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プロローグ

プロローグ2

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顔を上げた老人はやっと口を開いた。




「私は創造神、ファラウザー。この度はすまなかった。」




「え、あ、えっと、はぁ……?」




この老人は”そうぞうしん”だという。”しん”とは”神”だろうか?




・・・・・・ありえない。




急に言われて信じろと!?

私が今まで読んできた本には確かにそういう記述はある。

けれどもそれは宗教などの関係。実在するなんて……




そこまで考えてふと思う。

これは夢か?夢だとしたら覚めたら終わり。

本当だったとしても神様かどうかは定かではないし、今の状況からしてこの人から話を聞かないことには何も進まない。




今は”しん”の字がどうだとか考えてもらちが明かない!




「私は荒川英理菜です。これはどういう状況なのですか?」



私の自己紹介に老人、あー…神様(?)は目をしぱしぱと瞬いた。なぜだ?変なこと言ったか、私。



「どうしてそこまで落ち着いていられる……私の誤作動のせいで英理菜殿はなくなったのだぞ?」



そりゃあわててますよ、神様だっていうんだから。そんなことよりも、



「誤作動、とは?」


「大きな光に打たれたのを覚えていないか?」


「あー、確かに私雷に打たれました。」

「その、なんだ、えー、…その光、私が放ったものなんだ。”雷”ではなく魔力の塊なんだが、そのな、新しいギフトをつくろうとしていたんだが、熱中していて3年くらい寝てなくてな、眠くなってきてしまってうとうとしてしまったんだ…。そうしたらそれまで凝縮して容器に入れていた魔力が暴走してしまってな。下野世界に落ちて行ってしまったんだ。」




居眠り魔法か。居眠り〇〇って危険だからね。私の両親も居眠り運転の飛行機でだったし……。




あ、魔力とか3年徹夜(?)とかにつっこまないのかって?




神様いるんだ!もう何でもアリだよね!




「そうだったんですね。事情は分かりました。この後どうなるのでしょうか?」




「話が早くて助かる。英理菜殿には3つの選択肢があるのだ。1つめは、輪廻転生に基づいて生まれ変わること。2つめはその記憶を持ったまま別世界にて生まれ変わること。3つめは、ここ、天界で働くこと。生まれ変わることについては残念ながらもといた地球では行えない。申し訳ないが、それは決まりなのだ…」




天界で働く、というのはどういう感じなのだろうか。おもしろいのだろうか。仕事につく前に死んでしまったから気になる。けれど、




「2つ目の記憶をそのまま別世界に行ける、というものがいいです。」




別世界には私の知らないものがたくさんあるに違いない。仕事だってそこの世界に行って大人になったらできるだろう。今までの記憶をそのままに、というのはとてもおいしい。これまでのことが無駄になることはない。




「わかった。別世界に行くにあたって、何か欲しいもの、かなえてほしい願いはあるか?」




「そうですね…、”普通に、楽しく、面白く”過ごせるようにしてください!」




私にとっては前の世界はあまり面白いものではなかったように思う。それに、何よりも私は普通が欲しかった。天才だなんて騒がれて楽しいことが何もできなくなるのはもう嫌だ!




「たしかにかなえよう」




そうして私の体は死んだときの雷、もとい、魔力の塊よりもまぶしくて大きい光に包まれた。




遠のく意識の中で神様の「これで大神様に怒られないはずじゃ。下神落ちはないはずじゃ……」という情けない声が聴こえたのは気のせいだろうか?









この時、私はこの神様が上司からの首宣告回避のために力みすぎて、そして神様と人間の価値観の違いで、神様の与えた力が予想を大きく上回る力となっていることを知らずにただ”普通”な生活を送れることを夢見ていた










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