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男友達の家政婦致します
エプロンと私
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結局、二人はピザを全部平らげてしまった。
後片付けをしている菊子に雨が「片付け、手伝えなくてすまないね」と眉を下げて言う。
「いえいえ。片付けも家政婦としての私の仕事ですから。目黒さんが手伝うことありませんよ」
「そう言ってくれると雇った甲斐があるよ」
雨の目の前なので、出来るだけテキパキと働いて見せる菊子。
汚れた食器をまとめ、載せられるだけ、ピザの箱の上に乗せて、さて、キッチンへと運ぼうとする。
「菊子、ちょっとここで待ってて」
雨が菊子を呼び止めた。
「何ですか?」
怪訝な顔をする菊子に雨は「良いから待ってて」と言ってリビングダイニングを出て行ってしまった。
菊子が待つこと、ほんのちょっぴり。
戻って来た雨の膝の上には、何やら白い布が乗っかっている。
雨は、その布を菊子に差し出すと「着けてみて」と言う。
渡されたそれを菊子が広げてみると、エプロンだった。
エプロンの裾の所には小さなフリルが付いている。
フリルは白いレースで蝶の模様があった。
こんな可愛いエプロンを私に付けろと?
菊子の目は点になった。
「いやいや、こんなの、似合わないに決まってるじゃない。エプロンなら私も持ってきましたから大丈夫ですよ」
「良いから着けてみな」
雨にそう言われて菊子は仕方なく渡されたエプロンを身に着けた。
エプロンは、サイズは菊子にぴったりであった。
「どうですか?」
訊かれて雨は菊子を眺めると「悪くないんじゃないかな」と答える。
しかし、雨のその顔は、どう見ても笑いを堪えている様に見える。
「ちょっと、目黒さん、何か笑ってませんか?」
鋭い目つきで雨を睨みつけて菊子が言う。
「わ、笑ってないよ、本当に」
雨が肩を震わせて言う。
「嘘。笑ってるでしょ!」
「いや、ははっ、ちょっと待って……くくっ」
雨は、もう完全に笑っている。
そんな雨を見て、菊子は頬を思いっきり膨らませた。
「もう、信じられない。自分から着けろって言ったくせに笑うとかって最低。だから似合わないって言ったじゃないですか」
「違うって、くくっ……そうじゃなくって。ごめん。本当に待って」
「もう知りません」
菊子がエプロンを外そうとすると、雨の手が、それを止めた。
雨は、何とか笑いを堪えると菊子の顔を見る。
その顔を菊子は冷たい表情で見下ろす。
「ごめん、菊子。笑ったのはね、似合ってなかったからじゃなくって、菊子のエプロン姿なんて想像したことなかったから、エプロンを着けている菊子を見たら何だか笑っちゃってさ」
「はぁ? 何それ。意味不明ですし、全く失礼じゃないですか。私だって、エプロンくらい着けますよ」
「ごめん。菊子、そのエプロン、本当に良く似合ってるよ。凄く可愛い」
「な、何を言ってるんですか。全く、冗談ばかり出て来るんですから目黒さんの口は」
不意打ち。
いつもみたいにからかわれていると思いながらも突然可愛いと言われて、菊子の顔は赤くなる。
「冗談なんか言わないよ。そのエプロン、菊子に似合うと思って俺が選んだんだ」
「そうだったんですか」
「うん」
自分の為にエプロンを選ぶ雨の姿を菊子は想像してみる。
何だか微笑ましい様な。
「菊子はそれ、気に入らない?」
「べ、別に、そんなこと……ありません」
「なら良かった」
満面の笑顔を見せる雨。
また、この笑顔。
ずるい奴。
「まぁ、せっかくなので、このエプロン、ありがたく使わせて頂きます」
仕方ない。
雨が自分の為に選んでくれた物なら趣味に合わずともありがたく受けようと菊子は決めた。
「ん、菊子。本当に似合ってるよ。いつも堅苦しいファッションしてるから、たまにはそういうのも良いよ。可愛くて」
「はいはい、さようですか。では、私は、片づけを致しますね」
もう動揺なんかしない。
菊子は雨に向かってやけに丁寧にお辞儀をすると、キッチンへ向かった。
菊子を見送る雨はどこか愉快そうで、それが菊子には悔しいのだった。
後片付けをしている菊子に雨が「片付け、手伝えなくてすまないね」と眉を下げて言う。
「いえいえ。片付けも家政婦としての私の仕事ですから。目黒さんが手伝うことありませんよ」
「そう言ってくれると雇った甲斐があるよ」
雨の目の前なので、出来るだけテキパキと働いて見せる菊子。
汚れた食器をまとめ、載せられるだけ、ピザの箱の上に乗せて、さて、キッチンへと運ぼうとする。
「菊子、ちょっとここで待ってて」
雨が菊子を呼び止めた。
「何ですか?」
怪訝な顔をする菊子に雨は「良いから待ってて」と言ってリビングダイニングを出て行ってしまった。
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戻って来た雨の膝の上には、何やら白い布が乗っかっている。
雨は、その布を菊子に差し出すと「着けてみて」と言う。
渡されたそれを菊子が広げてみると、エプロンだった。
エプロンの裾の所には小さなフリルが付いている。
フリルは白いレースで蝶の模様があった。
こんな可愛いエプロンを私に付けろと?
菊子の目は点になった。
「いやいや、こんなの、似合わないに決まってるじゃない。エプロンなら私も持ってきましたから大丈夫ですよ」
「良いから着けてみな」
雨にそう言われて菊子は仕方なく渡されたエプロンを身に着けた。
エプロンは、サイズは菊子にぴったりであった。
「どうですか?」
訊かれて雨は菊子を眺めると「悪くないんじゃないかな」と答える。
しかし、雨のその顔は、どう見ても笑いを堪えている様に見える。
「ちょっと、目黒さん、何か笑ってませんか?」
鋭い目つきで雨を睨みつけて菊子が言う。
「わ、笑ってないよ、本当に」
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「嘘。笑ってるでしょ!」
「いや、ははっ、ちょっと待って……くくっ」
雨は、もう完全に笑っている。
そんな雨を見て、菊子は頬を思いっきり膨らませた。
「もう、信じられない。自分から着けろって言ったくせに笑うとかって最低。だから似合わないって言ったじゃないですか」
「違うって、くくっ……そうじゃなくって。ごめん。本当に待って」
「もう知りません」
菊子がエプロンを外そうとすると、雨の手が、それを止めた。
雨は、何とか笑いを堪えると菊子の顔を見る。
その顔を菊子は冷たい表情で見下ろす。
「ごめん、菊子。笑ったのはね、似合ってなかったからじゃなくって、菊子のエプロン姿なんて想像したことなかったから、エプロンを着けている菊子を見たら何だか笑っちゃってさ」
「はぁ? 何それ。意味不明ですし、全く失礼じゃないですか。私だって、エプロンくらい着けますよ」
「ごめん。菊子、そのエプロン、本当に良く似合ってるよ。凄く可愛い」
「な、何を言ってるんですか。全く、冗談ばかり出て来るんですから目黒さんの口は」
不意打ち。
いつもみたいにからかわれていると思いながらも突然可愛いと言われて、菊子の顔は赤くなる。
「冗談なんか言わないよ。そのエプロン、菊子に似合うと思って俺が選んだんだ」
「そうだったんですか」
「うん」
自分の為にエプロンを選ぶ雨の姿を菊子は想像してみる。
何だか微笑ましい様な。
「菊子はそれ、気に入らない?」
「べ、別に、そんなこと……ありません」
「なら良かった」
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また、この笑顔。
ずるい奴。
「まぁ、せっかくなので、このエプロン、ありがたく使わせて頂きます」
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「はいはい、さようですか。では、私は、片づけを致しますね」
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