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チュート殿下 6 オレ アースクエイク・デューク・テンペスト 5サイ!
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天蓋に包まれた静かな空間の中で、今のこの状況についてもう一度整理してみる。
まず第一に、今のこの状態が『夢』ではない、という認識から始めなければならない。
心の奥底にはまだこれが『夢』であって欲しいという気持ちが大きく横たわっていることは事実であるが、それを覆い消し去るくらい、そのことが希望的観測であることも納得している。
さっきの、『僕』と『俺』が一つに溶け合い固まった時、何かが『ストン』と心にはまって……その瞬間、今、起きている状況が、憑依ではなく、転生といわれるものであるということを理屈なく理解し受け入れている自分がいた。
といって、悟りを開けるほどできていない俺は、今もドキドキとうるさい心臓と、押しつぶされそうな心情、受け止めるには大き過ぎる事実に、頭を抱えるしかないのだ。
もしも、世界が輪廻転生という概念で出来上がっているものであるとしたら、この様に前世のことを記憶したまま生まれてしまうということもあり、ごくまれに起きているのかもしれない。テレビでそんなことを見たこともあった。
しかし、その転生先の世界が元々の世界ではなく、自分が知っているゲームの世界であったらどうだろうか?ラノベやネット小説でよく目にしていたものだけど……。
それも……
〈乙ゲーってなに⁈そのうえ……そのうえ……いろいろ残念、全てが不憫、なにもかも中途半端なチュートリアルのチュート殿下だとぉぉぉぉ‼‼〉
声を出さずに心の中で叫ぶ俺。偉いよねぇ。声を出したら飛んできそうだし……リフルとか……。
そうだよ、リフル・ヘイル、マーシュ・スリート、アースクエイク・デューク・テンペスト……って俺か⁈
今の自分の存在について理解するのと、そのことに納得するのは違うのだと思う。
特に自分の立場が特殊だとね。
一体化した今までの『僕』の意識は、それでなくとも薄かったから、はっきりと言い切ることに抵抗がないわけではないが、『俺』が持ってきてしまった前世の知識と照らし合わせるに、ここは乙ゲーの世界かそれに異様によく似た世界であり、俺はその世界の主人公に攻略される立場にある、乙ゲーの舞台であるアミュレット王国の王子『アースクエイク・デューク・テンペスト』であることは疑いがないらしい。
しかし、殺されかけて『俺』が目覚めてから前世の記憶を取り戻し、今世の『僕』と融合し、今この新しい人格が形成されて、冷静に考えられるようになって、この世界が『俺』が知っている乙ゲーの世界であると認めて考えてみると、この短い間でもいくつかの違和感があることに気が付いた。
まず第一にこの髪の毛の色だ。
俺が知るこの乙ゲーの世界の法則(設定資料集による解説)によると、10歳で精霊と契約を行い契約が成立すると、その契約した精霊の持つ色に髪の毛や瞳の色が変わるというものだ。
だから、精霊と契約できることの少ない平民は茶色い色を持ったままの者が多く、その成立過程で祖先に精霊契約者を多く持つ貴族はカラフルな色を持つ者が多い。そして、この世界の人間の誰もが使えるとされる生活魔法以外の魔法は精霊と契約しないと使うことができない仕様になっている。
つまり、王族である俺の髪色が茶色ではなく、精霊の色を纏うことは全くおかしいことではないのだが、それはあくまでも10歳で精霊と契約をし終わった後ということになる。
だから、5歳の俺の髪の毛の色が何色であろうとも、変わってしまうことはありえないことなのだ。
実際『俺』の記憶の中のゲーム時の王子の髪の色は金髪であったから、今世で最初に金髪を見た時に違和感を感じなかったが、5歳のこの世界のことしか知らない『僕』には違和感しかなかったのだ。
まず第一に、今のこの状態が『夢』ではない、という認識から始めなければならない。
心の奥底にはまだこれが『夢』であって欲しいという気持ちが大きく横たわっていることは事実であるが、それを覆い消し去るくらい、そのことが希望的観測であることも納得している。
さっきの、『僕』と『俺』が一つに溶け合い固まった時、何かが『ストン』と心にはまって……その瞬間、今、起きている状況が、憑依ではなく、転生といわれるものであるということを理屈なく理解し受け入れている自分がいた。
といって、悟りを開けるほどできていない俺は、今もドキドキとうるさい心臓と、押しつぶされそうな心情、受け止めるには大き過ぎる事実に、頭を抱えるしかないのだ。
もしも、世界が輪廻転生という概念で出来上がっているものであるとしたら、この様に前世のことを記憶したまま生まれてしまうということもあり、ごくまれに起きているのかもしれない。テレビでそんなことを見たこともあった。
しかし、その転生先の世界が元々の世界ではなく、自分が知っているゲームの世界であったらどうだろうか?ラノベやネット小説でよく目にしていたものだけど……。
それも……
〈乙ゲーってなに⁈そのうえ……そのうえ……いろいろ残念、全てが不憫、なにもかも中途半端なチュートリアルのチュート殿下だとぉぉぉぉ‼‼〉
声を出さずに心の中で叫ぶ俺。偉いよねぇ。声を出したら飛んできそうだし……リフルとか……。
そうだよ、リフル・ヘイル、マーシュ・スリート、アースクエイク・デューク・テンペスト……って俺か⁈
今の自分の存在について理解するのと、そのことに納得するのは違うのだと思う。
特に自分の立場が特殊だとね。
一体化した今までの『僕』の意識は、それでなくとも薄かったから、はっきりと言い切ることに抵抗がないわけではないが、『俺』が持ってきてしまった前世の知識と照らし合わせるに、ここは乙ゲーの世界かそれに異様によく似た世界であり、俺はその世界の主人公に攻略される立場にある、乙ゲーの舞台であるアミュレット王国の王子『アースクエイク・デューク・テンペスト』であることは疑いがないらしい。
しかし、殺されかけて『俺』が目覚めてから前世の記憶を取り戻し、今世の『僕』と融合し、今この新しい人格が形成されて、冷静に考えられるようになって、この世界が『俺』が知っている乙ゲーの世界であると認めて考えてみると、この短い間でもいくつかの違和感があることに気が付いた。
まず第一にこの髪の毛の色だ。
俺が知るこの乙ゲーの世界の法則(設定資料集による解説)によると、10歳で精霊と契約を行い契約が成立すると、その契約した精霊の持つ色に髪の毛や瞳の色が変わるというものだ。
だから、精霊と契約できることの少ない平民は茶色い色を持ったままの者が多く、その成立過程で祖先に精霊契約者を多く持つ貴族はカラフルな色を持つ者が多い。そして、この世界の人間の誰もが使えるとされる生活魔法以外の魔法は精霊と契約しないと使うことができない仕様になっている。
つまり、王族である俺の髪色が茶色ではなく、精霊の色を纏うことは全くおかしいことではないのだが、それはあくまでも10歳で精霊と契約をし終わった後ということになる。
だから、5歳の俺の髪の毛の色が何色であろうとも、変わってしまうことはありえないことなのだ。
実際『俺』の記憶の中のゲーム時の王子の髪の色は金髪であったから、今世で最初に金髪を見た時に違和感を感じなかったが、5歳のこの世界のことしか知らない『僕』には違和感しかなかったのだ。
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