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冒険編
それぞれの戦い
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ルイスはまず、森の王ビルドのことや周囲の地形について観察する。
(ビルドの手に武器はない。ならフィエラと同じ格闘系か。体を覆っている甲羅はかなり硬そうだな。周りはそれなりに開けた場所ではあるが岩や木が多い。ギリギリ剣は使えそうだが槍は無理だな。それに森だから大規模な魔法を使うのは難しそうだ)
「カクニン。オワッタカ」
ルイスが現段階で確認できる情報をまとめ終えると、タイミングを見計らったかのようにビルドが声をかける。
「待っててくれたのか?律儀だな」
「タタカウトキ、ジョウホウハダイジダ」
(随分賢い奴なんだな。これは厄介だ)
ビルドの知性の高さについて情報修正を行った後、ルイスは腰に下げていた剣を鞘から引き抜く。
「ジュンビデキタラ、カカッテコイ」
岩の上から飛び降りたビルドは、静かに地面へと降り立ち腕を組んで仁王立ちする。
どうやらまずはルイスに先手を譲るつもりのようで、ビルドはよほど自身の防御力に自信があるようだった。
(なら、遠慮なく攻撃をさせてもらおう)
ルイスはゆっくりと剣を上段に構えると、闘気を纏わせて息を吐く。
意識を集中させたルイスは、不要な情報を削除してビルドだけに集中していく。
「ふっ!」
全身に身体強化をかけて強く地面を蹴ると、ルイスは一瞬でビルドの目の前に現れて剣を振り下ろす。
その瞬間、まるで金属と金属がぶつかり合うような音が鳴り響くと、衝撃が砂を巻き上げて煙が立ち上がる。
少しして砂煙が晴れると、ルイスの剣を受けても切り傷一つつかないビルドと剣を振り下ろしたまま動かないルイスの姿が現れた。
ルイスは軽く地面を蹴って距離を取ると、握りしめている剣を確かめる。
(少し刃が欠けてる。闘気で覆ってなかったら簡単に折れてただろうな)
「お前、硬すぎだろ」
「ナンジノコウゲキモ、ナカナカダ。ダガ、ワレノカタサニハ、オヨバズ」
刃が欠けた剣ではこれ以上役に立たないと判断したルイスは、それを地面へと投げ捨てると、拳を握って格闘術の構えを取る。
「お前の言う通り、剣じゃあ傷一つ付けられそうにないからこっちで行くとしよう」
ルイスはそう言うと、拳に闘気と身体強化を重ねがけする。
剣の場合は闘気のみしか付与することができないが、自身の肉体であれば闘気に身体強化を重ねがけさせることができる。
この技は、前にフィエラが獣化と身体強化を同時に使用していたのを見て、もしかしたらと思い練習したらできるようになったものだった。
「フム。ウケテタトウ」
ビルドは俺が構えたのを見ると、組んでいた腕を解くがとくに構えたりはしなかった。
だが、その佇まいには一切の隙がなく、自然体であるが故にどんな攻撃にも対処するという雰囲気が感じられる。
(凄いな)
ルイス自身も様々な格闘術の知識を身に付け、自身に合った最適な動きが出来るようになったと思っていたが、ビルドを見ているとまだまだ境地には遠いと思い知らされる。
「ふぅ」
短く息を吐いたルイスは、この戦いに勝てば大きく成長できるだろうことを予感しながら、ビルドへと挑むのであった。
一方、ルイスとビルドから離れた場所に移動したフィエラと蜂型の魔物も、ルイス同様に静かにお互いを観察していた。
(見た目は蜂型。ということは動きが早い?攻撃力自体は高くなさそうだけど、手についた針から毒を使ってきたら厄介。強さはあの時のドラゴンくらいかな)
フィエラは目の前にいる魔物の強さを、氷雪の偽造の40階層にいたドラゴンくらいの強さと予想を立てる。
「…あなたは話せるの?」
「スコ、シ」
「名前はある?」
「マイ、ト。オウ、カラ…モラッ、タ」
「ん。私はフィエラ」
フィエラとマイトは、お互いの戦闘スタイルや特徴を大凡把握すると、ゆっくりと構えて戦闘態勢へと入る。
フィエラは拳を闘気で纏い身体強化を体へとかける。
マイトは羽を使って宙へと浮かぶと、じっとフィエラのことを見続ける。
「シッ!」
最初に動いたのはフィエラで、自身の武器であるスピードを活かして一瞬で距離を詰めると、拳を振りかぶってマイトを殴打しようとする。
しかし、速さに自信があるのはフィエラだけではなく、マイトもまた蜂として速さには自信があった。
そのため、マイトはフィエラの一撃を難なく避けると、逆に手の先に生えた針でフィエラを刺そうと振り下ろす。
フィエラはそれを回し蹴りで弾くと、地面に手をついて一度距離を取った。
次に仕掛けたのはマイトで、空中で前傾姿勢になると、消えたかのようにフィエラの後ろへと回り込み、両手の針で抱きしめるようにして刺し殺そうとする。
フィエラは身を屈めて躱わすと、しゃがんだ勢いを利用して回転しながら胴体を殴りに行くが、マイトはそれをあっさりと避けた。
その後もフィエラとマイトはお互いにスピードを活かして攻防を繰り広げるが、どちらも傷一つ付けることができなかった。
(やりづらい。タイプが私と似すぎてる)
近接戦闘を得意としていることや、速さを活かして攻撃するという点が自身の戦い方と似ており、フィエラはマイトとの戦いづらさを感じていた。
「…ツドエ。ワガ、コドモ、タチヨ」
フィエラがどうやって攻めようかと考えていると、マイトが突然両腕を広げた。
すると、マイトが自身の種族魔法である『蜂の女王』を使用すると、後ろからたくさんの蜂型の魔物が出てきて彼女の周りを飛び回る。
「イケ」
彼女が腕を振ると、それを合図に蜂たちがフィエラへと向かって飛んできた。
「『部分獣化』」
フィエラがそう呟くと、彼女の腕だけが獣化した。彼女がルイスと旅を始めてから練習してきたのは、闘気の使用方法と瞬時に獣化をすることだった。
闘気の方はルイスも使用することができるのでいろいろと教わり使用できるようになったが、獣化については獣人特有の能力のため、残念ながらルイスから教わることはできなかった。
なので、フィエラ自身で瞑想をしたり体力をつけたりと特訓をする事で、部分的にではあるが何とか瞬時に獣化できるようになったのだ。
「シッ」
フィエラは獣化したことで鋭い爪が生えた手を使い、迫って来る蜂たちを次々と切り殺していく。
しかし、いくら殺しても尽きることなく出て来る蜂たちに、手数が少ないフィエラは少しずつ追い込まれてく。
「っ!」
終わりの見えない蜂の大群に、一瞬だけ油断をしたフィエラが腕を刺された。
すると、その刺されたところの感覚が少しずつ無くなっていく感じがして、フィエラは急いでその場を離れて毒抜きをする。
「これは、麻痺毒…」
すぐに毒抜きをしたのであまり毒は回っていなかったが、それでも腕に少しの痺れが残っていた。
(これはまずい。他の蜂を倒すより、マイトを倒す方が良さそう)
フィエラは蜂型の魔物を最初に全て倒すつもりだったが、毒があることが分かった以上、これ以上刺されるわけにはいかないと判断し、指示を出しているマイトを最初に倒すことにした。
「コドモ、タチ」
マイトはフィエラが自身を狙って来ることに気がつくと、自分を閉じ込めるように蜂たちを周囲に集める。
「邪魔」
フィエラはマイトの周りを飛んでいる蜂たちに対して、氷蛇のガントレットが持つ能力の一つである霜を手に纏う。
すると、フィエラの拳が通った周辺にいた蜂たちは霜の効果で動きが鈍り、次々と地面に落ちていく。
そして、あと少しでマイトに一撃を与えられそうになった時、フィエラの足に激痛が走った。
「うっ!!」
フィエラは何が起きたのか分からず下を見てみると、蜂が数匹足にくっついて針を刺していた。
すぐにその蜂たちを殺してまた距離を取るが、刺された箇所の痛みは一向に引いてくれず、フィエラはルイスから貰っていたポーションを刺された箇所へとかける。
(どういうこと。ちゃんと蜂は全部見てたのに)
今度は油断しないようにと、しっかりと近づく蜂たちを警戒していたはずなのに、突然足を刺されたことでフィエラは困惑する。
そして、改めて飛んでいる蜂たちを観察してみると、先ほど自身の足を刺してきた蜂がいないことに気がついた。
「まさか。下…」
「セイ…カイ。ソイル、ビー。ツチノナカ、ニ、スムハチ」
ソイルビーとは、土の中に巣を作る蜂で、蜜などの食料を集める以外は基本的に土の中に生息している。
そして、この蜂はマイトが育てた特別性であり、刺されると激痛が襲うようになっているのだ。
近づけばマイトの周りを飛んでいる蜂に邪魔をされ、地中からもソイルビーが死角を突いて攻撃して来る。
フィエラはこの状況でどうすればマイトを倒すことができるのか、冷静に思考を巡らせていくのであった。
(ビルドの手に武器はない。ならフィエラと同じ格闘系か。体を覆っている甲羅はかなり硬そうだな。周りはそれなりに開けた場所ではあるが岩や木が多い。ギリギリ剣は使えそうだが槍は無理だな。それに森だから大規模な魔法を使うのは難しそうだ)
「カクニン。オワッタカ」
ルイスが現段階で確認できる情報をまとめ終えると、タイミングを見計らったかのようにビルドが声をかける。
「待っててくれたのか?律儀だな」
「タタカウトキ、ジョウホウハダイジダ」
(随分賢い奴なんだな。これは厄介だ)
ビルドの知性の高さについて情報修正を行った後、ルイスは腰に下げていた剣を鞘から引き抜く。
「ジュンビデキタラ、カカッテコイ」
岩の上から飛び降りたビルドは、静かに地面へと降り立ち腕を組んで仁王立ちする。
どうやらまずはルイスに先手を譲るつもりのようで、ビルドはよほど自身の防御力に自信があるようだった。
(なら、遠慮なく攻撃をさせてもらおう)
ルイスはゆっくりと剣を上段に構えると、闘気を纏わせて息を吐く。
意識を集中させたルイスは、不要な情報を削除してビルドだけに集中していく。
「ふっ!」
全身に身体強化をかけて強く地面を蹴ると、ルイスは一瞬でビルドの目の前に現れて剣を振り下ろす。
その瞬間、まるで金属と金属がぶつかり合うような音が鳴り響くと、衝撃が砂を巻き上げて煙が立ち上がる。
少しして砂煙が晴れると、ルイスの剣を受けても切り傷一つつかないビルドと剣を振り下ろしたまま動かないルイスの姿が現れた。
ルイスは軽く地面を蹴って距離を取ると、握りしめている剣を確かめる。
(少し刃が欠けてる。闘気で覆ってなかったら簡単に折れてただろうな)
「お前、硬すぎだろ」
「ナンジノコウゲキモ、ナカナカダ。ダガ、ワレノカタサニハ、オヨバズ」
刃が欠けた剣ではこれ以上役に立たないと判断したルイスは、それを地面へと投げ捨てると、拳を握って格闘術の構えを取る。
「お前の言う通り、剣じゃあ傷一つ付けられそうにないからこっちで行くとしよう」
ルイスはそう言うと、拳に闘気と身体強化を重ねがけする。
剣の場合は闘気のみしか付与することができないが、自身の肉体であれば闘気に身体強化を重ねがけさせることができる。
この技は、前にフィエラが獣化と身体強化を同時に使用していたのを見て、もしかしたらと思い練習したらできるようになったものだった。
「フム。ウケテタトウ」
ビルドは俺が構えたのを見ると、組んでいた腕を解くがとくに構えたりはしなかった。
だが、その佇まいには一切の隙がなく、自然体であるが故にどんな攻撃にも対処するという雰囲気が感じられる。
(凄いな)
ルイス自身も様々な格闘術の知識を身に付け、自身に合った最適な動きが出来るようになったと思っていたが、ビルドを見ているとまだまだ境地には遠いと思い知らされる。
「ふぅ」
短く息を吐いたルイスは、この戦いに勝てば大きく成長できるだろうことを予感しながら、ビルドへと挑むのであった。
一方、ルイスとビルドから離れた場所に移動したフィエラと蜂型の魔物も、ルイス同様に静かにお互いを観察していた。
(見た目は蜂型。ということは動きが早い?攻撃力自体は高くなさそうだけど、手についた針から毒を使ってきたら厄介。強さはあの時のドラゴンくらいかな)
フィエラは目の前にいる魔物の強さを、氷雪の偽造の40階層にいたドラゴンくらいの強さと予想を立てる。
「…あなたは話せるの?」
「スコ、シ」
「名前はある?」
「マイ、ト。オウ、カラ…モラッ、タ」
「ん。私はフィエラ」
フィエラとマイトは、お互いの戦闘スタイルや特徴を大凡把握すると、ゆっくりと構えて戦闘態勢へと入る。
フィエラは拳を闘気で纏い身体強化を体へとかける。
マイトは羽を使って宙へと浮かぶと、じっとフィエラのことを見続ける。
「シッ!」
最初に動いたのはフィエラで、自身の武器であるスピードを活かして一瞬で距離を詰めると、拳を振りかぶってマイトを殴打しようとする。
しかし、速さに自信があるのはフィエラだけではなく、マイトもまた蜂として速さには自信があった。
そのため、マイトはフィエラの一撃を難なく避けると、逆に手の先に生えた針でフィエラを刺そうと振り下ろす。
フィエラはそれを回し蹴りで弾くと、地面に手をついて一度距離を取った。
次に仕掛けたのはマイトで、空中で前傾姿勢になると、消えたかのようにフィエラの後ろへと回り込み、両手の針で抱きしめるようにして刺し殺そうとする。
フィエラは身を屈めて躱わすと、しゃがんだ勢いを利用して回転しながら胴体を殴りに行くが、マイトはそれをあっさりと避けた。
その後もフィエラとマイトはお互いにスピードを活かして攻防を繰り広げるが、どちらも傷一つ付けることができなかった。
(やりづらい。タイプが私と似すぎてる)
近接戦闘を得意としていることや、速さを活かして攻撃するという点が自身の戦い方と似ており、フィエラはマイトとの戦いづらさを感じていた。
「…ツドエ。ワガ、コドモ、タチヨ」
フィエラがどうやって攻めようかと考えていると、マイトが突然両腕を広げた。
すると、マイトが自身の種族魔法である『蜂の女王』を使用すると、後ろからたくさんの蜂型の魔物が出てきて彼女の周りを飛び回る。
「イケ」
彼女が腕を振ると、それを合図に蜂たちがフィエラへと向かって飛んできた。
「『部分獣化』」
フィエラがそう呟くと、彼女の腕だけが獣化した。彼女がルイスと旅を始めてから練習してきたのは、闘気の使用方法と瞬時に獣化をすることだった。
闘気の方はルイスも使用することができるのでいろいろと教わり使用できるようになったが、獣化については獣人特有の能力のため、残念ながらルイスから教わることはできなかった。
なので、フィエラ自身で瞑想をしたり体力をつけたりと特訓をする事で、部分的にではあるが何とか瞬時に獣化できるようになったのだ。
「シッ」
フィエラは獣化したことで鋭い爪が生えた手を使い、迫って来る蜂たちを次々と切り殺していく。
しかし、いくら殺しても尽きることなく出て来る蜂たちに、手数が少ないフィエラは少しずつ追い込まれてく。
「っ!」
終わりの見えない蜂の大群に、一瞬だけ油断をしたフィエラが腕を刺された。
すると、その刺されたところの感覚が少しずつ無くなっていく感じがして、フィエラは急いでその場を離れて毒抜きをする。
「これは、麻痺毒…」
すぐに毒抜きをしたのであまり毒は回っていなかったが、それでも腕に少しの痺れが残っていた。
(これはまずい。他の蜂を倒すより、マイトを倒す方が良さそう)
フィエラは蜂型の魔物を最初に全て倒すつもりだったが、毒があることが分かった以上、これ以上刺されるわけにはいかないと判断し、指示を出しているマイトを最初に倒すことにした。
「コドモ、タチ」
マイトはフィエラが自身を狙って来ることに気がつくと、自分を閉じ込めるように蜂たちを周囲に集める。
「邪魔」
フィエラはマイトの周りを飛んでいる蜂たちに対して、氷蛇のガントレットが持つ能力の一つである霜を手に纏う。
すると、フィエラの拳が通った周辺にいた蜂たちは霜の効果で動きが鈍り、次々と地面に落ちていく。
そして、あと少しでマイトに一撃を与えられそうになった時、フィエラの足に激痛が走った。
「うっ!!」
フィエラは何が起きたのか分からず下を見てみると、蜂が数匹足にくっついて針を刺していた。
すぐにその蜂たちを殺してまた距離を取るが、刺された箇所の痛みは一向に引いてくれず、フィエラはルイスから貰っていたポーションを刺された箇所へとかける。
(どういうこと。ちゃんと蜂は全部見てたのに)
今度は油断しないようにと、しっかりと近づく蜂たちを警戒していたはずなのに、突然足を刺されたことでフィエラは困惑する。
そして、改めて飛んでいる蜂たちを観察してみると、先ほど自身の足を刺してきた蜂がいないことに気がついた。
「まさか。下…」
「セイ…カイ。ソイル、ビー。ツチノナカ、ニ、スムハチ」
ソイルビーとは、土の中に巣を作る蜂で、蜜などの食料を集める以外は基本的に土の中に生息している。
そして、この蜂はマイトが育てた特別性であり、刺されると激痛が襲うようになっているのだ。
近づけばマイトの周りを飛んでいる蜂に邪魔をされ、地中からもソイルビーが死角を突いて攻撃して来る。
フィエラはこの状況でどうすればマイトを倒すことができるのか、冷静に思考を巡らせていくのであった。
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