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ガマン大会

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「う~~~、ちゃむいちゃむい……まだまだちゃむいでチュンチュン♪ ……あれ、あんたたちなんでまだストーブ点けてないの? 起きてるなら点けなさいよ~……」

「ダメ! 今日は点けないの!」

「そうでチュン♪ 今日は一日こうやって……う˝う˝う˝…あたちは出来る子、あたちは出来る子…」

「……なに言ってんの、あんたら……」

「ゴロゴロゴロゴロ……ガマン大会らしいですよ……ゴロゴロゴロゴロ」

「……ガマン……なんの意味があるのよ、それ……。私、手がかじかむとキーボードが打てないから……ストーブ点けるよ……」

「ダメ!」

「そうでチュン……う˝う˝う˝……」

「……本気でおバカなのね、あんたら……」

「ゴロゴロゴロゴロ……暖房に慣れちゃうと、ふくらスズメ感がなくなるから、本能を呼び覚ます競争をしてるらしいですよ……あ、梅子さんも朝ご飯どうぞ♪ 今日はウグイスぱんにしてみました♪……ゴロゴロゴロゴロ」

「あはは♪ それいいね♪ リックのウグイスぱんは、あんこもリアルうぐいす色だからいいよね~♪ おいしい、おいしい♪……これはココア?」

「はい、いつものミルク&しょうが入りです♪……ゴロゴロゴロゴロ」

「んふふ~ん♪ あったまるね~♪ ちゅてきでチュンチュン~♪…………んで、そこのおとぼけ姉妹はいつまでそんなことやってるつもりなのかな…?」

「……あんたもその姉妹の内じゃろ……」

「そうでちゅよ、梅子たんも一緒にやりなちゃい……う˝う˝……」

「だから……アタシ達はヒューマノイドタイプで生まれてきたんだから~……そんな、ナチュラルタイプの動物さんたちのマネしてどうすんのよ…。本能を呼び覚ますなんて言っても、限界があるでしょうに……全く、無理難題でチュン♪……寒かったら、服着るか、羽根の間にカイロでも入れれば、ふくらスズメっぽく見えるんじゃないの? ……あ、そう言えば、クロ~マにもらったマフラーがあったわ♪ ふふふ~ん♪ あったか~~~♪」

「今のあたい達の前でそれをするか……なんと冷たい女じゃ……」

「……う˝う˝う˝……」

「ほりゃ~~♪ ゆず子ちゃ~ん♪ あんたのまふりゃ~もここにあるわよチュンチュン~♪ あったかいわよ~♪」

「う˝う˝……あたちのあったかふわふわまふりゃ~……こ・こ・ろがぁ~…心が折れそうでチュン……」

「ゆず子! しっかりしなさい! そんな魔性の女の声なんて無視するのよ!まだ全然、本能寺のほの字も見えてない!」

「もうだめ~! あたちのまふりゃ~たん♪……ゲト~♪ ふひゃ~~♪あったかでちゅ~~ん♪ やっぱり梅子たんは正しかったでチュンチュン♪」

「……く……またか、そのおなごは、いつも、大事な一線を簡単に越えおる……」

「うにゃ~~♪ ホットミルクしょうがココア、心の底まで温まるりゅでチュ~~~ン♪ ちゃんきゅ~、リックたん~♪」

「ゴロゴロゴロゴロ♪……」

「もういいでしょ、すず子もいい加減におし! こっち側にいらっしゃい! 早く、その一線を越えなさいでチュン♪」

「そうでちゅよ、いつまでも意地張ってないでちゅん♪」

「……く……、二対一か……不覚……こんなことになろうとは……、仕方ない……そこのゴロゴロ、お前はこちらに付くであろうな…」

「……へ?……そんな、オイラまで巻き込まないでくださいよ~……」

「うぐぐ……ブルータスよ、お前もか……」

「…は? なんです、それ?……あ!そうだ!……梅子ちゃん、ゆず子ちゃん、ちょっとこっちへ……ヒソヒソ、ヒソヒソ……」

「……く……ついに、三対一か……万事休す……いや、そうではない……これは、あたいの心の問題だ……本能を呼び起こすのだ……理性を失わず……この宇宙全体の心が、あたいを通して表現されるからこそ、あたいがクリエイターとして……」

「ジャジャジャ~ン! どうだ~! カップ焼きそば&ポットに入ったお湯だぞ~! ほ~~~ら、注いでやる~~♪ この内側の線まで……」

「あああ! 待って!待ってぇー! 入れるならかやくを!かやくを先に入れてぇ~!…………うううう、うぐうぐ………うぐうぐ……そして、そして3分……3分待つのじゃよ…………うぐうぐ…………」

「泣きながら、崩れ落ちたでチュン」

「雪解けじゃの……そっとしておこう……」


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