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チュート殿下 88 はたしてこのクラスに『ヒロイン』は居るのか?
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このクラスに『ヒロイン』が居るかどうかはわからない。
ゲームの中にヒロインのデフォルトネームもなかったし、容姿についても全く表現されているスチルも文もなかったからだ。
『主人公はあくまでもあなた』がコンセプトで、ヒロインの容姿に関しても、具体的なものは何もなく『可愛い』とか『美しい』とか、誰にでも当てはまるような表現しかされていなかった。
ゲームの中の知識としてただ一つ容姿に関して判断できそうなことは、「光属性魔法適性」があるとされていたこと。つまりアミュレット王国であれば髪か目の色に光属性を示す金色っぽい何かがあるはず、ということだけ。
容姿についてではないが、ヒロインをそれと判断する材料としては、元々この王国の出身ではなく、タリスマン帝国出身ではないかとされていること。
このことは本人も知らないこととして、選択するストーリーによっては、皇女様かもしれないなんてのもあった。この辺は結局ぼやかされていて、タリスマン帝国出身であることも含めて、本当だったのかはったりだったのかわからないままで終わったような気がする。
思い出す限り厄介なヒロインだ。
とにかく、この国には光属性の者は少ないから、光属性のある者は全てキールにチェックしてもらうことにはしているが、このことだって本当にその属性がヒロインにあるのかどうかもわからない。
この国アミュレット王国では、ご存知の通り10歳の時の精霊契約の儀式によって精霊と契約する事によって魔法を使えるようになる。
つまり、この国の魔法は精霊魔法ということだ。だから、この国では精霊を神聖化していて、信仰の対象は精霊ということになる。上級精霊と契約をしている人物は大切にされ尊敬されるが、その人物を神聖化するまでには至らない。
精霊の中でもこの国においては、光の精霊を神聖視する傾向が強くあるが、なぜだか、この国の光の聖霊はテンペスト家の係累意外と契約を結ばない。そのため、この国が建国されて以来テンペスト家を王家として立てている。
ところが、ところ変われば品変わる、とでも言うのか、隣国であるタリスマン帝国では、精霊契約の儀式が行われることは無く、15歳の時に自分のスキルを確認し、自身が好み適している魔法属性のスクロールを手に入れることでその魔法が使えるようになる、というそもそもの魔法の性質が違っていることからくるものらしい。
だから、この国のように魔法属性がその纏う色に出る、などということもなく、見た目でその魔法属性を判断することができない。
タリスマン帝国では、初級のスクロールは比較的簡単に手に入れることができるらしいが、中級、上級になるほど手に入れることは難しくなることは当然として、上級のスクロールを手に入れてもその力を取り込むことができるかは、適正及び本人のレベルが関係していると言われている。
この世界の構造上なのか、その国々で魔法に関することが様々に違っていたり、国を形どる制度や人種の構成も違うのだが疑問を持つことなく受け入れている。
隣り合う国で、交流が持たれている所は比較的違うところがあまりないように調整されている感じもするが、全くされていなくてもそのことに意識がいかないように調整されている。
これは俺とキールがこの世界では考えられないほど移動することができた経験と、キールの鑑定スキルによってこの世界自体を鑑定しまくっていることから得られた、この世界の裏側のような物。
矛盾を感じながらも、不利益が自分に降りかかってくることがなければ、気にしても仕方がないものとして生きていくしかない。
今目の前にある俺の不利益は、『ヒロイン』を特定できないことからくるもの。
タリスマン帝国とアミュレット王国の色々が全く違うことを疑問に思うことは置いといて、俺は自分の力を自分のために使う。
どれだけゲームの強制力が俺の周りを歪ませようとも、俺が俺であることを守るために、俺の一部であるキールと共に生きていくだけ。
出来れば、俺のごく近くにいる離宮に住む人々も共に、変わらずにあってほしい。
やたらと豪奢な教室の一番後ろの席で、攻略対象者である若い教師の顔をぼんやりと眺めながら、そのようなことを考えていた。
『このクラスには、光の精霊と契約できたものは居ないようだな』
鑑定が終わったキールがそう報告してきた。
『タリスマン帝国出身の者も居なかった』
もしかしたら、『ヒロイン』はタリスマン帝国出身だから、精霊契約と関係なく、光属性の魔法を使えるのかもしれない。
それにもし光属性魔法を使えるのであればそれが精霊魔法でないとしても、この国にあれば優遇されることは間違いがない。
そして、本人がこの国の出身でないことを告げなければ、王族のご落胤と考えられないこともない。
それを狙ってくるとしたら……。
一般的に出身を鑑定するには、通り一遍の鑑定では表示されることがないから、出身までを指摘して鑑定をしない限り知られることは無い。
この国は確かにタリスマン帝国と交流はあるが、とても限定的なものだから、この国に住んでいる者のほとんどはこの国の出身者。わざわざ鑑定で調べるという様な考えは冒険者ギルドにおいても至らないのだ。
ゲームの中にヒロインのデフォルトネームもなかったし、容姿についても全く表現されているスチルも文もなかったからだ。
『主人公はあくまでもあなた』がコンセプトで、ヒロインの容姿に関しても、具体的なものは何もなく『可愛い』とか『美しい』とか、誰にでも当てはまるような表現しかされていなかった。
ゲームの中の知識としてただ一つ容姿に関して判断できそうなことは、「光属性魔法適性」があるとされていたこと。つまりアミュレット王国であれば髪か目の色に光属性を示す金色っぽい何かがあるはず、ということだけ。
容姿についてではないが、ヒロインをそれと判断する材料としては、元々この王国の出身ではなく、タリスマン帝国出身ではないかとされていること。
このことは本人も知らないこととして、選択するストーリーによっては、皇女様かもしれないなんてのもあった。この辺は結局ぼやかされていて、タリスマン帝国出身であることも含めて、本当だったのかはったりだったのかわからないままで終わったような気がする。
思い出す限り厄介なヒロインだ。
とにかく、この国には光属性の者は少ないから、光属性のある者は全てキールにチェックしてもらうことにはしているが、このことだって本当にその属性がヒロインにあるのかどうかもわからない。
この国アミュレット王国では、ご存知の通り10歳の時の精霊契約の儀式によって精霊と契約する事によって魔法を使えるようになる。
つまり、この国の魔法は精霊魔法ということだ。だから、この国では精霊を神聖化していて、信仰の対象は精霊ということになる。上級精霊と契約をしている人物は大切にされ尊敬されるが、その人物を神聖化するまでには至らない。
精霊の中でもこの国においては、光の精霊を神聖視する傾向が強くあるが、なぜだか、この国の光の聖霊はテンペスト家の係累意外と契約を結ばない。そのため、この国が建国されて以来テンペスト家を王家として立てている。
ところが、ところ変われば品変わる、とでも言うのか、隣国であるタリスマン帝国では、精霊契約の儀式が行われることは無く、15歳の時に自分のスキルを確認し、自身が好み適している魔法属性のスクロールを手に入れることでその魔法が使えるようになる、というそもそもの魔法の性質が違っていることからくるものらしい。
だから、この国のように魔法属性がその纏う色に出る、などということもなく、見た目でその魔法属性を判断することができない。
タリスマン帝国では、初級のスクロールは比較的簡単に手に入れることができるらしいが、中級、上級になるほど手に入れることは難しくなることは当然として、上級のスクロールを手に入れてもその力を取り込むことができるかは、適正及び本人のレベルが関係していると言われている。
この世界の構造上なのか、その国々で魔法に関することが様々に違っていたり、国を形どる制度や人種の構成も違うのだが疑問を持つことなく受け入れている。
隣り合う国で、交流が持たれている所は比較的違うところがあまりないように調整されている感じもするが、全くされていなくてもそのことに意識がいかないように調整されている。
これは俺とキールがこの世界では考えられないほど移動することができた経験と、キールの鑑定スキルによってこの世界自体を鑑定しまくっていることから得られた、この世界の裏側のような物。
矛盾を感じながらも、不利益が自分に降りかかってくることがなければ、気にしても仕方がないものとして生きていくしかない。
今目の前にある俺の不利益は、『ヒロイン』を特定できないことからくるもの。
タリスマン帝国とアミュレット王国の色々が全く違うことを疑問に思うことは置いといて、俺は自分の力を自分のために使う。
どれだけゲームの強制力が俺の周りを歪ませようとも、俺が俺であることを守るために、俺の一部であるキールと共に生きていくだけ。
出来れば、俺のごく近くにいる離宮に住む人々も共に、変わらずにあってほしい。
やたらと豪奢な教室の一番後ろの席で、攻略対象者である若い教師の顔をぼんやりと眺めながら、そのようなことを考えていた。
『このクラスには、光の精霊と契約できたものは居ないようだな』
鑑定が終わったキールがそう報告してきた。
『タリスマン帝国出身の者も居なかった』
もしかしたら、『ヒロイン』はタリスマン帝国出身だから、精霊契約と関係なく、光属性の魔法を使えるのかもしれない。
それにもし光属性魔法を使えるのであればそれが精霊魔法でないとしても、この国にあれば優遇されることは間違いがない。
そして、本人がこの国の出身でないことを告げなければ、王族のご落胤と考えられないこともない。
それを狙ってくるとしたら……。
一般的に出身を鑑定するには、通り一遍の鑑定では表示されることがないから、出身までを指摘して鑑定をしない限り知られることは無い。
この国は確かにタリスマン帝国と交流はあるが、とても限定的なものだから、この国に住んでいる者のほとんどはこの国の出身者。わざわざ鑑定で調べるという様な考えは冒険者ギルドにおいても至らないのだ。
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