかったか。
告げようとしたクリスティーナを甲高い耳鳴りが襲い、その声は途中で途切れた。
頭に直接響くようなその音に堪らず耳を塞ぎ、強く目を閉じる。
「お嬢様? っ、クリスティーナ様……!」
肩を掴み、顔を覗き込むリオ。
クリスティーナを心配する彼の声はその殆どを耳鳴りに遮られてしまい、どこか遠くから聞こえてくるようだった。
そしてそれとは別の声が頭に響く。
『駄目だ、まだ死ねない』
「……っ!」
それは青年の声。そしてクリスティーナはその声に聞き覚えがあった。
しかしそれが誰のものであるのか、瞬時に把握することは出来ない。けれど何故だか、その声の正体を有耶無耶にしてはならないと強く思わされる。
どこで聞いたのか。誰のものであるのか。
『死ねない……っ、誰かがオレの価値を見出すまでは』
再び聞こえる『声』。
クリスティーナはそれを頼りに自身の記憶を漁り、心当たりを探る。
穏やかな口調で話しかける従者、学院で悪評を言い広める貴族達、冷たい目をした姉、建国祭の喧騒――
――リオ、クリスティーナ様!
突如、クリスティーナは弾かれるように振り返る。
その声の主がわかったからだ。
夕刻、誰よりも早く魔物を一掃し自分達の名を呼んで無事を確認しようとした声。自身の失態に謝罪をし、身元を明かした声……。
それらがクリスティーナの中再生される。
――し、失礼致しました。レディング騎士団所属……
「……っ、エリアス・リンドバーグ……!」
振り返ってもその場の状況が変わっているわけではない。
エリアスは意識不明のまま横たわっていて、彼が話すことは不可能だ。
にも拘わらず、クリスティーナの頭の中で彼の声が響く。
『埃でもゴミでもない何かになりたい。それを証明したい』
その声につられるように、クリスティーナの感情は搔き乱される。
生存への執着や強い野心。道半ばで果てようとしていることへの口惜しさ。溢れる感情の数々は今のクリスティーナが抱くものとしては不釣り合いな代物であったがそれに対して違和感を持つことが出来ない。
苦しい、口惜しい、死にたくない。
そんな強い感情へ引き寄せられるようにクリスティーナの足は一歩、また一歩とエリアスの元へ向かっていく。
その時。
――駄目だ。
ふとクリスティーナへ声が届き、彼女は足を止める。
「……お嬢様?」
突然立ち止まったクリスティーナにリオが声を掛ける。
彼は主人が足を止めた理由に気付いていないようだ。
「リオ、今……」
声が聞こえなかったか。
告げようとしたクリスティーナを甲高い耳鳴りが襲い、その声は途中で途切れた。
頭に直接響くようなその音に堪らず耳を塞ぎ、強く目を閉じる。
「お嬢様? っ、クリスティーナ様……!」
肩を掴み、顔を覗き込むリオ。
クリスティーナを心配する彼の声はその殆どを耳鳴りに遮られてしまい、どこか遠くから聞こえてくるようだった。
そしてそれとは別の声が頭に響く。
『駄目だ、まだ死ねない』
「……っ!」
それは青年の声。そしてクリスティーナはその声に聞き覚えがあった。
しかしそれが誰のものであるのか、瞬時に把握することは出来ない。けれど何故だか、その声の正体を有耶無耶にしてはならないと強く思わされる。
どこで聞いたのか。誰のものであるのか。
『死ねない……っ、誰かがオレの価値を見出すまでは』
再び聞こえる『声』。
クリスティーナはそれを頼りに自身の記憶を漁り、心当たりを探る。
穏やかな口調で話しかける従者、学院で悪評を言い広める貴族達、冷たい目をした姉、建国祭の喧騒――
――リオ、クリスティーナ様!
突如、クリスティーナは弾かれるように振り返る。
その声の主がわかったからだ。
夕刻、誰よりも早く魔物を一掃し自分達の名を呼んで無事を確認しようとした声。自身の失態に謝罪をし、身元を明かした声……。
それらがクリスティーナの中再生される。
――し、失礼致しました。レディング騎士団所属……
「……っ、エリアス・リンドバーグ……!」
振り返ってもその場の状況が変わっているわけではない。
エリアスは意識不明のまま横たわっていて、彼が話すことは不可能だ。
にも拘わらず、クリスティーナの頭の中で彼の声が響く。
『埃でもゴミでもない何かになりたい。それを証明したい』
その声につられるように、クリスティーナの感情は搔き乱される。
生存への執着や強い野心。道半ばで果てようとしていることへの口惜しさ。溢れる感情の数々は今のクリスティーナが抱くものとしては不釣り合いな代物であったがそれに対して違和感を持つことが出来ない。
苦しい、口惜しい、死にたくない。
そんな強い感情へ引き寄せられるようにクリスティーナの足は一歩、また一歩とエリアスの元へ向かっていく。
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