頬をすべる光

辻本瞬

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クラス替え

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四月四日。

今日は始業式だった。クラス分けが楽しみであるはずもなかったが、清治と同じクラスになったのは救いだ。
雨は午後には上がり、母はお花見の心配をしていた。

二年では二組だ。
担任の小関先生は古文の嘱託の先生だ。
着席して、まず自己紹介と言う儀式を潜り抜けなくてはならないのだが、これが毎年僕の頭痛の種である。
上原拓斗です、と自分の名前を言えばいいだけなのに、手に汗は握るし視線は泳ぐ。

こんな苦行に今月一杯は耐えなければならないのだろうか。
新任の先生も沢山「初めての君たちの名前を呼ばせ」てもらうのだろうから。

小関先生は僕がさっさと切り上げたかった自己紹介を伸ばしてくれた。

「上原君は写真部の副部長だそうだ。三年生が引退したら、部長だな。
みんな、応援してあげるように」

まばらな拍手が起こった。
気まずいったらありはしない。

部長と言っても兼部していない部員が僕しかいないから、引き受けているだけなのだが。
内申に響くからそういうのはうけとくものよ、と女子は言うが、役職の面倒さよりただひたすらに写真を撮っていたい。
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