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第2話
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「あ~あ、つまんないな~ 」
麗らかな日差しが差し込む屋上で1人の男が呟いた。
その男は寝転がりながら足を組み、ブランブランと足を揺らす。
「モン◯ンもランク999まで上げたし、次のゲーム探そうかな? でもな~もうゲームやり過ぎて飽きたっていうか、なんていうか。そんな感じだしな~。漫画は、読みたいもの全部読んだし‥‥。」
「あ! そうだ! 」
男は何かを思いついたように勢いよく立ち上がった。そして、拳をなぜか突き上げる。
「今日ってライトノベルの発売日じゃないか!! ああそうだった! それを買いに行こう! 金ならたんまりあることだし大人買いだ! ヒヤッホォォォォ!! 」
『ライトノベル』
10~20代の若者向け小説のことで、略してラノベと呼ばれる事もある。
そのライトノベルをこの男は読みあさっていた。
それだけではなく携帯小説サイトでも上位のものからマイナーなものまで全てだ。
しかも、マンガ、アニメ、ゲームなどのサブカルチャーをこよなく愛し、気になったものから片っ端手を出している。
所謂(いわゆる)、オタクと呼ばれるものだがこの男はなんら恥じていない。
むしろさらけ出している。
本人が言うに、勉強も、スポーツも全てこなし、そういったものを買うお金は自分が働いて得たもので買っているので誰にも文句は言わせない、だそうだ。
一介の高校生である男が、勉強、スポーツはまだしもお金は自分で稼いだとは、普通では戯言と片付けられるだろうが、彼は違う。
彼は今より5年前、世界に鬼才と名を馳せ、唐突に姿を消した者。霧ヶ峰 才華 (きりがみね さいか )だ。
才華は特許を幾つも取り、それで一生遊んで暮らしても使い切れない程の莫大な富を築いている。
その中からお金を出しているので、本人の言っていることは正しいと言っていい。しかも、才華は幼い頃に両親を亡くしているので、生活費まで全て自分で出している。
誰も才華に文句を言える人などいないだろう。
いや、中には青春真っ盛りな才華がドップリとオタク世界に浸かることはダメだという者がいるかもしれないが、と言うかいたが、『なんで? 』と感情の篭っていない声と目で見られて、その時から言う事は無くなった。
この事をオタクの勝利だ! と高らかに笑っていたが、それはともかく、才華は地面に置いていたカバンを手に取り扉へと歩いていく。
「えーと駅前の本屋から回るか。あそこは品揃えがいいからな。あとはちょっと遠いけど、バス停近くの本屋にも行こうかな。」
ドアノブに手を伸ばし、ガチャっと捻り開けようとしたが、開かない。
「ん? おかしいな? 開かないぞ? ピッキングで開けたままのはずなんだけど。」
才華の口からとんでもない言葉が飛び出す。そう才華は施錠されていた筈の学校の屋上の扉をピッキングで開けていたのだ。
しかも付け加えて言うならば、今は授業中。
つまりサボっている。
そこからさあ、ラノベ買いに行こうという発想に至るのはさすが、鬼才というべきか否か、なんとも言えないがそれはともかく、ドアが開かない。
「どうなっているんだ? 」
蹴り破るかと、才華が考え始めたところで、屋上全体を包み込むように、紫色に輝く魔法陣が展開した。
「って、うお!? 魔法陣!? 」
才華は足元に広がっているそれを見て、これまで収集してきた知識がフル回転させ、これが一体どういう事を意味しているのかたどり着いた。
そして、口元に笑みを浮かべる。
「異世界転移……! 」
才華がそう言ったのと同時に、屋上は目を開けていられない程の光量に包まれた。
その光は徐々に収まっていき、やがて普段通りの屋上に戻る。
だが、そこに才華の姿はなかったのだった。
麗らかな日差しが差し込む屋上で1人の男が呟いた。
その男は寝転がりながら足を組み、ブランブランと足を揺らす。
「モン◯ンもランク999まで上げたし、次のゲーム探そうかな? でもな~もうゲームやり過ぎて飽きたっていうか、なんていうか。そんな感じだしな~。漫画は、読みたいもの全部読んだし‥‥。」
「あ! そうだ! 」
男は何かを思いついたように勢いよく立ち上がった。そして、拳をなぜか突き上げる。
「今日ってライトノベルの発売日じゃないか!! ああそうだった! それを買いに行こう! 金ならたんまりあることだし大人買いだ! ヒヤッホォォォォ!! 」
『ライトノベル』
10~20代の若者向け小説のことで、略してラノベと呼ばれる事もある。
そのライトノベルをこの男は読みあさっていた。
それだけではなく携帯小説サイトでも上位のものからマイナーなものまで全てだ。
しかも、マンガ、アニメ、ゲームなどのサブカルチャーをこよなく愛し、気になったものから片っ端手を出している。
所謂(いわゆる)、オタクと呼ばれるものだがこの男はなんら恥じていない。
むしろさらけ出している。
本人が言うに、勉強も、スポーツも全てこなし、そういったものを買うお金は自分が働いて得たもので買っているので誰にも文句は言わせない、だそうだ。
一介の高校生である男が、勉強、スポーツはまだしもお金は自分で稼いだとは、普通では戯言と片付けられるだろうが、彼は違う。
彼は今より5年前、世界に鬼才と名を馳せ、唐突に姿を消した者。霧ヶ峰 才華 (きりがみね さいか )だ。
才華は特許を幾つも取り、それで一生遊んで暮らしても使い切れない程の莫大な富を築いている。
その中からお金を出しているので、本人の言っていることは正しいと言っていい。しかも、才華は幼い頃に両親を亡くしているので、生活費まで全て自分で出している。
誰も才華に文句を言える人などいないだろう。
いや、中には青春真っ盛りな才華がドップリとオタク世界に浸かることはダメだという者がいるかもしれないが、と言うかいたが、『なんで? 』と感情の篭っていない声と目で見られて、その時から言う事は無くなった。
この事をオタクの勝利だ! と高らかに笑っていたが、それはともかく、才華は地面に置いていたカバンを手に取り扉へと歩いていく。
「えーと駅前の本屋から回るか。あそこは品揃えがいいからな。あとはちょっと遠いけど、バス停近くの本屋にも行こうかな。」
ドアノブに手を伸ばし、ガチャっと捻り開けようとしたが、開かない。
「ん? おかしいな? 開かないぞ? ピッキングで開けたままのはずなんだけど。」
才華の口からとんでもない言葉が飛び出す。そう才華は施錠されていた筈の学校の屋上の扉をピッキングで開けていたのだ。
しかも付け加えて言うならば、今は授業中。
つまりサボっている。
そこからさあ、ラノベ買いに行こうという発想に至るのはさすが、鬼才というべきか否か、なんとも言えないがそれはともかく、ドアが開かない。
「どうなっているんだ? 」
蹴り破るかと、才華が考え始めたところで、屋上全体を包み込むように、紫色に輝く魔法陣が展開した。
「って、うお!? 魔法陣!? 」
才華は足元に広がっているそれを見て、これまで収集してきた知識がフル回転させ、これが一体どういう事を意味しているのかたどり着いた。
そして、口元に笑みを浮かべる。
「異世界転移……! 」
才華がそう言ったのと同時に、屋上は目を開けていられない程の光量に包まれた。
その光は徐々に収まっていき、やがて普段通りの屋上に戻る。
だが、そこに才華の姿はなかったのだった。
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