ありそうでない話。

てつや

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giverとtaker

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2020年5月。

 「これが収まったら同棲しよう。だから大丈夫。俺らなら大丈夫。」

 真夜中の2時、電話越しでシュンは必死にアヤを励ます。

 それは2人に自宅待機命令が下され、2ヵ月が経過していた頃である。

 

 この年の初め、世界では感染症が大流行した。国内には観光客が消え、町には人が消え、飲食店・観光業など多くの業界は休業を余儀なくされた。その他の会社員たちは、在宅勤務や自宅待機。世界の医療従事者は、昼夜休まず患者の処置にあたった。

 今まで当たり前に会えていた人に、突然会えなくなる。今後の先行きが不透明すぎて不安に押しつぶされる。

 夜は特にそうだ。辺りが暗いだけで、物音が聞こえないだけでこんなにも心は滅入る。

 この年から約2年間、パンデミックに人類は翻弄され続けた。



 幸い感染を避けられているアヤは、不安との戦いに敗れかけていた。特に彼女は今まで、仕事一筋で日々の生活を送ってきた。沢山の誘惑に打ち勝ってきた。そのため、常にヒールの音をせわしなく奏でていた人にとって、自宅待機という命令は地獄でしかなかったであろう。

 日々感染者数の増加を伝えるニュース番組や、自宅待機から全く進展しない会社の方針を目のあたりにし、アヤの心身は徐々に削られていったのだ。

 なんとか彼女を励まそうとして、シュンは言葉を発した。その結果が、同棲の2文字である。

 どれだけ考えても、頭の中で最適な言葉が見つからない。彼なりに何とか絞り出したところ、結果的に自分の願望を口にしてしまったのだった。

 「こんな時に呑気ねシュンは、、、、、、、。でもその言葉待ってた。ありがとうね。私まだ負けないから。」

 多くの人が感染症と心の病に苦しむ中、アヤは懸命にその見えない敵と対峙した。寂しさが心を支配するたびに、彼女は通話履歴からシュンを選んだ。

 

「先なんて見えない。絶対なんてない。それは感染症のない世間でも同じことではないか。恐れることはない。」

 シュンは着信に応じる際、必ず自分に言い聞かせ、自分で自分を励ました。アヤに頼る事なんてできない。共倒れが1番怖い。自分で何とかしなければならない。

 世の中がどれだけ変化しても、彼にとってその一種の孤独だけが普遍の真理であった。

 

ЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖ

 2026年、4月。

 シュンが玄関のドアノブに手をかけると、リビング方から着信音が聞こえてくる。

 正直、誰からの電話でもよかった。これから使うことはなくなるのだから。

 その一方で、アヤとの電話を思い出す。

 「もっと早くから、アヤを頼ればよかった。」

 独り玄関に立ち尽くし目頭が熱くなる。彼は今、思い出の副作用に溺れている。

 

続く

※ この小説はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。
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