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プリュム・シャルール 2
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王立学園に入園すると決めてからの父親の慌てようは笑えるものだった。
ただ、入園に対して何もしようとしない私に、苛立ちを向けるのはやめてほしかった。
何もしないのは当たり前。
だって、私は『ヒロイン』なんだから、私が王立学園に入ることは運命なのよ。
父親は、この国に来た時から私を貴族の嫁に送り込む気満々だったから、この国の学校には通わせることなく、それなりの貴族のマナーを中心に教養をつけさせようと、知り合いになった貴族から紹介を受けた家庭教師から個人レッスンを受けていた。
しかし、王立学園に入園するためには、その家庭教師から受けた教養やマナーでは、とても入園するに足るものでは無いという指摘を受けた、と父が慌てだしたのだ。
「マナーのことは仕方がない。入園に必要な足りない部分は、何とか誤魔化して入園できるように考えなくては……そうだ、マナーの代わりに魔術の方で……中級のスクロールを手に入れることができれば……」
ゲームの知識として全く気にもしていなかったけど、この国と私の出身国タリスマン帝国では魔法そのものの本質が違うようだ。
というか、隣同士の国なのにほとんど二つの国の間で人の交流がないことに改めて気が付いたの。
タリスマン帝国に住んでいた時にも、隣の国の話なんて全くなかったし、あの国では通っていた学校でも、そもそも地理の勉強のようなことしたかしら?
そういえば、あの国で食べていた物で、この国では全く見ない物もあるような気がするし……、物の交流もないのかしら?
父親が何とか私の使えそうな中級のスクロールを手に入れようと、この王都内を駆けずり回ったようだけど、「スクロール」の存在どころか、「スクロール」というものの名前すらこの国では全く知る人が居なかったようで、「話が通じない!」と頭を抱えていたみたい。
確かに、私は10歳の時にこの国に居なかったから、精霊契約の儀式をしていないけど、なんていったって私は『ヒロイン』なんだから、何もしなくたって精霊?の方から寄って来るに決まっているじゃない!
心配しなくても入園できるし、入園すれば私はこの国の上位貴族から、モテまくりの求婚されまくりの未来が待っているんだから、父親の的を得ていない心配事が可笑しくて……。
今までの家庭教師ではなくて、もっと位の上の貴族から紹介してもらったというおばあちゃんの家庭教師から、入園テストに向けてのマナーと教養を学ぶようにと父親が手配したみたいだけど、ただ厳しく訳の分からないことを叫ぶ婆さんのいうことなんて聞くわけないでしょ。
そんなことよりも、髪の毛の手入れやお肌の手入れ、流行のドレスのことの方が大切に決まっているじゃない!
結局、その婆さんは一回我が家に来ただけで二度と顔を出すことは無かったの。
その後の父親の八つ当たりもちょっと酷かったかも。
「結構な金を摘んで紹介してもらったのに、お前は何をしているのだ!まぁ、お前の頭では15歳で入園するまでの短期間では付け焼き刃にもならないかもしれないから、頭ではなく体を磨くしかないのかもしれないが……」
なんて、失礼しちゃう!
私には未来視ともいえる、この世界の知識があるのよ!
だけど……不思議なのよね……。
ゲームのことは思い出せるのに、それ以外のことは全く何も思い出せないの……。
私が『ヒロイン』ていうことは確かなのに……。
結局父親は、我が家の唯一の力、そう「金」に物を言わせて、学園の偉い人に口をきいてもらったみたい。
そんなことしなくても私がSクラスに入ることは決まっている事なのにね、もったいない……。
魔法を使うことのできる貴族は必ず入園しなければならない学園。
魔法が使える優秀な平民は、選ばれて入園する学園。
私は優秀な魔法を使うことができる平民だから、選ばれて入園するのよ。
「中級学校からの持ち上がりではなく、王立学園に入園する試験は難しいものなのですが、お嬢さんは見た目からも魔法が使えるようですし、蛇の道は蛇、これほど積んでいただければ入園は確約できるかと……それと、卒業後につきましてはあくまでも我が家を通して決めていただくことが条件ですが」
父親が私も同席させたうえで、胡散臭い男と商談を始めましたの。
卒業後は何とかと言ってましたけど、私は王子様たちと結婚するのだから、何とか言われても関係ないのですけど……。
もちろん、父親にもそんな未来のことは教えません。
私の勘が、この世界のことは、誰にも言ってはいけないと言うんですもの。
当り前よね、未来のことを知っているのは『ヒロイン』である私だけでいいのだから……。
ただ、入園に対して何もしようとしない私に、苛立ちを向けるのはやめてほしかった。
何もしないのは当たり前。
だって、私は『ヒロイン』なんだから、私が王立学園に入ることは運命なのよ。
父親は、この国に来た時から私を貴族の嫁に送り込む気満々だったから、この国の学校には通わせることなく、それなりの貴族のマナーを中心に教養をつけさせようと、知り合いになった貴族から紹介を受けた家庭教師から個人レッスンを受けていた。
しかし、王立学園に入園するためには、その家庭教師から受けた教養やマナーでは、とても入園するに足るものでは無いという指摘を受けた、と父が慌てだしたのだ。
「マナーのことは仕方がない。入園に必要な足りない部分は、何とか誤魔化して入園できるように考えなくては……そうだ、マナーの代わりに魔術の方で……中級のスクロールを手に入れることができれば……」
ゲームの知識として全く気にもしていなかったけど、この国と私の出身国タリスマン帝国では魔法そのものの本質が違うようだ。
というか、隣同士の国なのにほとんど二つの国の間で人の交流がないことに改めて気が付いたの。
タリスマン帝国に住んでいた時にも、隣の国の話なんて全くなかったし、あの国では通っていた学校でも、そもそも地理の勉強のようなことしたかしら?
そういえば、あの国で食べていた物で、この国では全く見ない物もあるような気がするし……、物の交流もないのかしら?
父親が何とか私の使えそうな中級のスクロールを手に入れようと、この王都内を駆けずり回ったようだけど、「スクロール」の存在どころか、「スクロール」というものの名前すらこの国では全く知る人が居なかったようで、「話が通じない!」と頭を抱えていたみたい。
確かに、私は10歳の時にこの国に居なかったから、精霊契約の儀式をしていないけど、なんていったって私は『ヒロイン』なんだから、何もしなくたって精霊?の方から寄って来るに決まっているじゃない!
心配しなくても入園できるし、入園すれば私はこの国の上位貴族から、モテまくりの求婚されまくりの未来が待っているんだから、父親の的を得ていない心配事が可笑しくて……。
今までの家庭教師ではなくて、もっと位の上の貴族から紹介してもらったというおばあちゃんの家庭教師から、入園テストに向けてのマナーと教養を学ぶようにと父親が手配したみたいだけど、ただ厳しく訳の分からないことを叫ぶ婆さんのいうことなんて聞くわけないでしょ。
そんなことよりも、髪の毛の手入れやお肌の手入れ、流行のドレスのことの方が大切に決まっているじゃない!
結局、その婆さんは一回我が家に来ただけで二度と顔を出すことは無かったの。
その後の父親の八つ当たりもちょっと酷かったかも。
「結構な金を摘んで紹介してもらったのに、お前は何をしているのだ!まぁ、お前の頭では15歳で入園するまでの短期間では付け焼き刃にもならないかもしれないから、頭ではなく体を磨くしかないのかもしれないが……」
なんて、失礼しちゃう!
私には未来視ともいえる、この世界の知識があるのよ!
だけど……不思議なのよね……。
ゲームのことは思い出せるのに、それ以外のことは全く何も思い出せないの……。
私が『ヒロイン』ていうことは確かなのに……。
結局父親は、我が家の唯一の力、そう「金」に物を言わせて、学園の偉い人に口をきいてもらったみたい。
そんなことしなくても私がSクラスに入ることは決まっている事なのにね、もったいない……。
魔法を使うことのできる貴族は必ず入園しなければならない学園。
魔法が使える優秀な平民は、選ばれて入園する学園。
私は優秀な魔法を使うことができる平民だから、選ばれて入園するのよ。
「中級学校からの持ち上がりではなく、王立学園に入園する試験は難しいものなのですが、お嬢さんは見た目からも魔法が使えるようですし、蛇の道は蛇、これほど積んでいただければ入園は確約できるかと……それと、卒業後につきましてはあくまでも我が家を通して決めていただくことが条件ですが」
父親が私も同席させたうえで、胡散臭い男と商談を始めましたの。
卒業後は何とかと言ってましたけど、私は王子様たちと結婚するのだから、何とか言われても関係ないのですけど……。
もちろん、父親にもそんな未来のことは教えません。
私の勘が、この世界のことは、誰にも言ってはいけないと言うんですもの。
当り前よね、未来のことを知っているのは『ヒロイン』である私だけでいいのだから……。
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