転生したら当て馬王子でした~絶対攻略される王太子の俺は、フラグを折って幸せになりたい~

HIROTOYUKI

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マーシュ・スリート  20 殿下の作った秘密道具

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 今回の夜会に国王が出席することになった、そのことを後押ししたのは宰相だ。

 国王の側近で今回の初級学校で起こった様々なことを一番理解しているのは宰相だ。自身の子供も関わっている事なので、関心があるのは自然な流れなのだろう。
 
 一方、宰相と同じ立場、つまり自身の子供が初級学校に通っており、今回の騒動の中心にいたと言えるアーク殿下の父親たる国王陛下は、全く関心を持っていないことは、今まで通りといえばいいのか……。

 王妃に関しては、国王以上にその心情を図ることが私にはできない。

 こちらはもっと一貫として、ご自身のこと以外には全く興味をお持ちでないことは誰にはばかることなくお示しになっている。

 最低限の王妃としての務めを果たされる以外は、すべてご自由に過ごされているのだ。

 婚姻するときの約定として、そのことが挙げられていたことも衆目の知る所である。

 国賓の対応や国の行事にはきちんと参加されることと、『殿下を一人儲けること』、このことを果たされれば後は自由に過ごすという約定を持って輿入れされたのだ。

 自由に過ごす中での一番上にあげられたのは、『王族に関わらない』ということで、ご自身が王族の一員になられているにもかかわらず、自分の周りの者には誰一人として実家の公爵家から連れて来た者以外近づけもしない。

 それはもちろん自分の夫になった国王然り、自身が産んだ王子然り。

 国王は最低限の仕事で会わなければいけないことはあるが、王子に関しては一度たりとも、触ったことすらないという徹底ぶりで、国王側の子供が生まれれば……の期待は一切叶うことはなかった。

 その様な王妃であったから、国王の方から王妃の嫌がることをするということもなく、王妃の主催の夜会には王妃が出席しなければならないので、国王は決して出席するなどということがなかったのだ。

 それを今回の夜会では宰相の独断とも言える横槍で、王妃の意見を聞くことなく(結果はわかっているので)王の出席を決めて、それも夜会当日に無理矢理王を夜会会場に連れていくという形で実現してしまったのだ。

 王が足を運んだことに対して、さすがの王妃もその参加を拒否することはできない。

 また、王妃としても王の態度から彼が積極的に参加したわけでもなく、何かしらの理由があって連れてこられえたことはすぐに理解した。

 王妃もただの我儘な公爵令嬢であったわけではなく、しっかりと教育を受けた淑女である、そして、いつもは国王の近くに居ない私が少し離れているがこの場近くにいたことに気付いたことも、何も反論せずその場でこの状況を受け入れられた一因かもしれない。

 影から、すでに今回の標的たちは全て会場内に入っていることの報告は入っていた。

 そして今回アーク殿下のお作りになられた、『びでおかめら』という、あったことそのままを再現できる魔導具を使って、この前行われた初級学校の実技試験の様子をこの会場の皆で見られるように、事前に設置し終わった報告も受けた。

 この魔道具は、殿下がまだ精霊契約を受ける前にお作りになったもので、離宮の外に自由に出ることのできない殿下から、行くことのできない城下の様子を見たいから写してきてほしいと頼まれ渡されたものだ。この頃はもうご自身のお力でご自身の目で、どこにでも行って見てくることが御出来になるようで、とんと頼まれることは無くなったが……。

 殿下にはこの道具の物凄さが全く理解されていないようで、なんてことない物を渡したという様子であったことをとてもよく覚えている。
 
 それから、『びでおかめら』以外にも、殿下が楽になる道具という名目の、この世に存在していないだろう物を創り出していることは、離宮に居る者以外には絶対の秘密としても守られているもので、このことに関しては契約魔法まで使って守らせているものだ。

 その秘密道具の一つである『びでおかめら』の存在を、外に知られることは片腹痛いことであるが、今回の騒動を収めるためにはこの方法が一番効果的であることは確かな事なので、殿下のこれからの学校生活のためにも、この道具を使うことにした。道具について何もすべて正直に申告する義務もない事であるし……。

 この規模の夜会に国王夫妻が出席したことに、そのことが異常であることを知る貴族たちは若干ざわめいたが、その後は何事もなく普段の夜会のように粛々と時間が過ぎていく。

 両陛下のファーストダンスが終りしばらくダンスフロアーがにぎわった後、普段の様子とは違い楽団が席を立ったところで、宰相が両陛下に準備している出し物があることを告げて、準備していた大きな白い布を壁の一面に張った。
 
 この魔道具は使用できる人間を指定できる機能が付いているので、今のところこの魔道具を扱う事のできる人間は私とリフル、そして作成者の殿下だけである。この場では私がこの魔道具を起動させるため、白い布に対面する位置に魔道具を置いてすぐに映し出せるように準備した。

 普段このような場に居ない私のことに気付いたのは、両殿下くらいで、この場にいる顔なじみの貴族たちも使用人のことまでには気を配ってはいない。

 宰相の息のかかった小役人が司会を務めるように中央に出てきて、今日の余興のことについて大声で説明を始めた。

 先程までダンスを踊っていた広間にはそれなりの数の椅子が運び込まれた、上位貴族から着席を促されて順番に椅子に座っていく。

 白い布の一番良く見える中央最前列には両陛下用の立派な椅子が準備され、今回のことを何も聞かされていない両陛下は、怪訝な顔をしつつも席に着いた。もちろん二人の席の間には十分な距離をとっている。


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