転生したら当て馬王子でした~絶対攻略される王太子の俺は、フラグを折って幸せになりたい~

HIROTOYUKI

文字の大きさ
84 / 196

ブラオ・マークィス・ゲイル 1

しおりを挟む
 我がゲイル侯爵家は代々宰相を務め、このアミュレット王国の中でも重鎮といえる地位を築いてきた。

 私は、そのことを誇りに思い、日々宰相職という激務に耐えてきたとも言える。

 城に勤める官吏たちは、私のことを「冷徹な青の宰相」とカゲでヒナタで言われていることは知っている。

 この世の中、平和が比較的長く続いている現在、緩み切った空気の中で、誰かが悪者にならないとこの王国は益々腐っていくだけである。

 厳しくするのが頂点つまり国王であった場合、恐怖政治にとらわれてしまうかもしれず、健全な王国運営と言えるものではなくなる。

 そこで、厳しくし嫌われ者になるのは、二番目以降に居るものが好ましいということになる。

 身分のことで言えば、この国で国王陛下の次にあたるのは言うまでもなく王妃殿下であるが、妃殿下が国政に口を出すことは好まれない為、政治的な立場での二番目つまり宰相が、厳しい嫌われ者になることが、国を円滑に進めていく上で最も好ましいのだ。

 私も、私の父も、祖父も、そのようにしてこの平和なアミュレット王国を発展させてきた。

 嫌われ者になることに、子供の頃から抵抗を感じなかった、といえば嘘になるが、現在は国王陛下が嫌われることなく、国を営んでいくためにも、必要な事として納得をしている。

 こんな嫌われ者の私も、普通の一人の人間であるわけで、それなりに大切なものも持っていたりする。

 それは、子供のころは父であり母であり、そして、幼馴染であったり……。

 現在の私にとっては、子供のころの思いも当然大切なものであるが、大人になって得ることができた家族、つまり妻や子供たちは私の大切なモノの、筆頭であると言い切ることができる。

 子供たちの大切さに上下をつけることは難しいし、またしたくもないことだが、世間一般の父親と同じように、息子には厳しく、娘には甘く、となってしまっている事は十分自覚している。

 顔を合わす時間が、ほとんど取れないことから、会えば息子には小言という形をとった期待を、娘には物という形をとった構えぬことへの穴埋めを、することしかできなかったこの10年余。

 つまり、子供の教育に関しては妻任せというか、家令任せであったことは確かであったが、私自身もそうであったし、息子に関して言えば、全く間違いはなかったものと考えている。

 10歳における精霊契約においても、子供たちは力の強さに差はあれど、我が一族の精霊とも言える水属性の精霊様と契約が成せたようで、青を纏うことでより一層我が息子は私の子供のころとそっくりになったと、家令が喜んでいたことを思い出す。

 そんな息子は初級学校においても、1年目はヴォーテックス殿の右腕として幼馴染として友として、恙なくゲイル侯爵家の嫡子としてその力を発揮し、2年目にはヴォーテックス殿の後を継ぐ様に生徒会長となった。

 この2年目を迎えるにあたって陛下には、息子には将来自身が仕える事となる方、誰もが口には出さないが誰もが事実として知っている、陛下のご落胤である伯爵子息以外に、誰もがはっきりと口にして良い立場にお生まれであったのに、誰もがまったく口にしない、または全くその存在すら認識されていなかったお方がいることを初めて伝えた。

 息子は少し混乱はしていたが、新たなるお方が、その存在すら排除されるような扱いを受けていた、そのことを彼なりに推測し、その事実だけを受け止めて、立場の複雑なその方を、表向きは王族としての扱いをして接していかなければいけないことを理解して、我々の意を汲んで生徒会長として生徒会活動を行っていくことを決意したようだ。

 息子に与えてやれる、殿下の情報はほとんど持ち合わせていないことに気が付いたとき、「もしかしたら……」という思いが浮かんだことは否めない。

 そのようなことがあってから暫く、初級学校において1年生が学校生活に慣れてきたと思われる入学からふた月ほど過ぎた頃、珍しく息子から私に会いたいと言っている旨、家令から王城内の私の執務室に連絡が来た。

 折しもその日は、ひと月に一回の騎士団長との情報を共有する日であった。

 以前はほぼ毎日のように顔を合わせていた我等であったが、お互いに責任がある立場になってからは月に一度か二度会えればいいほどになっていた。

 家令からの伝言が彼にも聞こえていたのだろう、昔から私の息子のことも、自分の子供のように思ってくれているからか、息子の名前が聞こえて何事かと思ったようだ。

「クリフが会いたいと言ってくるなど、よほどのことがあるのだろう、オレのことはいいから早く帰ってやれ」

 事務的なことは部下にやってもらうことにして、騎士団として必要な事の調整は残った彼がしてくれることとなった。

「そう言えば……うちの息子が同じクラスの殿下について、変なこと言っていたなぁ」

 殿下といえばあの方のことか?私は帰り支度の手を止めて、眉間にしわを寄せながら、体に見合わない書類を睨みつけるようにして読んでいる、彼の方に体を向けた。

「殿下はどこの国の殿下なのですか?光の精霊に非常に愛されている容姿をされているが、婚姻というには我が国には姫がいらっしゃいませんから、どのように我が国に迎えられるのかと、噂になっています」

 などとまじめな顔をして言うのだ、と言って書類から顔を上げて、私の顔を見てくる。

 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~

ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。 コイツは何かがおかしい。 本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。 目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

転生貴族のスローライフ

マツユキ
ファンタジー
現代の日本で、病気により若くして死んでしまった主人公。気づいたら異世界で貴族の三男として転生していた しかし、生まれた家は力主義を掲げる辺境伯家。自分の力を上手く使えない主人公は、追放されてしまう事に。しかも、追放先は誰も足を踏み入れようとはしない場所だった これは、転生者である主人公が最凶の地で、国よりも最強の街を起こす物語である *基本は1日空けて更新したいと思っています。連日更新をする場合もありますので、よろしくお願いします

【完結】ポーションが不味すぎるので、美味しいポーションを作ったら

七鳳
ファンタジー
※毎日8時と18時に更新中! ※いいねやお気に入り登録して頂けると励みになります! 気付いたら異世界に転生していた主人公。 赤ん坊から15歳まで成長する中で、異世界の常識を学んでいくが、その中で気付いたことがひとつ。 「ポーションが不味すぎる」 必需品だが、みんなが嫌な顔をして買っていく姿を見て、「美味しいポーションを作ったらバカ売れするのでは?」 と考え、試行錯誤をしていく…

悪役令息に転生したけど、静かな老後を送りたい!

えながゆうき
ファンタジー
 妹がやっていた乙女ゲームの世界に転生し、自分がゲームの中の悪役令息であり、魔王フラグ持ちであることに気がついたシリウス。しかし、乙女ゲームに興味がなかった事が仇となり、断片的にしかゲームの内容が分からない!わずかな記憶を頼りに魔王フラグをへし折って、静かな老後を送りたい!  剣と魔法のファンタジー世界で、精一杯、悪足搔きさせていただきます!

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

処理中です...