アルカナセイド【ARCANUM;SEDO】

臂りき

文字の大きさ
14 / 28

2-7 恋バナ

しおりを挟む
『アテル君はさ。ユカリのこと、どう思ってるの?』
 外殻に入った直後、不意に個人間通信パーソナルでツカサさんが割り込んできた。
「『どう』って?」
『……いやいや、鈍すぎるって! ユカリがアテル君に気があること、気付いてるんでしょ』
 ツカサさんは明らかに焦れったそうに僕の返答を待っている。僕が最も苦手とするコミュニケーションだ。
「ユカリさんはいつも明るくて素敵な女性だよ。僕なんかにも声を掛けてくれるし、きっと将来は有望なエンジニアになれると思う」
『やっぱりアリサのこと意識してるんだ?』
「アリサはとても優秀なバディだ。彼女にはできるだけ迷惑を掛けない生き方をしたい」
『ああもう! そういうのじゃな――』
『システムに接続。一時的に外部との接続を遮断します』
 ついに苛立ち始めた彼女の声を遮るように、外殻のエラー防止システムが作動する。
報告に感謝するナイスアシスト
 無論彼女の言わんとしていることは理解している。要は特定の異性をどう思っているのかという、あれだ。
 実に不可解な質問であり、正直面倒と言わざるを得ない。
 「異性」といったものが曖昧となった現代において、何故未だにそんなことを気にかける必要があるのだろうか。
 適合者パートナーの選定すら機械任せにする僕たちから「恋」などという感情が消えるのに、一体あと何世代の交配が繰り返されるのだろう。
『――帰ったらじっくり聞かせてもらうから』
「……接続を遮断します」

        *

 出動命令が下されたのは外殻に接続してから約二十分ほど経ってからだった。
 命令が出たとは言え後援である以上は下手に動けない僕らだが、未だ見ぬ戦地に強く期待を抱くせいか、長くも感じられた後援待機までの待機時間であった二十分間のことなどすっかり忘れていた。
 定位置までの道程を外殻の誘導に従って動く。
 戦闘以外の行動は極力人間に決定権が与えられるのだ。その理由は、搭乗中の人間の精神的な耐久力を温存することにある。戦闘の全てを外殻に頼っているとは言え、人間側も何も考えずに外殻の動きに同調する時さえ意外と神経を使ったりしている。
 少なくとも寝ている時以上の精神疲労は考慮されるべきだ。
 移動中、周囲には訓練時に見て来た荒野とさほど変わらない様な荒地の景色が広がっていた。
 木々が疎らな所もあれば、何もなく、所々爆撃などで穿たれた穴があり、ただ地層が露出しているだけの場所もある。それがほとんどだった。
 ここは以前より戦地であって、今でも相当激しい戦闘があるに違いない。
 原形さえ想像もつかない場所。とても人が住める環境ではない。
「後援部隊、配置に着きました」
『了解。命令が下るまで待機してくれ』
 電波が比較的良好で、且つ発音以外のノイズを極限まで無くした無線機からは向こうの様子は何も窺えない。加えてモニターによる目視でさえ確認できないような距離に前衛はいる。後衛の姿すら見当たらない。
 こうして後援部隊は命令以外の行為を制限され、僕にとっても判断し兼ねる状況となった。
 更に一時間ほど経った頃、流石に痺れを切らし出した連中の外殻が僅かながらに揺れる。
『後援部隊に告ぐ、直ちに提示した座標位置まで前進し臨戦態勢に切り替えよ』
 連絡が入った直後、目の前の地平線が光を放った。
 命令にあった座標位置に向かう際、しばらく地鳴りを肌に感じつつ、地点到達までに全意識を途絶えさせる。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~

二階堂吉乃
恋愛
 同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。  1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。  一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

はじめまして、私の知らない婚約者様

有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。 見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。 けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。 ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。 けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。 この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。 悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに? ※他サイトにも掲載しています。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

処理中です...