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チュート殿下 93 俺の立ち位置
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廊下を車止めに向かって歩いていると、背後のSクラスの教室のあたりから、何か騒がしい音が漏れ聞こえてきたが、教師であるならばそれくらいは何とかしろよ!
この教師良くは知らない攻略対象者であるが、ヒロインが彼を落とす時に使った手管は、自分の気が弱すぎることがコンプレックスで、そのことを隠すために何もかも、一言一句準備しなければ何もできないような担任教師の、そのすべてを受け入れて、「あなたは気が弱いのではなくて、何事に対しても真面目で、優しすぎるから……。そんなあなたが大好きです」とかなんとか言って落とす、ちょろいやつだったなぁ、確か……。
そんな奴が俺のクラスの担任かい!
ゲームでもヒロインの居るSクラスの担任だったな。
自信なさげなイケメン枠⁉
実際そんな奴が担任だと、迷惑以外の何物でもないなぁ。
校舎正面の車止めの一番いい場所に止まっている、王家の紋章が入った馬車に乗り込む。
さすがに、まだ履修科目の説明がどのクラスでも終わっていないのか、ここに来たのは俺が一番早かったようだ。
「帰りの馬車渋滞に巻き込まれなくてよかったですね」
馬車に乗り込んだとたんに、リフルが話しかけてきた。きっと先ほど俺が控室に顔を出した経緯について知りたいのだろう。
「本日は登校初日でしたので、取次の仕組みなどまだよく把握していないところがあったかもしれませんが……、殿下が直接控室に顔を出された時には……驚きました」
はっきり聞いてこないところはリフルも成長したってことかな……なぜか少し寂しい気持ちがするのはなぜ?
質問とは違うことで少し黄昏ていた事で、少し返答が遅くなったことで、リフルはより心配になったようで、
「控室には隣の教室から連絡が付くような仕組みがあるようで……」
侍従が教室の方に出向くように、教室の方から合図があるようなことを説明して、遠回りに俺が自分から控室に顔を出さなくてもいいということを教えようとしているみたいで……。
「……かわいい……」
10歳は年上のはずなのに、リフルが可愛らしく見えた。身長も大して変わらなくなってきたからかな……もうじき追い越しそうだし……頭撫でたら怒るかな。
「?殿下?」
馬車の対面状態に座りながら、話すときには少し顔が赤くなるところは変わらないリフルを見ながら、にやけ笑顔と心の声が出てしまって、一生懸命話をしているリフルの話の腰を折ってしまっい、リフルは少し怒ったように眉を寄せて黙ってしまった。
「ごめんリフル……。控室の仕様については知っている。今日顔を出したのは……何といえばいいのか……突発的な事故のようなもので……要するに俺が待つことができなかったから……」
「殿下!俺ではなく、「私」と、仰っるように。侍従長も何度も仰っておりましたでしょ」
リフルはまじめにも、俺の言葉遣いの方を注意してきた。
「う、うん。気を付けます……」
いくら可愛らしく見えたとしても、リフルは俺が2歳のころから面倒を見てくれた、兄のようなものだから……。
本人はもしかしたら、父親のような気分でいるところもあるかもしれないのだが……。
「これからは、きちんと私がお迎えに上がるまで、教室でお待ちになってくださいね。学園の校舎の中で何かが起こるとは思えませんが、周りにいるすべての者について身上調査が行われている訳でもありませんので」
至極当たり前の説教を垂れて、リフルのターンは終わったようで。その後は他愛のない話を交わしながら馬車通学を楽しむことにした。
学園内であった諸々のことは、教室内で起こったこと以外はリフルがきちんとマーシュに報告をあげることだろう。
今日のことを思い出してみても、どうも俺の立ち位置がゲームにおけるヴォーテックス、つまり伯爵子息の立ち位置と逆になっているような気がするのだ。
彼はゲームの中では『陛下のご落胤かもしれない』とうわさされ微妙な立場にあり、かつ肉親の情に恵まれず、腐りそうになりながらも努力を怠らない儚げで影がある貴公子、として描かれていた。
ゲームのチュート殿下が退場した二作目では、陛下のただ一人の子供つまり王太子の立場になって、ヒロインと恋に落ちるかもしれないという役どころになるのだが……。
性格など諸々については、今の彼のことを良く知っているわけではないが、中級学校を覗いたときに見た彼の姿がそうであったならば、とても儚げで努力家には見えなかった。
出自についても、『陛下のご落胤かもしれない』ではなくて、しっかりご落胤と認識されての『伯爵王子』なのだから、立場的にも俺よりも王子様として扱われていることは間違いない。
ゲームで俺の側近候補であったはずの面々が、ヴォーテックスの側近候補として彼の近くにあるわけであるし。
これについては、俺が初級学校でも中級学校でも、彼らが近くに来ることを拒んだことがひとつの原因であることも確かなのだが。
色々とゲームにあらがった結果として、配役変更が成されていたとしてもそれは仕方がないのかもしれない、ただ俺とヴォーテックスの配役が逆になっただけであるならば、俺が辺境にやられて云々はなくなるのかもしれないが、その運命を一応半分は血がつながっていると思われる異母兄弟に背負わせるのも……。
それに、彼のゲームの配役であるこの国の王太子としてヒロインの彼氏なんてものには絶対なりたくない‼
この教師良くは知らない攻略対象者であるが、ヒロインが彼を落とす時に使った手管は、自分の気が弱すぎることがコンプレックスで、そのことを隠すために何もかも、一言一句準備しなければ何もできないような担任教師の、そのすべてを受け入れて、「あなたは気が弱いのではなくて、何事に対しても真面目で、優しすぎるから……。そんなあなたが大好きです」とかなんとか言って落とす、ちょろいやつだったなぁ、確か……。
そんな奴が俺のクラスの担任かい!
ゲームでもヒロインの居るSクラスの担任だったな。
自信なさげなイケメン枠⁉
実際そんな奴が担任だと、迷惑以外の何物でもないなぁ。
校舎正面の車止めの一番いい場所に止まっている、王家の紋章が入った馬車に乗り込む。
さすがに、まだ履修科目の説明がどのクラスでも終わっていないのか、ここに来たのは俺が一番早かったようだ。
「帰りの馬車渋滞に巻き込まれなくてよかったですね」
馬車に乗り込んだとたんに、リフルが話しかけてきた。きっと先ほど俺が控室に顔を出した経緯について知りたいのだろう。
「本日は登校初日でしたので、取次の仕組みなどまだよく把握していないところがあったかもしれませんが……、殿下が直接控室に顔を出された時には……驚きました」
はっきり聞いてこないところはリフルも成長したってことかな……なぜか少し寂しい気持ちがするのはなぜ?
質問とは違うことで少し黄昏ていた事で、少し返答が遅くなったことで、リフルはより心配になったようで、
「控室には隣の教室から連絡が付くような仕組みがあるようで……」
侍従が教室の方に出向くように、教室の方から合図があるようなことを説明して、遠回りに俺が自分から控室に顔を出さなくてもいいということを教えようとしているみたいで……。
「……かわいい……」
10歳は年上のはずなのに、リフルが可愛らしく見えた。身長も大して変わらなくなってきたからかな……もうじき追い越しそうだし……頭撫でたら怒るかな。
「?殿下?」
馬車の対面状態に座りながら、話すときには少し顔が赤くなるところは変わらないリフルを見ながら、にやけ笑顔と心の声が出てしまって、一生懸命話をしているリフルの話の腰を折ってしまっい、リフルは少し怒ったように眉を寄せて黙ってしまった。
「ごめんリフル……。控室の仕様については知っている。今日顔を出したのは……何といえばいいのか……突発的な事故のようなもので……要するに俺が待つことができなかったから……」
「殿下!俺ではなく、「私」と、仰っるように。侍従長も何度も仰っておりましたでしょ」
リフルはまじめにも、俺の言葉遣いの方を注意してきた。
「う、うん。気を付けます……」
いくら可愛らしく見えたとしても、リフルは俺が2歳のころから面倒を見てくれた、兄のようなものだから……。
本人はもしかしたら、父親のような気分でいるところもあるかもしれないのだが……。
「これからは、きちんと私がお迎えに上がるまで、教室でお待ちになってくださいね。学園の校舎の中で何かが起こるとは思えませんが、周りにいるすべての者について身上調査が行われている訳でもありませんので」
至極当たり前の説教を垂れて、リフルのターンは終わったようで。その後は他愛のない話を交わしながら馬車通学を楽しむことにした。
学園内であった諸々のことは、教室内で起こったこと以外はリフルがきちんとマーシュに報告をあげることだろう。
今日のことを思い出してみても、どうも俺の立ち位置がゲームにおけるヴォーテックス、つまり伯爵子息の立ち位置と逆になっているような気がするのだ。
彼はゲームの中では『陛下のご落胤かもしれない』とうわさされ微妙な立場にあり、かつ肉親の情に恵まれず、腐りそうになりながらも努力を怠らない儚げで影がある貴公子、として描かれていた。
ゲームのチュート殿下が退場した二作目では、陛下のただ一人の子供つまり王太子の立場になって、ヒロインと恋に落ちるかもしれないという役どころになるのだが……。
性格など諸々については、今の彼のことを良く知っているわけではないが、中級学校を覗いたときに見た彼の姿がそうであったならば、とても儚げで努力家には見えなかった。
出自についても、『陛下のご落胤かもしれない』ではなくて、しっかりご落胤と認識されての『伯爵王子』なのだから、立場的にも俺よりも王子様として扱われていることは間違いない。
ゲームで俺の側近候補であったはずの面々が、ヴォーテックスの側近候補として彼の近くにあるわけであるし。
これについては、俺が初級学校でも中級学校でも、彼らが近くに来ることを拒んだことがひとつの原因であることも確かなのだが。
色々とゲームにあらがった結果として、配役変更が成されていたとしてもそれは仕方がないのかもしれない、ただ俺とヴォーテックスの配役が逆になっただけであるならば、俺が辺境にやられて云々はなくなるのかもしれないが、その運命を一応半分は血がつながっていると思われる異母兄弟に背負わせるのも……。
それに、彼のゲームの配役であるこの国の王太子としてヒロインの彼氏なんてものには絶対なりたくない‼
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