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冒険編
決着
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ルイスはビルドの動きを模倣しながら、やはり彼の技術の高さに感嘆する。
(はは!なるほど!手首の動かし方が少し変わるだけでこんなに簡単に技を受け流せるのか!)
ルイスは笑う。いくら殴られて蹴られようと、技を受け流されて傷一つ付けられなかろうと、自身がさらに成長していることが楽しくて笑い続ける。
「あぁ、本当に楽しいなぁ」
ビルドの投げ技で地面を転がったルイスは、溢れる感情を言葉にしてニヤリと笑った。
その表情は新しいおもちゃを与えられた子供のようで、何処までも純粋にこの戦いを楽しんでいることが伝わってくる。
「この瞬間だけは、生きてることに感謝だな」
生きることに何の関心もないルイスだが、強者と戦う時だけは本当に生きていることに感謝していた。
そして、この戦いを楽しいと感じていたのはビルドも同じで、自身とここまで対等にやり合える相手がこれまでいなかったため、彼もまたルイスとの戦いを心の底から楽しんでいた。
「よし。次の段階に行こう」
地面に倒れていた体を起こしたルイスは、これまでビルドから学んだ動きを頭の中でトレースし、そこに自身が経験で得た知識を合わせてさらに最適化して行く。
「ここからは俺のオリジナルだ。もっと俺を楽しませてくれ!」
これまで戦う前は構えを取っていたルイスだったが、ビルドの動きを学習したことで彼にはもはや型と呼べるものはなく、自然体な動きで攻撃を仕掛けていく。
緩慢な動きでビルドの殴打を避けたかと思えば、目にも止まらぬ早さでカウンターを仕掛ける。
「クッ!」
この時初めて、ルイスの攻撃がビルドへと当たり、彼はあまりの衝撃に苦悶の声を漏らした。
(ナゼダ。ワレノコウラハ、ドラゴンノウロコヨリモカタイハズ。ナノニナゼ…)
ビルドは一度距離を取って殴られた箇所を見てみるが、甲羅に罅が入った様子などはなく、何故か甲羅の奥がズキズキと痛む。
「何故って顔をしているな?これは、東の国に伝わる技の一つで、発勁というものだ。掌底による衝撃を外側ではなく内側に送ることで、内部破壊をする技だ。俺も本で読んだことがあるだけだったが…どうだ?効いただろ?」
ルイスはそう言うと、今度は悪戯が成功した子供のように笑い、また腕を下げて自然体に構える。
「さぁ!まだまだ楽しもうぜ!」
気分が最高潮まで高揚したルイスは、ビルドに与えられたダメージも疲労感も脳に加わる負荷さえも全て無視し、正面からビルドへと突っ込んでいく。
ビルドは近づいて来るルイスを迎え撃つために下げていた腕で瞬時にルイスの顔を狙って拳を打ち出すが、ルイスはそれを頬を掠らせながら避けると、ビルドの懐に入って鳩尾部分に発勁を叩き込む。
「グハッ!!」
ビルドは発勁のダメージを受け流すことができずそのまま後方へと吹き飛んでいき、大きな岩へと衝突する。
「ゴホッ…」
吐血したビルドは膝をついて呼吸を整えると、口元の血を拭ってルイスに視線を向ける。
(ナントイウセイチョウソクド。モハヤワレノウゴキヲカンペキニモホウシ、サラニジシンノウゴキニモ…サイテキカサセテキテイル)
このままではまずいと感じたビルドは、自身の種族魔法を使うことに決め、立ち上がって精神を集中させる。
「『森の王』」
森の王とは、森の王特有の種族魔法で、王が森にいる間、その全てが王の味方をするという魔法だ。
しかし、この魔法は強力な分、魔力の消費が激しく長い時間使用することができない。
「イクゾ」
ビルドはそう言って地面を強く蹴ると、自身の最高速度でルイスへと近づく。
しかし、動体視力を限界まで上げているルイスにとって、ビルドの動きはまだ捉えられる範囲だった。
(胴体への殴打狙いか。なら、体を少しズラしてカウンターを…っ?!)
これまで通り、カウンターで発勁を喰らわせようと左足を引こうとしたルイスだったが、足に蔓のようなものが巻き付いていて動かすことができなかった。
「シッ!」
「しまっ!?」
一瞬そちらに気を取られたルイスは、視線を少しだけビルドから外してしまい、次の瞬間には右脇腹へとビルドの拳がめり込んでいた。
「がはっ!!」
木を数本薙ぎ倒し、地面を何度も転がって太い木にぶつかりようやく勢いが止まったルイスは、朦朧とする意識の中、怪我の状態を確認する。
(何とか身体強化で守ったが、それでも骨が何本か逝ったな。頭がクラクラするのは脳震盪か。まずいな…)
何とか立ち上がろうとするルイスだったが、地面に手をついた瞬間まるで沈むかのように左腕が肘まで埋まってしまった。
ビルドはルイスのそんな隙を見逃すことなく距離を詰めると、貫手でルイスの心臓を貫こうとする。
「チッ!」
ルイスは腕が抜けないと判断すると、右手で左腕を切り落として地面を転がりビルドの攻撃を避けた。
(厄介な種族魔法だな。ビルドが蔓や土を操作しているのか?それとも森自体が意思を持ってビルドに味方しているのだろうか…)
ビルドの種族魔法について考察しながら、ルイスは無くなった左腕に氷魔法を使って義手を作る。
(とにかく、どっちにしろ森の全てが敵になったということか)
何度か手を開いたり閉じたりして義手がしっかり動く事を確認すると、ルイスも最後の覚悟を決める。
「ぶっつけ本番だが、やるしかないな」
ルイスは一度大きく深呼吸をすると、これまで頭の中で考えていたオリジナル魔法を自身に使用する。
「『白雷天衣』」
ルイスが魔法を使用すると、彼の体の周りにバチバチッと雷が迸り、ルイスの黄金の瞳が青白く光る。
「まだ無駄は多いが、何とか形にはできたな」
白雷天衣とは自身の体に雷を付与する魔法で、効果はまさに雷のような速さで動くことができ、攻防時も相手に追加ダメージを与えることができるという優れものだ。
しかしその分、体への負担が大きく魔力消費も酷いため、ビルドの種族魔法と同様に長時間の使用はまだできない。
「さぁ、最後の戦いだ」
ルイスとビルドは一度視線を合わせると、合図もなく同時に動いた。
ビルドが動くのに合わせて蔓や土、そして風さえもがルイスの動きを止めようと攻撃を仕掛けるが、ルイスは一瞬で移動を繰り返してそれらの攻撃を全て交わして行く。
二人の戦いはすぐに決着がついた。いや、二人にとっては数時間にも思える攻防が、その数分間の時間にはあった。
まさに雷の如く動き回るルイスは、襲いかかる蔓を置き去りにし、足を取ろうとする土よりも早く地を駆ける。
自身を切り裂こうとする風はもはや微風で、風さえもルイスの動きに合わせて攻撃することができない。
対するビルドは、もはや目では捉えきれないルイスの動きを、魔物として研ぎ澄まされた感覚をさらに高め、勘でルイスの動きについて行く。
そして、ルイスが自身の目の前に現れると感じた瞬間、右拳を硬く握り正拳突きを放つ。
しかし、ルイスはそれを氷の義手を犠牲に受け流すと、雷を掌に集めて胸へと掌底を喰らわす。
「『雷昇発勁』」
「ゴフッ!」
ルイスの雷昇発勁を受けたビルドの体内は、発勁による衝撃と雷魔法による雷撃でズタズタになり、回復不可能な致命傷となる。
「ミゴト…ダ」
ビルドはそう言うと、立っていることが出来なくなり後ろへと倒れた。
「お前も強かった。いい勉強になったよ」
ルイスの言葉を受けてビルドは軽く笑うと、そのまま意識を手放して息絶えた。
ルイスは白雷天衣を解除すると、全身の筋肉を引き裂くような痛みと疲労感から地面へと倒れ込む。
「あー、疲れた。さすがにしばらく動けそうにないな」
ルイスが木の間から見える空を眺めながら満足感で胸をいっぱいにしていると、マイトに勝利したフィエラが戻って来る。
「終わった?」
「あぁ。…はは。お互いボロボロだな」
「ん。凄く強かった」
フィエラは地面に倒れているルイスの近くに腰を下ろすと、優しく頭を持ち上げて自身の太腿へと乗せる。
「こっちもだ。何度死を覚悟したことか」
「私も死ぬかと思った」
二人はお互いの姿を見ると、どちらも言葉通り壮絶な戦いだったことが窺えた。
ルイスはあちこち切り傷や打撃痕が残っており、左腕まで失っている。
フィエラも切り傷が多く、また蜂たちに刺されたことで赤く腫れている箇所がいくつもあった。
「だが、おかげでまた一つ高みに登れた。フィエラ。俺たちはまだまだ強くなれるぞ」
「ん。どこまでもついて行く」
その後、二人はゾイド率いる討伐隊がこの場所へとやってくるまで、お互いの戦いについて話したり、帰ったらゆっくり休もうと話すのであった。
(はは!なるほど!手首の動かし方が少し変わるだけでこんなに簡単に技を受け流せるのか!)
ルイスは笑う。いくら殴られて蹴られようと、技を受け流されて傷一つ付けられなかろうと、自身がさらに成長していることが楽しくて笑い続ける。
「あぁ、本当に楽しいなぁ」
ビルドの投げ技で地面を転がったルイスは、溢れる感情を言葉にしてニヤリと笑った。
その表情は新しいおもちゃを与えられた子供のようで、何処までも純粋にこの戦いを楽しんでいることが伝わってくる。
「この瞬間だけは、生きてることに感謝だな」
生きることに何の関心もないルイスだが、強者と戦う時だけは本当に生きていることに感謝していた。
そして、この戦いを楽しいと感じていたのはビルドも同じで、自身とここまで対等にやり合える相手がこれまでいなかったため、彼もまたルイスとの戦いを心の底から楽しんでいた。
「よし。次の段階に行こう」
地面に倒れていた体を起こしたルイスは、これまでビルドから学んだ動きを頭の中でトレースし、そこに自身が経験で得た知識を合わせてさらに最適化して行く。
「ここからは俺のオリジナルだ。もっと俺を楽しませてくれ!」
これまで戦う前は構えを取っていたルイスだったが、ビルドの動きを学習したことで彼にはもはや型と呼べるものはなく、自然体な動きで攻撃を仕掛けていく。
緩慢な動きでビルドの殴打を避けたかと思えば、目にも止まらぬ早さでカウンターを仕掛ける。
「クッ!」
この時初めて、ルイスの攻撃がビルドへと当たり、彼はあまりの衝撃に苦悶の声を漏らした。
(ナゼダ。ワレノコウラハ、ドラゴンノウロコヨリモカタイハズ。ナノニナゼ…)
ビルドは一度距離を取って殴られた箇所を見てみるが、甲羅に罅が入った様子などはなく、何故か甲羅の奥がズキズキと痛む。
「何故って顔をしているな?これは、東の国に伝わる技の一つで、発勁というものだ。掌底による衝撃を外側ではなく内側に送ることで、内部破壊をする技だ。俺も本で読んだことがあるだけだったが…どうだ?効いただろ?」
ルイスはそう言うと、今度は悪戯が成功した子供のように笑い、また腕を下げて自然体に構える。
「さぁ!まだまだ楽しもうぜ!」
気分が最高潮まで高揚したルイスは、ビルドに与えられたダメージも疲労感も脳に加わる負荷さえも全て無視し、正面からビルドへと突っ込んでいく。
ビルドは近づいて来るルイスを迎え撃つために下げていた腕で瞬時にルイスの顔を狙って拳を打ち出すが、ルイスはそれを頬を掠らせながら避けると、ビルドの懐に入って鳩尾部分に発勁を叩き込む。
「グハッ!!」
ビルドは発勁のダメージを受け流すことができずそのまま後方へと吹き飛んでいき、大きな岩へと衝突する。
「ゴホッ…」
吐血したビルドは膝をついて呼吸を整えると、口元の血を拭ってルイスに視線を向ける。
(ナントイウセイチョウソクド。モハヤワレノウゴキヲカンペキニモホウシ、サラニジシンノウゴキニモ…サイテキカサセテキテイル)
このままではまずいと感じたビルドは、自身の種族魔法を使うことに決め、立ち上がって精神を集中させる。
「『森の王』」
森の王とは、森の王特有の種族魔法で、王が森にいる間、その全てが王の味方をするという魔法だ。
しかし、この魔法は強力な分、魔力の消費が激しく長い時間使用することができない。
「イクゾ」
ビルドはそう言って地面を強く蹴ると、自身の最高速度でルイスへと近づく。
しかし、動体視力を限界まで上げているルイスにとって、ビルドの動きはまだ捉えられる範囲だった。
(胴体への殴打狙いか。なら、体を少しズラしてカウンターを…っ?!)
これまで通り、カウンターで発勁を喰らわせようと左足を引こうとしたルイスだったが、足に蔓のようなものが巻き付いていて動かすことができなかった。
「シッ!」
「しまっ!?」
一瞬そちらに気を取られたルイスは、視線を少しだけビルドから外してしまい、次の瞬間には右脇腹へとビルドの拳がめり込んでいた。
「がはっ!!」
木を数本薙ぎ倒し、地面を何度も転がって太い木にぶつかりようやく勢いが止まったルイスは、朦朧とする意識の中、怪我の状態を確認する。
(何とか身体強化で守ったが、それでも骨が何本か逝ったな。頭がクラクラするのは脳震盪か。まずいな…)
何とか立ち上がろうとするルイスだったが、地面に手をついた瞬間まるで沈むかのように左腕が肘まで埋まってしまった。
ビルドはルイスのそんな隙を見逃すことなく距離を詰めると、貫手でルイスの心臓を貫こうとする。
「チッ!」
ルイスは腕が抜けないと判断すると、右手で左腕を切り落として地面を転がりビルドの攻撃を避けた。
(厄介な種族魔法だな。ビルドが蔓や土を操作しているのか?それとも森自体が意思を持ってビルドに味方しているのだろうか…)
ビルドの種族魔法について考察しながら、ルイスは無くなった左腕に氷魔法を使って義手を作る。
(とにかく、どっちにしろ森の全てが敵になったということか)
何度か手を開いたり閉じたりして義手がしっかり動く事を確認すると、ルイスも最後の覚悟を決める。
「ぶっつけ本番だが、やるしかないな」
ルイスは一度大きく深呼吸をすると、これまで頭の中で考えていたオリジナル魔法を自身に使用する。
「『白雷天衣』」
ルイスが魔法を使用すると、彼の体の周りにバチバチッと雷が迸り、ルイスの黄金の瞳が青白く光る。
「まだ無駄は多いが、何とか形にはできたな」
白雷天衣とは自身の体に雷を付与する魔法で、効果はまさに雷のような速さで動くことができ、攻防時も相手に追加ダメージを与えることができるという優れものだ。
しかしその分、体への負担が大きく魔力消費も酷いため、ビルドの種族魔法と同様に長時間の使用はまだできない。
「さぁ、最後の戦いだ」
ルイスとビルドは一度視線を合わせると、合図もなく同時に動いた。
ビルドが動くのに合わせて蔓や土、そして風さえもがルイスの動きを止めようと攻撃を仕掛けるが、ルイスは一瞬で移動を繰り返してそれらの攻撃を全て交わして行く。
二人の戦いはすぐに決着がついた。いや、二人にとっては数時間にも思える攻防が、その数分間の時間にはあった。
まさに雷の如く動き回るルイスは、襲いかかる蔓を置き去りにし、足を取ろうとする土よりも早く地を駆ける。
自身を切り裂こうとする風はもはや微風で、風さえもルイスの動きに合わせて攻撃することができない。
対するビルドは、もはや目では捉えきれないルイスの動きを、魔物として研ぎ澄まされた感覚をさらに高め、勘でルイスの動きについて行く。
そして、ルイスが自身の目の前に現れると感じた瞬間、右拳を硬く握り正拳突きを放つ。
しかし、ルイスはそれを氷の義手を犠牲に受け流すと、雷を掌に集めて胸へと掌底を喰らわす。
「『雷昇発勁』」
「ゴフッ!」
ルイスの雷昇発勁を受けたビルドの体内は、発勁による衝撃と雷魔法による雷撃でズタズタになり、回復不可能な致命傷となる。
「ミゴト…ダ」
ビルドはそう言うと、立っていることが出来なくなり後ろへと倒れた。
「お前も強かった。いい勉強になったよ」
ルイスの言葉を受けてビルドは軽く笑うと、そのまま意識を手放して息絶えた。
ルイスは白雷天衣を解除すると、全身の筋肉を引き裂くような痛みと疲労感から地面へと倒れ込む。
「あー、疲れた。さすがにしばらく動けそうにないな」
ルイスが木の間から見える空を眺めながら満足感で胸をいっぱいにしていると、マイトに勝利したフィエラが戻って来る。
「終わった?」
「あぁ。…はは。お互いボロボロだな」
「ん。凄く強かった」
フィエラは地面に倒れているルイスの近くに腰を下ろすと、優しく頭を持ち上げて自身の太腿へと乗せる。
「こっちもだ。何度死を覚悟したことか」
「私も死ぬかと思った」
二人はお互いの姿を見ると、どちらも言葉通り壮絶な戦いだったことが窺えた。
ルイスはあちこち切り傷や打撃痕が残っており、左腕まで失っている。
フィエラも切り傷が多く、また蜂たちに刺されたことで赤く腫れている箇所がいくつもあった。
「だが、おかげでまた一つ高みに登れた。フィエラ。俺たちはまだまだ強くなれるぞ」
「ん。どこまでもついて行く」
その後、二人はゾイド率いる討伐隊がこの場所へとやってくるまで、お互いの戦いについて話したり、帰ったらゆっくり休もうと話すのであった。
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