蛙化現象

てつや

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はじめに

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 「うち蛙化現象かも」
 僕より年上の28歳の彼女は、電話越しにそう言った。彼女の身長は168cmくらいで、顔は可愛くて、料理が得意。趣味も合って、何より自分の夢をいつも応援してくれた。

 2020年3月の夜、嫌な違和感を感じた僕は彼女に電話をした。その時に初めて、蛙化現象という言葉を知った。24年間の人生で初めて聞いた言葉だ。
 
 その言葉を聞いた後、電話をスピーカーに変更。こっそりSafariを開いて、蛙化現象を検索。そこで初めて、その言葉の意味を知った。その瞬間、僕の心にはぽっかり穴が空いた。心に穴が空くとはこういうことなのか、これも人生で初めての経験だ。
 
 彼女はいつも、僕の初めてを奪っていく。久しぶりに再会した夜、避妊具を使用せずに夜の営みを行ったのは彼女が初めて。女性と2人で、僕の大好きなもつ鍋屋さんに行ったのも彼女が初めて。こんなにも運命的な出会いをした女性は、彼女が初めて。色んな意味で、彼女は童貞キラーなのだ。そんな童貞キラーとの初めての体験たちは、学生の修学旅行のように、毎回楽しい気分にさせてくれた。

 しかし今回の初めて経験は、非常に辛いモノであった。他にも色んな感情が湧いた。年上のくせになんだよ、結婚前提の言い出しっぺはどっちなん、あれだけ寂しいって言いよったやん、福岡まで来た時の感情はもう忘れたんかよ。正直、直接会って罵倒したい。こんな感情は久しぶりだ。
 
 その一種の否定的な思いの反面、僕は気づいた。

 「おれ何も分かってなかったんや」

 

 これから「蛙化現象」という題名で、僕の恋愛経験を綴っていきます。この小説を書き始めた時点では、まだ彼女と別れていません。僕は、「今後どんな関係になろうと、彼女との思い出は大切にしたい」と、風呂場でビビっと感じました。そこで書き残すことを決めました。加えてこの小説がきっかけで、「蛙化現象」に悩んでいる方の孤独感が少しでも和らげば幸いです。
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