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第一楽章 手紙を書く女-Allegro con brio-
1-7 本当の居場所(3)
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ふと顔を上げると、セシルたちと同じ深緑の制服に身を包み、両手を腰に当てて平らな胸を反らせる少女がそこに堂々と立っていた。背負った真昼の日差しに照らされ、小麦色のソバージュがぎらついている。セシルの興味は引かなかったが。
「あ。デリか。納得」
「そうですの。デリさんが尋ねずとも教えてくれましたわ」
「デリーツィアよ! 人の名前を省略するならもっと愛らしくなさいッ!」
甚だしいイントネーションで捲し立てる少女デリーツィアは、セシルと机を並べる同級生だ。
モルフェシア公国の西、コルシェン王国からメリディアン海域を北西に渡った先にある、船乗りと剣客の闊歩するエスパディア共和国の出身だそうだ。つまり留学生なので、エルジェ・アカデミーの女子寮に身を寄せている。
うっすらと日焼けで赤らんだ肌の上に髪と同じ金色の釣り目が宝石のように鎮座し、その周りでプラチナブロンドが白波のようにうねる。口が達者で態度が大きいなど自己主張こそ激しいものの、その体はあまりに小さくて凹凸がなかった。同じ十三歳とは思えない発育の悪さをして、彼女を『妖精のプリンセス』と呼ぶ人もいるそうだ。
当初セシルは面喰ったが、いつでもどこでも誰に対しても変わらない態度に、それが彼女なのだと思えるようになった。ただ一つの例外もあったが。
「リーチャとか、リッチェとか。ほら、いくらでも思いつくでしょ」
リアに似てるから却下。セシルはそう思って、心の中で彼女の提案を丸めてゴミ箱に捨てた。
「デリはデリだよ。デリこそ、人の名前をエスパディア風にするのやめてよ」
「いいでしょ。これがあたしなりの愛称よ。と・こ・ろ・で! 話は聞いたわ!」
ふふん、とデリは、腰まで伸ばしているブロンドを手で払いのけた。
いちいち大人っぽさを演出したがるのだが、その実、セシルよりも頭一つ小さい。ぴったり四フィートぐらいだろう。そのてっぺんに大きなリボンを一つ、これ見よがしに飾っているのが幼さを強調しているのには、まだ気づいていないらしい。
「二人とも白い妖精を探しているんでしょ? だったら、あたしの部屋に来たらいいわ。こ、今夜でもいいわよ」
妖精ならもう目の前にいるし。セシルは腕を組んだ。
「なんでデリの部屋に、しかも夜に行かなきゃいけないんだよ?」
セシルの問いに答えたのは、少女ではなかった。
「白い妖精は、夜に現れると相場が決まっているんだ」
「あ。デリか。納得」
「そうですの。デリさんが尋ねずとも教えてくれましたわ」
「デリーツィアよ! 人の名前を省略するならもっと愛らしくなさいッ!」
甚だしいイントネーションで捲し立てる少女デリーツィアは、セシルと机を並べる同級生だ。
モルフェシア公国の西、コルシェン王国からメリディアン海域を北西に渡った先にある、船乗りと剣客の闊歩するエスパディア共和国の出身だそうだ。つまり留学生なので、エルジェ・アカデミーの女子寮に身を寄せている。
うっすらと日焼けで赤らんだ肌の上に髪と同じ金色の釣り目が宝石のように鎮座し、その周りでプラチナブロンドが白波のようにうねる。口が達者で態度が大きいなど自己主張こそ激しいものの、その体はあまりに小さくて凹凸がなかった。同じ十三歳とは思えない発育の悪さをして、彼女を『妖精のプリンセス』と呼ぶ人もいるそうだ。
当初セシルは面喰ったが、いつでもどこでも誰に対しても変わらない態度に、それが彼女なのだと思えるようになった。ただ一つの例外もあったが。
「リーチャとか、リッチェとか。ほら、いくらでも思いつくでしょ」
リアに似てるから却下。セシルはそう思って、心の中で彼女の提案を丸めてゴミ箱に捨てた。
「デリはデリだよ。デリこそ、人の名前をエスパディア風にするのやめてよ」
「いいでしょ。これがあたしなりの愛称よ。と・こ・ろ・で! 話は聞いたわ!」
ふふん、とデリは、腰まで伸ばしているブロンドを手で払いのけた。
いちいち大人っぽさを演出したがるのだが、その実、セシルよりも頭一つ小さい。ぴったり四フィートぐらいだろう。そのてっぺんに大きなリボンを一つ、これ見よがしに飾っているのが幼さを強調しているのには、まだ気づいていないらしい。
「二人とも白い妖精を探しているんでしょ? だったら、あたしの部屋に来たらいいわ。こ、今夜でもいいわよ」
妖精ならもう目の前にいるし。セシルは腕を組んだ。
「なんでデリの部屋に、しかも夜に行かなきゃいけないんだよ?」
セシルの問いに答えたのは、少女ではなかった。
「白い妖精は、夜に現れると相場が決まっているんだ」
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