探偵王子とフォルトゥーネ

黒井ここあ

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第二楽章 女神を戴く国-Andante con moto-

2-2 社会科見学(8)

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 お茶会の前に、フォベトラ城の見学を許された。案内人はモルフェシア大公その人である。
 パーシィが眉を上げる手前でセシルが恐縮したが、当の大公はお付きも外した。
 そうしてあちこちに連れだって、探偵と助手は一般人が入る事の叶わぬフォベトラ城を歩き回った。窓からときどき見えるのは青と街だ。空と湖が広がり、あたかもこの城が天空に浮かんでいるような錯覚さえ覚える。

「天空城……」

 ときおり窓から上を見上げるなど、セシルはそわそわしていた。
 しかし、パーシィにとってそれよりも目に余ったのはジャスティンのほうである。
 ジャスティンは何かにつけ、大層嬉しそうにセシルを見つめている。
 人が恋する顔などそう見ないが、それに似ていて、黒々とした瞳に星が浮かぶようだった。

「はじめにファタル湖ありき。ゆえに、ファタル湖を砦とし守らんとして、この城フォベトラは作られた」

「……フォベトラ」

 セシルは少し含みながら繰り返した。

「代々のモルフェシア公が住まっているのだよ」

「独りで?」

 住まいとしては厳ついフォベトラ城のあちこちに、少年がきょろきょろと首を回す。
 その度にジャスティンが解説のため進み出ては、小さな感謝の言葉にうち震えていた。
 パーシィには、そう見えた。

「寂しくないんですか?」

「なに、かえって静かなものだよ」

 セシルのほうは、当初モルフェシア大公の丁寧な対応に縮こまっていた。けれども、グウェンドソン邸よりも歴史ある荘厳な建物に興味をそそられ、すぐにいつもどおりになっていた。
 古めかしいつくりの柱や建物に現代的な装飾が施され今も生きている空間だ。
 確かに、モルフェシアの現代史を直視しているかのような錯覚さえ覚える。
 好奇心に勝るものなし、と探偵が半ば冷めた目で過ごしたフォベトラ城の見学は、いつしか会議室にまで及んでいた。
 ジャスティンが、さも普通の事のように装いながら得意げに話している。

「モルフェシアの議会は、人間で構成されている」

 パーシィは思った。ああ、あの話だな。
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