転生して10年経ったので街を作ることにしました

笹村

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第一章 街を作る前準備編

16 戦いは、終ってからの方が気苦労が多い その③

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「間違いなく、人為的な魔物じゃの」

 屋敷の会議室で、招集に応じてくれた内の1人、魔術神マゲイアの勇者である高町和花たかまちのどかがみんなに言った。
 いま俺たちが居るのは、円卓状の机が置かれた会議室なのだけど、そこで五郎が作ってくれた夜食を摘まみながら絶賛会議中なのだ。

 議題は、俺とカルナ達が襲われた魔物に関して。
 カルナが医務室でミリィの傍についてあげている間に、今後どう動くかを話し合うために、まずはそれを議題にしていた。

「人為的って、誰かが魔物を作ったてぇの? や~ねぇ」
「魔物が出来る仕組みは分かっておるからの。ただ、作るだけならともかく、命令を利かせたり出来るようにするのは、また別の話じゃ、って! それはワシのじゃ!」
「いいじゃない、ケチ臭いわねぇ」
「うっさい! こっちの世界に来てようやく食べられる和菓子じゃぞ! 誰が山田なんぞにくれてやるか!」
「そっちの名前で呼ぶんじゃないわよぉっ、このロリババア!」

 なんかいつもの如く、薫と和花が喧嘩してる。
 2人は見た目が絵になるだけに、こういう時のちぐはぐさがすごい。もう慣れたけど。

 薫の方は、アイロン掛けされた清潔な白シャツの上に黒のジャケット。首回りはあえて何も着けずボタンを外し、下はジャケットの色に合わせたパンツスーツ姿といった、ちょっと着崩したバーテンダーといった姿。見た目が色気のある美青年なので、絵になるほど似合っている。実際バーに居たら、女の人が放っておかない感じだ。
 男好きなのでまったく意味が無いけども。
 
 それに対する和花は、黒のゴシックロリータといった服装だ。それも細部にまで手を抜かず、ふんだんに細かな装飾で飾られている。見た目が7、8才のかわいらしい女の子なので、思わず抱きしめたくなるほど愛らしい。
 そんな本人はロリコンなので、色々と台無しだけど。

 そんな和花を薫がロリババア扱いしてるのは、元の世界での年が結構行ってたからだ。何しろ戦前生まれだし。
 なのになんでそんな姿になってるかと言えば、

「ロリっ子と、きゃっきゃうふふと戯れたい!」

 という、ダメだこいつ早くどうにかしないと、という感じなのだけど、もはや色々と手遅れなのでどうしようもない。
 なにしろ、ロリっ子と一緒に居る時に絵になるから、という理由だけで、こちらの世界に転生召喚された時の20代前半の肉体を、魔術で無理やり若返らせているほどである。

 アホなのかな? という感じだけども、そういうことが出来るほど、魔術に関しては能力が高い。
 なので、魔物が議題なっている今は、彼女を中心に話を進めているんだ。

 そんな薫と和花の2人は、変わらず口喧嘩をしようとしたんだけど、
 
「あら。和花がおばあちゃんなら、私は大おばあちゃんになっちゃうわね」

 俺の隣に座って、俺に和菓子を食べさせていたリリスが、からかうように言う。
 すると2人は、ぴたりと口喧嘩を止めると、

「や~ねぇ。別にリリスは、おばあちゃんじゃないでしょ」
「そうじゃっ。むしろロリっ子の時は至高じゃぞ。じゃからまた、ロリっ子になってくれっ」
「うん、いつかまたね。その時は、薫に服を選んで欲しいわ。薫が選んでくれる服って、みんな魅力的なんですもの」
「そうねぇ。好いわよぉ」

 三人は和気藹々とお喋りをする。

 薫も和花も我が強いけど、そんな2人とリリスは気が合うのか、ちょくちょくお喋りをする中なので、こういう時に間に入って巧くまとめてくれるので助かる。
 そうして穏やかな空気が流れる中で、俺は口を開く。

「和花。俺が襲われた魔物が人工物なのは、間違いはないのか?」
「そうとしか考えられん」

 和花はキッパリと言い切ると、考えを説明してくれた。

「そもそも魔物が自然発生するには、一定量の魔力の吹き溜まりが出来ないと無理じゃ。地方の田舎なら手が足りんので無理じゃろうが、都市部じゃと、そうなる前に魔力を散らすか回収する巡回がされとるからな。どう考えても、陽色が襲われた強さの魔物が、自然発生したとは思えん」
「それって、偶然では考えられないってこと? でも、万が一ってことはないの?」

 疑念というよりは、あくまでも確認するために再び問い掛ける。これに和花は、ハッキリと言い切ってくれた。

「ない。仮に都市部で魔物が発生したとしてもじゃ、それは育つ前の最下級。しかも発生すると同時に、より魔力が多い場所か、人の多い場所を目指して移動する。わざわざ、陽色1人を狙って襲い掛かって来る、なんてことはない」
「……新種ってことは?」
「たまたま偶然、新種が都市部で発生して、たまたま偶然、陽色を襲ったと? そんな偶然の重ね掛け、どう考えても無いわな」
「でも、和真の神与能力チートスキルの影響ってことは考えられない?」
「それもないの。和真の神与能力チートスキルは、影響を及ぼす相手に不幸を導くが、それは縁の深い相手だけじゃ。陽色だけならともかく、魔術師の小僧も襲われたんじゃろう?」
「うん。というより、カルナの方が、俺よりも酷い襲われ方だった」
「……なるほどの。じゃったら魔物を使った何者かの本命は、そっちじゃったと考えるのが道理じゃな。陽色の不幸は、それに巻き込まれた事じゃろう」
「だったら和真に感謝だよ。お蔭で、カルナとミリィを助けることが出来たんだから」
「そういう神与能力チートスキルじゃからな、アイツの能力は。ご都合主義の不幸を導き、それを乗り越えることで運命を書き換える。本気でチートじゃぞ、アイツの能力」

 そこまで言うと、和花は改めて、この場に集まったみんなに視線を向けると、

「そういえば、アイツはどこに居る? アイツも現場に居ったなら、話を聞きたいんじゃが」
「厨房で、ただ飯とタダ酒にありつくって言ってたけど」
「……さよか。なら後は、現場の状況を聞きたいんじゃが」

 和花はそう言うと、菊野さんに視線を向ける。すると、それまで目をつむってた菊野さんは、

「大丈夫です。もう視終りました」

 すっと目を開けると、静かに返した。
 今まで菊野さんには、神与能力チートスキルを使い、カルナの屋敷と周辺を視て貰っていたんだ。
 菊野さんは、視てくれた結果を報告してくれる。

「陽色さんを襲った魔物は、陽色さんがカルナさんの屋敷を出た後、しばらくして屋敷の敷地から発生したものです」
「……それって、カルナの屋敷の敷地から魔物が湧いて出たってこと?」
「はい。視た限りでは、そうとしか」

 菊野さんの神与能力チートスキルは、離れた場所も座標さえ分かればリアルタイムで視ることのできる遠隔視だけでなく、最大で3日前までの映像も見ることが出来る。過去になればなるほど映像がぼやけ、まともに確認できるのは3日前が限界らしいのだけど、数時間程度なら何の問題も無い。

「敷地内から勝手に湧いて出た……となると、それ以前に誰かが、魔物を敷地内に放っておいたんじゃな」

 菊野さんの話を聞いて、和花は推論する。

「どんな理由かは分からんが、気付かれず敷地内に魔物を擬態させて配置して、必要があればいつでも動かせるようにしておいたんじゃろう。
 ……いや、もしかすると、中継点として使っておいたのかもしれんな」
「中継点って?」
「例えばなんじゃが、盗聴用の魔術を中継するのに使っておった、とかの。普通に盗聴の魔術を使ったのでは、すぐにバレるからの。探知されないほど微弱な盗聴魔術を、魔物を介して行っておったのかもしれん」
「それって、何か意味あるの?」
「探知されないほど微弱な魔術じゃと、ごく短距離でしか盗み聞きした内容を受け取れんからの。それを受け取るために、近くに魔物を配置。受け取った内容を、今度は出力を上げてどこぞに送る。そういう使い方をしとった可能性があるの」
「だとすると、カルナに心当たりがあるか聞かないと――」

 ミリィのこともあるので、今すぐ話を聞くのを俺がためらっていると、会議室の扉が開けられる。
 視線を向ければ、そこに居たのは和真と五郎。
 そして、その後ろで静かに待っていたカルナとミリィだった。
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