103 / 196
マーシュ・スリート 20 殿下の作った秘密道具
しおりを挟む
今回の夜会に国王が出席することになった、そのことを後押ししたのは宰相だ。
国王の側近で今回の初級学校で起こった様々なことを一番理解しているのは宰相だ。自身の子供も関わっている事なので、関心があるのは自然な流れなのだろう。
一方、宰相と同じ立場、つまり自身の子供が初級学校に通っており、今回の騒動の中心にいたと言えるアーク殿下の父親たる国王陛下は、全く関心を持っていないことは、今まで通りといえばいいのか……。
王妃に関しては、国王以上にその心情を図ることが私にはできない。
こちらはもっと一貫として、ご自身のこと以外には全く興味をお持ちでないことは誰にはばかることなくお示しになっている。
最低限の王妃としての務めを果たされる以外は、すべてご自由に過ごされているのだ。
婚姻するときの約定として、そのことが挙げられていたことも衆目の知る所である。
国賓の対応や国の行事にはきちんと参加されることと、『殿下を一人儲けること』、このことを果たされれば後は自由に過ごすという約定を持って輿入れされたのだ。
自由に過ごす中での一番上にあげられたのは、『王族に関わらない』ということで、ご自身が王族の一員になられているにもかかわらず、自分の周りの者には誰一人として実家の公爵家から連れて来た者以外近づけもしない。
それはもちろん自分の夫になった国王然り、自身が産んだ王子然り。
国王は最低限の仕事で会わなければいけないことはあるが、王子に関しては一度たりとも、触ったことすらないという徹底ぶりで、国王側の子供が生まれれば……の期待は一切叶うことはなかった。
その様な王妃であったから、国王の方から王妃の嫌がることをするということもなく、王妃の主催の夜会には王妃が出席しなければならないので、国王は決して出席するなどということがなかったのだ。
それを今回の夜会では宰相の独断とも言える横槍で、王妃の意見を聞くことなく(結果はわかっているので)王の出席を決めて、それも夜会当日に無理矢理王を夜会会場に連れていくという形で実現してしまったのだ。
王が足を運んだことに対して、さすがの王妃もその参加を拒否することはできない。
また、王妃としても王の態度から彼が積極的に参加したわけでもなく、何かしらの理由があって連れてこられえたことはすぐに理解した。
王妃もただの我儘な公爵令嬢であったわけではなく、しっかりと教育を受けた淑女である、そして、いつもは国王の近くに居ない私が少し離れているがこの場近くにいたことに気付いたことも、何も反論せずその場でこの状況を受け入れられた一因かもしれない。
影から、すでに今回の標的たちは全て会場内に入っていることの報告は入っていた。
そして今回アーク殿下のお作りになられた、『びでおかめら』という、あったことそのままを再現できる魔導具を使って、この前行われた初級学校の実技試験の様子をこの会場の皆で見られるように、事前に設置し終わった報告も受けた。
この魔道具は、殿下がまだ精霊契約を受ける前にお作りになったもので、離宮の外に自由に出ることのできない殿下から、行くことのできない城下の様子を見たいから写してきてほしいと頼まれ渡されたものだ。この頃はもうご自身のお力でご自身の目で、どこにでも行って見てくることが御出来になるようで、とんと頼まれることは無くなったが……。
殿下にはこの道具の物凄さが全く理解されていないようで、なんてことない物を渡したという様子であったことをとてもよく覚えている。
それから、『びでおかめら』以外にも、殿下が楽になる道具という名目の、この世に存在していないだろう物を創り出していることは、離宮に居る者以外には絶対の秘密としても守られているもので、このことに関しては契約魔法まで使って守らせているものだ。
その秘密道具の一つである『びでおかめら』の存在を、外に知られることは片腹痛いことであるが、今回の騒動を収めるためにはこの方法が一番効果的であることは確かな事なので、殿下のこれからの学校生活のためにも、この道具を使うことにした。道具について何もすべて正直に申告する義務もない事であるし……。
この規模の夜会に国王夫妻が出席したことに、そのことが異常であることを知る貴族たちは若干ざわめいたが、その後は何事もなく普段の夜会のように粛々と時間が過ぎていく。
両陛下のファーストダンスが終りしばらくダンスフロアーがにぎわった後、普段の様子とは違い楽団が席を立ったところで、宰相が両陛下に準備している出し物があることを告げて、準備していた大きな白い布を壁の一面に張った。
この魔道具は使用できる人間を指定できる機能が付いているので、今のところこの魔道具を扱う事のできる人間は私とリフル、そして作成者の殿下だけである。この場では私がこの魔道具を起動させるため、白い布に対面する位置に魔道具を置いてすぐに映し出せるように準備した。
普段このような場に居ない私のことに気付いたのは、両殿下くらいで、この場にいる顔なじみの貴族たちも使用人のことまでには気を配ってはいない。
宰相の息のかかった小役人が司会を務めるように中央に出てきて、今日の余興のことについて大声で説明を始めた。
先程までダンスを踊っていた広間にはそれなりの数の椅子が運び込まれた、上位貴族から着席を促されて順番に椅子に座っていく。
白い布の一番良く見える中央最前列には両陛下用の立派な椅子が準備され、今回のことを何も聞かされていない両陛下は、怪訝な顔をしつつも席に着いた。もちろん二人の席の間には十分な距離をとっている。
国王の側近で今回の初級学校で起こった様々なことを一番理解しているのは宰相だ。自身の子供も関わっている事なので、関心があるのは自然な流れなのだろう。
一方、宰相と同じ立場、つまり自身の子供が初級学校に通っており、今回の騒動の中心にいたと言えるアーク殿下の父親たる国王陛下は、全く関心を持っていないことは、今まで通りといえばいいのか……。
王妃に関しては、国王以上にその心情を図ることが私にはできない。
こちらはもっと一貫として、ご自身のこと以外には全く興味をお持ちでないことは誰にはばかることなくお示しになっている。
最低限の王妃としての務めを果たされる以外は、すべてご自由に過ごされているのだ。
婚姻するときの約定として、そのことが挙げられていたことも衆目の知る所である。
国賓の対応や国の行事にはきちんと参加されることと、『殿下を一人儲けること』、このことを果たされれば後は自由に過ごすという約定を持って輿入れされたのだ。
自由に過ごす中での一番上にあげられたのは、『王族に関わらない』ということで、ご自身が王族の一員になられているにもかかわらず、自分の周りの者には誰一人として実家の公爵家から連れて来た者以外近づけもしない。
それはもちろん自分の夫になった国王然り、自身が産んだ王子然り。
国王は最低限の仕事で会わなければいけないことはあるが、王子に関しては一度たりとも、触ったことすらないという徹底ぶりで、国王側の子供が生まれれば……の期待は一切叶うことはなかった。
その様な王妃であったから、国王の方から王妃の嫌がることをするということもなく、王妃の主催の夜会には王妃が出席しなければならないので、国王は決して出席するなどということがなかったのだ。
それを今回の夜会では宰相の独断とも言える横槍で、王妃の意見を聞くことなく(結果はわかっているので)王の出席を決めて、それも夜会当日に無理矢理王を夜会会場に連れていくという形で実現してしまったのだ。
王が足を運んだことに対して、さすがの王妃もその参加を拒否することはできない。
また、王妃としても王の態度から彼が積極的に参加したわけでもなく、何かしらの理由があって連れてこられえたことはすぐに理解した。
王妃もただの我儘な公爵令嬢であったわけではなく、しっかりと教育を受けた淑女である、そして、いつもは国王の近くに居ない私が少し離れているがこの場近くにいたことに気付いたことも、何も反論せずその場でこの状況を受け入れられた一因かもしれない。
影から、すでに今回の標的たちは全て会場内に入っていることの報告は入っていた。
そして今回アーク殿下のお作りになられた、『びでおかめら』という、あったことそのままを再現できる魔導具を使って、この前行われた初級学校の実技試験の様子をこの会場の皆で見られるように、事前に設置し終わった報告も受けた。
この魔道具は、殿下がまだ精霊契約を受ける前にお作りになったもので、離宮の外に自由に出ることのできない殿下から、行くことのできない城下の様子を見たいから写してきてほしいと頼まれ渡されたものだ。この頃はもうご自身のお力でご自身の目で、どこにでも行って見てくることが御出来になるようで、とんと頼まれることは無くなったが……。
殿下にはこの道具の物凄さが全く理解されていないようで、なんてことない物を渡したという様子であったことをとてもよく覚えている。
それから、『びでおかめら』以外にも、殿下が楽になる道具という名目の、この世に存在していないだろう物を創り出していることは、離宮に居る者以外には絶対の秘密としても守られているもので、このことに関しては契約魔法まで使って守らせているものだ。
その秘密道具の一つである『びでおかめら』の存在を、外に知られることは片腹痛いことであるが、今回の騒動を収めるためにはこの方法が一番効果的であることは確かな事なので、殿下のこれからの学校生活のためにも、この道具を使うことにした。道具について何もすべて正直に申告する義務もない事であるし……。
この規模の夜会に国王夫妻が出席したことに、そのことが異常であることを知る貴族たちは若干ざわめいたが、その後は何事もなく普段の夜会のように粛々と時間が過ぎていく。
両陛下のファーストダンスが終りしばらくダンスフロアーがにぎわった後、普段の様子とは違い楽団が席を立ったところで、宰相が両陛下に準備している出し物があることを告げて、準備していた大きな白い布を壁の一面に張った。
この魔道具は使用できる人間を指定できる機能が付いているので、今のところこの魔道具を扱う事のできる人間は私とリフル、そして作成者の殿下だけである。この場では私がこの魔道具を起動させるため、白い布に対面する位置に魔道具を置いてすぐに映し出せるように準備した。
普段このような場に居ない私のことに気付いたのは、両殿下くらいで、この場にいる顔なじみの貴族たちも使用人のことまでには気を配ってはいない。
宰相の息のかかった小役人が司会を務めるように中央に出てきて、今日の余興のことについて大声で説明を始めた。
先程までダンスを踊っていた広間にはそれなりの数の椅子が運び込まれた、上位貴族から着席を促されて順番に椅子に座っていく。
白い布の一番良く見える中央最前列には両陛下用の立派な椅子が準備され、今回のことを何も聞かされていない両陛下は、怪訝な顔をしつつも席に着いた。もちろん二人の席の間には十分な距離をとっている。
34
あなたにおすすめの小説
転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~
ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。
コイツは何かがおかしい。
本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。
目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈
転生貴族のスローライフ
マツユキ
ファンタジー
現代の日本で、病気により若くして死んでしまった主人公。気づいたら異世界で貴族の三男として転生していた
しかし、生まれた家は力主義を掲げる辺境伯家。自分の力を上手く使えない主人公は、追放されてしまう事に。しかも、追放先は誰も足を踏み入れようとはしない場所だった
これは、転生者である主人公が最凶の地で、国よりも最強の街を起こす物語である
*基本は1日空けて更新したいと思っています。連日更新をする場合もありますので、よろしくお願いします
【完結】ポーションが不味すぎるので、美味しいポーションを作ったら
七鳳
ファンタジー
※毎日8時と18時に更新中!
※いいねやお気に入り登録して頂けると励みになります!
気付いたら異世界に転生していた主人公。
赤ん坊から15歳まで成長する中で、異世界の常識を学んでいくが、その中で気付いたことがひとつ。
「ポーションが不味すぎる」
必需品だが、みんなが嫌な顔をして買っていく姿を見て、「美味しいポーションを作ったらバカ売れするのでは?」
と考え、試行錯誤をしていく…
悪役令息に転生したけど、静かな老後を送りたい!
えながゆうき
ファンタジー
妹がやっていた乙女ゲームの世界に転生し、自分がゲームの中の悪役令息であり、魔王フラグ持ちであることに気がついたシリウス。しかし、乙女ゲームに興味がなかった事が仇となり、断片的にしかゲームの内容が分からない!わずかな記憶を頼りに魔王フラグをへし折って、静かな老後を送りたい!
剣と魔法のファンタジー世界で、精一杯、悪足搔きさせていただきます!
お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~
志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」
この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。
父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。
ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。
今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。
その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる