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第6話 祭囃子
しおりを挟む山上からお囃子が漂ってくる。
近くにも遠くにも聞こえるこの音が山間に響くと、どこか切ない気持ちになる。
行けば何かが起こりそうな謎の予感と高揚感。
でも行けば必ず終わりがくる。
祭囃子に高鳴る鼓動。
言いようのない寂しさとの落差を知るからこそ、遠くに聴く音がどこか切ない。
「――ああ、坊ちゃん。申し訳ありませんが」
村から更に山頂の方に登ると大きな神社がある。
普段は年寄りの参拝客も疎らで有り余るほどに広い境内も、この時ばかりは大いに盛り上がる。
村外からも多くの客が足を運び、各地から来た屋台の軒を練り歩く。
「どうにも最近お身体が優れないようでして」
何となく予感はしていた。
お姉さんの体調が優れようと優れまいと、きっと里見さんは門の前で僕にこう言いわけをするのだ。
「では律子さんによろしくお伝えください」
待っていたであろう返答。
殊勝にも僕は一礼をして踵を返した。
「やあ、翔太郎くん。いい夜だね」
庭先の木陰からお姉さんの声がする。
山向こうに沈み出した淡い陽の光が、ぼうっと何者かを照らす。
「お嬢様! お身体に障ります! どうかお部屋で――」
「いいんだ」
律子さんは目の前に現れ、僕の手を引いて並木道へと歩き出した。
「お嬢様!」
早足で先へ先へと進むお姉さんと僕。
いつの間にか後ろの方に里見さんの声が遠くなった。
「お囃子が聞こえるね。ああ、すごくワクワクする」
並木道が終わり森との境界まで来て、明らかにお姉さんの歩調が変わった。
「律子さん、やっぱり戻った方がいいよ」
近くで覗いてみると、そっぽを向いて誤魔化す顔色は確かによくないようだった。
薄明かりのせいか影との境が曖昧になり、余計に儚く映って見える。
「何から見よう。射的に型抜き、金魚すくいあたりか。それとも先ずは腹ごしらえかな」
足元がふらつき木の根に躓きそうになるお姉さんを支える。
「今日は私の奢りだ。何でも好きなのをするといい」
お姉さんは得意げに肩から下げたポーチを摘んで見せる。
「律子さん」
上がる息を押し殺し時折肩を揺らすお姉さんを見兼ね、仕舞いに僕は手を引いてその場に止めた。
「すまない。少し疲れてしまった」
並木道から車の音が近付いてくる。
どの道、森を抜けても境内までの長い階段を登るのは無理だ。
顔から首を流れる汗が尋常じゃない。
ここまで来ただけでも十分過ぎるほどだった。
「お嬢様。失礼いたします」
軽自動車から降りた里見さんはお姉さんの腕を肩に回し、ゆっくりと後部座席にその身体を横たえた。
何もできない僕は用済みと知る。
「行かないでくれ」
その場から去ろうとするのを察してか、お姉さんが僕を呼び止めた。
里見さんは一つ頷くと、助手席のドアを開いて僕を載せてくれた。
*
「祭りの匂いがする」
「何ですかそれ」
里見さんの力を借りてようやく部屋に辿り着いてしばらく、体調の安定したお姉さんは開いた窓辺に座り僕に語りかけた。
「屋台にある食べ物が混ざった甘辛い匂い。それから屋台のおじさんが吸う煙草と誰かが楽しんだ後の花火の匂い……はは。風情はないけれど、恐らく発電機が燃すガソリンの匂いが一番強い」
お姉さんを部屋に運び込んだ里見さんはその後、水差しとコップを置きに来て以来現れていない。
「里見さんにはしばらく二人きりにしてほしいと伝えたよ」
お姉さんは水の入ったコップを差し出し、扉の向こうが気になる僕を安心させた。
「すまない。巻き込んでしまって」
「もう気にしないで。一緒にいられて嬉しいよ」
お祭りには行けなかった。
でもお姉さんは約束を守ろうとしてくれた。
だからこうして今も一緒にいられる。
それだけで十分だった。
「以前もこうして行けなかった。あの時、君はどう過ごしていたのかな」
「そのまま美咲さん家に帰ったよ」
「お囃子は聞こえた?」
「うん」
「じゃあ私と一緒だ」
いつかの午後と同じ姿勢で僕らは互いに寄り添った。
辺りに灯のない部屋は月明かりに浮かび、涼しい風が頬を撫でる。
どこかで夕立があったのかもしれない。
「しよっか」
「うん」
ズボンに手を掛けるお姉さんを制し、密着した身体を両足の反動と背で押し倒す。
お姉さんを覆ったまま反転すると、間髪入れずにその腰を引き寄せた。
いつも優しく僕を乗せ導いてくれるお姉さん。
――でも、今日は違うんだよ。
強引に服を捲り脚を持ち上げ、ショーツを剥ごうとする僕をお姉さんは少し驚いた様子で見詰めた。
今回ばかりは僕も怒っている。
歩くのも儘ならないほどに弱っているのなら、もっと早くに言って欲しかった。
我儘な僕の願いばかり聞いて、自分を蔑ろにするお姉さんが許せなかった。
こうして行為に誘い出したのも、結局は僕の欲望を発散させるために違いなかった。
僕はこんなにもお姉さんのために何かをしてあげたいのに。
お姉さんにとっての僕はどうしようもなく弱くて頼りのない、ただの獣だったのだろうか。
「構わないよ、翔太郎くん」
急に固まり動かなくなった僕を、持ち上げた両脚の太腿にショーツを掛けた状態のお姉さんが穏やかに微笑む。
――嗚呼、なんて優しいんだろう。
お姉さんは優しすぎる。
その優しさが僕の醜い気持ちを踏み躙り、どうしようもないくらいに僕を獣の道へと堕落させる。
そのことをお姉さんは知るべきだった。
脈打つ蟀谷をお姉さんの大事な場所を包んでいた柔らかな物に埋めて落ち着かせる。
しかし先より更にいきり立った僕の物でお姉さんの太腿から股の間をがむしゃらに擦り付けた。
――許さない。
僕が一番大切に思うお姉さんを、無自覚に傷付け続けるお姉さんを絶対に許さない。
「……んっ」
ぎこちない動きにも反射的に漏れる吐息さえ僕を狂わせることをお姉さんは知らない。
だから不意に僕が股を割り唇を奪いにくることにさえ敏感に身体を震わせ反応するのだ。
お姉さんの好きな場所を心得た僕は、押し寄せる快感に戸惑う愛らしい舌を追い回して苛めながら、すでに主張して止まない両の突起を指で扱き上げた。
纏った衣服よりも白い絹のような肌が美しく紅潮する。
均整のとれた美しい膨らみ、桃色に充血した乳首が僕の性を目覚めさせる。
僕はお姉さんの性と快楽がここに集約されていることを知り、居ても立ってもいられなくなる。
脚を拘束していたショーツを放り捨て、上体に留まった衣服を下から剥ぎ取る。
生まれたままのお姉さんの姿。
非の打ち所のない美しい肢体。
今では快楽を知り、止めどなく求め続ける可哀想なお姉さんの身体。
性の悦び、男というものを教えたのは僕だ。
閑静な邸宅に儚く息を潜める令嬢は、どこの誰とも知れない僕の手によって穢されたのだ。
もっと欲し、もっと溺れるように。
自尊心を持たせ、尚且つ貪欲に快楽へ浸けるには、頼りない僕の容姿が役立った。
「翔太郎くん……はやく」
それなのに許せないよ。
こんなにも張り詰めた僕を尻目に、お姉さんはずっと自分の大事なところを指で苛め続けている。
お姉さんのほっそりした綺麗な薬指が、剥きでた頂点をいたく擦り上げる。
二つの物と同様に赤く充血したそれが僕の怒張を指し示し、生意気にも挑発した。
瞬時に焼き付いたその光景に、僕の背は押され、一気に中を貫いた。
「ああっ!」
いつも僕を諭し語りかける口元が快楽に歪み、鳴いた。
洞察に長けた切長の目は中空を彷徨い、聡い眉は快楽に寄った。
可哀想なお姉さん。
僕がめちゃくちゃにしてあげる。
臀部を抱き寄せ僕の物を更に奥に引き込もうとする両手を振り解き、お姉さんの両脚を左右に開いて大きく突き回した。
その度にお姉さんの細い身体は跳ね、もはや声すら出なくなった口をガクつかせる。
切なく痙攣する唇を奪い、震える腰を掴む腕に更に力を込める。
安定した上体を軸に、僕のもう半身はお姉さんの上で存分に跳ね回った。
物全体が素早くお姉さんの中を駆け抜け、最奥を突く先端が強く刺激される。
僕の動きに合わせて健気に跳ねるお姉さんの腰、奪った唇の間から漏れ出す愛らしい吐息も相まって、精がもうすぐ先の方まで迫ってきていた。
凄まじい快感と、この後に押し寄せる快楽の奔流を直感した僕は、お姉さんの両手を再び臀部に置かせた。
「んっ」
それと知ったお姉さんは声を漏らし、僕の腰を引き寄せ、更に自身の腰を持ち上げては下ろす動作を繰り返した。
込み上げる精の予感。
キスやお姉さんの淫行に痺れる脳。
腰から先端までねっとりと纏わりつく蠕動と愛液。
お姉さんの細い喉から唇を伝って再度その音が伝った瞬間、箍が外れ、腰は数度の小動の後に最奥で停滞した。
――愛してるよ、律子さん。
蠕動する温かな内部を腰の微動で小さく練る。
先端からの迸りに合わせ、お姉さんの子宮目掛けて更に腰を突き出した。
頭から背、腰を止めどない快感が押し寄せ、物の先へ先へと精が溢れ出て行く。
快楽に打ち震える僕の背や尻を、お姉さんの手がいやらしく撫で回す。
先まで怯え震えていた舌で僕の舌を撫で寄せ、流れ続ける精の奔流を永遠に催促する。
――僕の子を産んでよ。
「……ありがとう」
どちらともなく離れた唇がそっと呟く。
ぐったりと身体の上に倒れ込んだ僕を、お姉さんは強く抱きしめてくれた。
「ごめんね。我儘に付き合わせて」
「そんなこと言わないで!」
僕のホントウはお姉さんだけだ。
本当に孕ませたいと思えるのはお姉さんだけなんだ。
「ありがとう……私のために怒ってくれて」
「そんなこと――」
僕は堪え切れずにお姉さんにしがみ付いた。
それからしばらくの間お姉さんの胸に顔を押し付け、濡らした。
「……ああ。温かい」
お姉さんは無様な僕の頬を拭い、自らの頬や身体も僕の身に預けた。
永遠にも思える時間。
月明かりに浮かぶ部屋で寄り添うお姉さんと僕。
時折微かな風がふっとカーテンを揺らす。
「大好きだよ、翔太郎くん」
「うん。僕も大好き。愛してるよ律子さん」
僕の小さな胸にお姉さんはキスをした。
それから耳を押し当て僕の鼓動をじっと聴いた。
お姉さんも僕の胸を濡らした。
「……なんだか眠くなってきたね」
「そろそろ寝よう」
僕はベッドからずり落ちた毛布を引き寄せ、お姉さんと一緒に頭から被った。
「おやすみ、翔太郎くん」
いつまでも見詰める僕に微笑んだお姉さんは、一つだけおでこにキスをしてそっと瞼を閉じた。
「おやすみ。律子さん」
伸ばしかけた手を戻す。
穏やかな寝息を立てるお姉さんのことを僕は、抗いようのない睡魔が来るまでずっと見守り続けた。
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