転生したら当て馬王子でした~絶対攻略される王太子の俺は、フラグを折って幸せになりたい~

HIROTOYUKI

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チュート殿下 102 生徒総会 3

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 静寂は一瞬。

 さわさわとした衣擦れの音から、ささやくような高い声低い声が混じりあって、少し上品で控えめな喧騒、ざわめきが講堂内に流れてくる。

 俺のごく近くに座っているSクラスの者たちは、この何日間かでそれなりに俺の存在には慣れたのだろう、落ち着いた様子で席についている。ただし、はっきりと俺の容姿等を認識しているかは怪しいものだが……。

 クラス順からして俺の背後に座っているのはAクラスの者だろう。このクラスは比較的上級の貴族たちも含まれている。言わばSクラスに入れなかった上級貴族の集まっているクラスだ。

『……アースクエイク殿下って……だれ?ほかの国の王族?……』

『……アース……う~ん?今までの学校には居なかったよなぁ……』

『……伯爵王……生徒会長以外に陛下の子?この学園に金髪居るのか?……』

 キールがここからは遠い後ろの方のクラスの声をダイレクトに運んでくるから、俺の頭はいくつもの話声を同時に処理しなければならなくて結構大変だ。

『……同じ年にお生まれになった王子のことは知っているわ。今回王都に来て同い年の王子様の話がなかったから不思議だったけど、やっぱり入園されていたのね……』

『……中級学校でもお姿を見ることがなかったから、王族は我々と一緒に学ぶことは無いって思っていたけど……』

『……何を言ってるんだ、何の話をしているんだ、私の父は王城の上級官吏だぞ。その父が陛下のお子様はヴォーテックス様だけだから、絶対に顔見知りになれとこの入園の折言われたばかりだ。アーク何とかなんぞこの国の王子の訳なかろう……』

 話声の生徒の席は段々とこちらに近づいて来ている。

 俺に直接関係ない地方の者こそ真実がわかっているのだな。このゲームのダ女神の呪いのような強制力に影響を受けてないのだろう。

 ざわめきが大きくなる中、壇上の司会者を含む生徒会役員たちは困惑の表情を浮かべて、自分たちの大将たるヴォーテックス・カウント・ウインド生徒会長を見つめるだけだ。

 何と言っても、俺のことをこの人数の少ないSクラスからさえ見つけることができないでいるからだろう。

『……先程Sクラスの担任に確認しただろう。今日アースクエイクが学園に来ていることも、確実にこの講堂に入っていることも……』

 おうおう、俺のことしっかり呼び捨てかよ!

 やっぱ担任はあちらの手先か。まぁ生徒とはいえ、陛下のご落胤に聞かれれば答えないこともできないだろうが、用務員にさえあの態度であれば、さもありなんと言うところか。

 10人程度しかいないSクラス。端から確かめて見ても、10秒かからんぞ。でもわからないだろうがな。

 そもそも俺の顔知ってるの?

 髪とか目の色からだけで判断するんだろうなぁ。

 何と言っても金髪、王族の色とされてるから……。でも今その色認識できないようにしてるし……。

「殿下!Sクラスにいらっしゃるのはわかっているのです。壇上に上がってください!」

 しびれを切らした司会者が、もう一度拡張魔法を使って俺の名前を呼びあげる。

 俺はこの学園に通うにあたり、絶対生徒会には関わらない事を書面にまでして入園をした。

 本当は俺の事を今までのように存在しない者として扱いたかったのだろう王国の上層部も、精霊契約によって神殿に俺のことをしっかりとチェックされてしまった事によって、全く無視することができなくなったのだろう。

 俺は出来れば貴族社会に関わりたくなかったから、無視されること上等!だったのだけれど、全くそのまま相手の手の上で転がされたまんまというのも……。

 ぎゃふんと言わせるだけの力を持っていたら、ギャフン!と言わせたいだろう!言わないだろうけど……。

 この国ではなぜか学園に通うことが貴族として生きていくことの最低限必要な事とされている……まぁどう見てもゲームの設定からきていることだと思うけど、そう決まっていることは仕方がない。 

 仕方がないから、学校に入ることはOKしたんだがな。

 一応この総会にもオブザーバー?として参加している教師たちの中にしっかり学園長が居ることを確認。

『学園長は俺が生徒会役員になることを拒否していることを絶対知っているはずなのに、生徒会のこの行動についてなぜ黙認しているのか。結局は俺のことを余計な者と思っている国王陛下あいつらと同じ穴の狢と認識していいのだな』

 好々爺に見える学園長も、そちらのカテゴリーに分類することにする。もちろん俺のみの判断ではなくて、キールの中でも……。

 二度目の呼び出しにも壇上に上がらなかった事で、遂に役員の一人が壇上から降りてきて、Sクラスの一人一人の名前を確認し始めた。

 初めての生徒会の総会に、緊張気味で声を出すことに気を使っていた生徒たちも、横に座っている人だけではなく、近くにいる生徒たちと遠慮なく話し始めている所すら出始めた。
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