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第三章―魔法国家フォルトゥナ 『遊翼の怪盗』
100-3.招待状
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「このオークションは表向きは金持ちたちのパーティーの一環として開催されているものの、その実態は非常にきな臭い。何か問題が起きたとしても僕は責任を取れないし、安全な手段を取りたいというのであれば地道に探す道を選んだ方がいいだろう」
「きな臭い、ですか」
詳細は語られずとも、それがただのオークションではないということはオリヴィエの忠告から察することが出来る。
警戒すべきだと伝えるような口ぶりは三人へ緊張感を与えた。
「それと、そのオークションは表向き仮面舞踏会がメインだと主張している都合上、ドレスコードがある。そもそもとしてその場に即した衣服が用意できないのであれば参加は難しい」
話の区切りがついたというように小さく息が吐かれる。
そしてオリヴィエは封筒をクリスティーナへ差し出した。
「僕から言えるのはこのくらいだ。以上を踏まえた上で参加する、しないの最終的な判断はお前達に任せる」
「貴方は必要ないの?」
「別になくても困らない」
それを受け取りながら問いかけたクリスティーナの言葉に頷きが返される。
「どの道、オークションまで二週間ある。今すぐに決断する必要はないし、結果としてそれが使われなかったとしても僕は何とも思わない」
だから貰っておけとオリヴィエは封筒を押し付ける。
そんな彼の直前の発言に、クリスティーナは一つの疑問を抱く。
「二週間……。それだけの時間があれば、街の店も一通り確認し終えているでしょう。私達がこの国から早く立ち去ることを望むのならオークションの存在を知らせない方が良かったのではないかしら」
至極真面目に投げた問い。
しかしオリヴィエはそれに対し、呆れたようにため息を吐いた。
「……僕は何もお前達を嫌っている訳ではない。厄介だとは思っているが」
そこに大きな違いはあるのだろうかとクリスティーナは疑問を抱く。
しかしオリヴィエは相手が抱く考えなどに興味はないらしく、視線を別の場所へと移動させた。
「自衛はする。だがその過程でお前達の安全を損なっていいとは思わない。それに招待状については僕よりも有効に使えそうな相手に譲ったというだけの話だ」
彼が見やるのは東の通り。
クリスティーナの疑問に答えたオリヴィエは、三人へ背を向けるとそちらへ向かって歩き始める。
「邪魔者はそろそろ退散することにするよ」
「あ! ありがとな」
「お気をつけて」
相変わらずあっさりとした別れ方。軽く手を振りながらも振り返ることのない彼の背中にリオとエリアスが言葉を投げる。
しかしクリスティーナは声を掛けることが出来なかった。
先の彼の返答が胸の内でつっかえるように残り続けている。
その違和感に気を取られている間、オリヴィエへ掛ける言葉は見つからず。結局、その背中が消えるまでクリスティーナが口を開けることはなかった。
「きな臭い、ですか」
詳細は語られずとも、それがただのオークションではないということはオリヴィエの忠告から察することが出来る。
警戒すべきだと伝えるような口ぶりは三人へ緊張感を与えた。
「それと、そのオークションは表向き仮面舞踏会がメインだと主張している都合上、ドレスコードがある。そもそもとしてその場に即した衣服が用意できないのであれば参加は難しい」
話の区切りがついたというように小さく息が吐かれる。
そしてオリヴィエは封筒をクリスティーナへ差し出した。
「僕から言えるのはこのくらいだ。以上を踏まえた上で参加する、しないの最終的な判断はお前達に任せる」
「貴方は必要ないの?」
「別になくても困らない」
それを受け取りながら問いかけたクリスティーナの言葉に頷きが返される。
「どの道、オークションまで二週間ある。今すぐに決断する必要はないし、結果としてそれが使われなかったとしても僕は何とも思わない」
だから貰っておけとオリヴィエは封筒を押し付ける。
そんな彼の直前の発言に、クリスティーナは一つの疑問を抱く。
「二週間……。それだけの時間があれば、街の店も一通り確認し終えているでしょう。私達がこの国から早く立ち去ることを望むのならオークションの存在を知らせない方が良かったのではないかしら」
至極真面目に投げた問い。
しかしオリヴィエはそれに対し、呆れたようにため息を吐いた。
「……僕は何もお前達を嫌っている訳ではない。厄介だとは思っているが」
そこに大きな違いはあるのだろうかとクリスティーナは疑問を抱く。
しかしオリヴィエは相手が抱く考えなどに興味はないらしく、視線を別の場所へと移動させた。
「自衛はする。だがその過程でお前達の安全を損なっていいとは思わない。それに招待状については僕よりも有効に使えそうな相手に譲ったというだけの話だ」
彼が見やるのは東の通り。
クリスティーナの疑問に答えたオリヴィエは、三人へ背を向けるとそちらへ向かって歩き始める。
「邪魔者はそろそろ退散することにするよ」
「あ! ありがとな」
「お気をつけて」
相変わらずあっさりとした別れ方。軽く手を振りながらも振り返ることのない彼の背中にリオとエリアスが言葉を投げる。
しかしクリスティーナは声を掛けることが出来なかった。
先の彼の返答が胸の内でつっかえるように残り続けている。
その違和感に気を取られている間、オリヴィエへ掛ける言葉は見つからず。結局、その背中が消えるまでクリスティーナが口を開けることはなかった。
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