転生したら当て馬王子でした~絶対攻略される王太子の俺は、フラグを折って幸せになりたい~

HIROTOYUKI

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チュート殿下 70 試験問題と生徒会役員

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 案の定、この学年の学力試験は例年になく高度な問題が出されたことと、例年であれば回収されることがない問題用紙が回収されたことから、今回の試験の裏に何かしらの思惑があったことが推測できた。

 それは問題用紙の回収という行為から、この学校の総意としての行いではなく、学校の行事に対して一定の権威を行使できる立場以上のものが関わって行った行為であることが考えられるからだ。

 今だに俺のことを認めたくない役員の居る中、今回の試験についてどうだこうだ言っているのが聞こえてくる。

 まだ順位の発表がないので、この生徒会の中にいる現在一年生の役員候補は、現役員の身内で固められていると言っても過言ではない。

 弟や妹、従兄弟、親の部下の子供等々、それなりの貴族の子息子女であるから、きっと恥ずかしい点数は取っていないだろうが、例年の試験とは明らかに違うレベルの問題に答えることができない者がほどんどだったのだろう。

 問題が手元にないので答え合わせをすることも難しく、役員の者たちも曖昧な問題提起に答えを導き出すこともできず困っているようだ。

 できなかった問題をしっかりと記憶できている者はなかなか居ない。

 特に今回のいやらしい幾何の問題は、やたら桁数の多い足し算と引き算で、こちらの世界のただ足し引きしかしない計算方法では時間がかかる。

 文章問題も、掛け算九九を知ってれば暗算でもできる問題だが、それがないこの世界では答えを導き出すのは大変な事だろう。

 俺にすれば笑っちゃうほど簡単な問題だけど……。

 この国の歴史(表向きの)についても、まだ初級学校程度では勉強しないようなことまで出題されていたようだが、しっかりと読み込みさせられた俺にしたら、どの部分がそのように難しい部分に当たるのかもわからない。

 スキルでドーピングされているようなもので、心苦しいところもあるのだが、この世界は魔法やスキルがあって成り立っている。

 それを使いこなせるかこなせないかが問題であって、持っていることは不正には当たらないのだから、堂々と歴史の教科書を目の前に出して答えているのと変わらないようなスキルであるけれどそれも実力の内、カンニングとは違うのだ。

 それに、この世界ではスキルをすべて開示しなければならないという決まりもなく、逆に貴族は自分達のスキルは表に出さないことが常識となっている。

 もちろん、今回の試験の内容も全て覚えている。

 あちこちで見当違いな答えが飛び交っているが、こちらとしては問題が公開されなかったことから、俺の回答自体がなかったことにされる、もしくはすり替えられて、できなかったことにされるのではないかという疑念が湧いてきた。

 俺はもちろん不正をしてもいないし、あの問題程度の試験であれば、ケアレスミスがなければまぁ満点が取れているだろう。

 しかし、それを知っているのはいやらしい問題を出して、俺に恥を書かせようとしているもしくは俺を排除しようとしているいわゆる敵側の人間だけ。

 そこで俺の無実を証明することは難しい。

 それならばここに居る、ある意味敵方の人間たちを証人にすれば、さすがに俺を全否定することは難しいのではないか?

 表向きは、大人たちの思惑に乗って俺に不利な証言をすることは十分に考えられるから、完璧な証人になることは無いが、彼らの心の中には噓をつくという事実は残り、どちらが正しいのかきちんと判断できることができれば自ずとわかってくるだろう。

 まだ問題についてあぁだこうだ言っている者たちの間に、記憶していた問題を書き込んだ紙と、その回答を書いた紙を滑らせた。

 突然目の前に出された紙に驚いた彼らだったが、そこに書き込まれているモノを認識し更に黙り込む。

 初めて目にした問題の難しさに驚く2年生と、自分が全くできなかった問題を正確に記入しかつ回答も書かれていることに驚愕する1年生。

 その回答が合っているいるかも気になるようだが、問題を正確に記憶していたことの方により一層驚いたようだ。

 また、その用紙を手渡した人物が、出来損ないといわれている俺であることも忘れるくらい、問題用紙に食いついている。

 さっき渡したのは幾何の問題。数字を細かく覚えていることは、よほどの記憶力かまたはスキルがなければ不可能なほど数字の数は多く細かい。

 彼らが驚愕している間にも、おれは今回出された試験の問題をそれぞれの科目ごと再現をし、回答も書き込んでいく。

 それまで問題のことで騒がしかった生徒会室は、今は紙の上に流れる俺のペンの走る音だけになっている。

 書き込みが終る紙が生まれるごとに、争う様に手が伸びてきてそれを囲むように人だかりが出来ている。

 2年生からは本当にこの問題だったのかの確認の声が、1年からは是の声が上がっている。

 少なくともここに居る生徒会役員とその候補は、俺がこれらの問題をきちんと回答できたことは認識できただろう。

 中にはこれらの問題を予め知らされていたのではないかと、疑う者がいるかもしれないが、知らされていたとしてこの問題と答えを記憶することがそいつはできるのかと逆に聞き返したい。

 これほどの物を記憶できる能力があるならば、これくらいの簡単な問題を答えを教えてもらうことなく、答えることができることが推測できることだと思うからだ。

 
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