何度も死に戻りした悪役貴族〜自殺したらなんかストーリーが変わったんだが〜

琥珀のアリス

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冒険編

次の街へ

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 ビルドたちを倒した俺たちは、宿に戻ってからはご飯も食べずに体を洗うと、無くなった腕を治してその後は泥のように眠り、気がつけば翌日の昼になっていた。

 空腹感に襲われて目を覚ました俺は部屋の中を見渡してみると、隣のベットには珍しくまだ眠っているフィエラの姿があった。

(まぁ、お互い昨日は疲れたからな)

 俺は彼女を起こさないようにベットから降りて部屋を出ると、体を軽く伸ばしながら廊下を歩いて階段を下り宿屋を出る。

 この宿屋は朝食と夕食は宿で食べられるのだが、お昼は外で食べければならないため、今の時間帯に食べようと思ったら外に出る必要があったのだ。

「さて、何を食おうかな」

 ぶらぶらと屋台を見て回った俺は、串焼きやスープなどを買って近くのベンチに座ると、街を眺めながらそれらを食べる。

「あー、うまい。疲れた体に濃い味付け。ほんと最高」

 買ったものを美味しく食べながら、俺は次はどこに行こうかと考える。

「次は南に行こうかな。確か南にある街には海があって、すごく景色がいいって聞いた」

 海とは全てが塩水でできた大きな水たまりのようなもので、その果てを目で見ることはできないらしい。

 また、海の向こうには他の大陸や国が存在し、俺がビルドとの戦いで使った発勁の発祥の地でもある東の国も海を渡った向こう側にあるそうだ。

「いつかは海の向こうにも行ってみたいものだ」

 今回の旅では流石に時間が足りなくて行くことは出来ないが、来世でもそのまた来世でも構わないから、いつかは行けたらと思う。

「よし、帰るか」

 食事を終えた俺は、帰りにフィエラの分の串焼きを買うと、宿屋へと向かって歩きだすのであった。




 次の日。俺たちはお昼頃になるとゾイドさんの屋敷を尋ねる。

 話は既に通してくれていたようで、騎士たちに名前を伝えると直ぐに中へと入れてくれた。

 そして執事に案内されながら屋敷の中を歩いた俺たちは、扉を開けてもらい応接室へと入る。

「まもなく当主様がいらっしゃいます。しばらくお待ちくださいませ」

 執事の男性はそういうと、テーブルに紅茶を置いて壁の方で控える。
 それから少しして、二日前より疲れた様子のゾイドさんが部屋へと入ってきた。

「すまない。待たせてしまったね」

「いえ。それより、だいぶお疲れのようですが?」

「あぁ。何せ魔物暴走の後だから、後処理が大変でね。陛下にも状況を報告せねばならんし、やることが多くて大変なのだよ」

 ゾイドさんはそう言って苦笑するが、やはりその表情には疲労感が見て取れた。

「それより、左腕が戻っているね?どうしたんだい?」

「何となく想像がつくと思いますが、秘密ということで」

「そうか。君がそれを望むのならそうしよう。では早速だが、今回のお礼としてまずはその分の報酬を支払おう」

 ゾイドさんの言葉を合図に、執事の男性が俺たちの目の前にお金の入った袋を置く。
 見るからに大金が入っていることが窺えるが、ここで断るとゾイドさんにも失礼なので、俺はそれを受け取りマジックバッグへとしまった。

「あとはそうだな。何か欲しいものはあるかい?最初はうちの騎士として推薦しようかとも思ったのだが、君たちはどうやら旅を楽しんでいるようだし、それは望まないだろう。
 私が揃えられるものであれば取り寄せるから、何でも言ってくれて構わない」

 俺は何をお願いしようかと思いフィエラの方を見ると、彼女は特にないのか首を横に張る。

「なら、魔剣を一つお願いできますか?」

「魔剣を?」

「はい。実は先日の森の王との戦いの時、使っていた剣が使えなくなりまして。せっかくなので魔剣があればいただきたいなと…」

「魔剣か。希望する属性はあるかい?」

「特には」

「そうか。なら少し待っていたまえ」

 ゾイドさんが執事に声をかけると、その男性は一礼してから部屋を出ていく。

「ちょうど我が家の宝物庫に良い魔剣があるのだ。今それを持って来させたから少し待っていてくれ」

 それから少しして、先ほど出ていった執事が一本の剣を持って部屋へと戻ってきた。
ゾイドさんはそれを受け取ると、今度は俺の方へと差し出してくる。

「これは…」

 その魔剣の握りの部分が赤く染まっており、真ん中には紅蓮の魔石が嵌められていて、鑑定をしなくても炎系の魔剣であることがわかった。

「その魔剣は炎剣イグニード。見ての通り炎系の魔剣だ。能力は刀身に炎を纏うことができ、また使用中は火属性魔法の魔力消費を軽減させてくれる」

「いい剣ですね…」

 鞘から剣を抜いて見ると、魔石と同じく紅蓮に染まる刀身はまさに業火のようで、見ているだけで火傷してしまいそうなほどだった。

(この剣なら、俺の黒炎を付与しても壊れることはないだろう)

「気に入ってくれたかい?」

「えぇ。とても気に入りました」

「それは良かった。なら、他に欲しいものはあるかい?」

「今は特にないですね」

「そうか。なら、またこの街に来た時には寄ってくれたまへ。いつでも歓迎するよ」

「ありがとうございます」

 その後は、ゾイドさんの配慮でお昼をご馳走になり、俺たちは挨拶をしてから屋敷を出るのであった。




 次にやってきたのは冒険者ギルドで、初日に対応してくれたレイナさんに声をかけると、直ぐにレーネさんのもとへと案内してくれる。

「やぁ。やっときたね」

「お待たせしましたか?」

「気にしなくて良いよ。呼んだのは私だからね。さぁ、座りな」

 俺たちは部屋の中央にあるソファーへと座ると、対面にあるソファーにはレーネさんが腰を下ろす。

「それでだが。今回の森の王の件について、改めて話を聞かせてもらえるかい?」

「わかりました」

 俺はレーネさんにゾイドさんにも話した時と同じように、彼女と防壁の前で別れてからの話をする。

 森の王のもとへ向かっている時にゾイドさんたちとすれ違ったことや実際に戦った時の話、あとはフィエラが相手をしたもう一体についても説明をすると、彼女は一息ついて目を瞑る。

「…話はわかった。エイルとフィエラだったね。あんたらをSランクに昇格させようと思うんだが、どうだい?」

「いいんですか?」

 俺らは確かにSランクに昇格するための試験資格は得ているが、実際にSランクの魔物を倒しているところは見せていないし、面接だってしていない。

 なのに、Sランクに昇格しても良いのだろうかと思い尋ねる。

「構わないさ。あんたに見せてもらった森の王の強さはSランクでも上位かSSランクにすら届きそうな強さだった。
 あれを倒したというなら実力には問題ないし、あんたらが1000体近くの魔物の群れを二人だけで討伐したのも見ていたからね。

 それに、些か戦闘には熱くなるようだが、それ以外は礼儀もしっかりしているし、人柄も問題なさそうだしね」

 レーネさんがいう戦闘に熱くというのは、俺が戦って死ぬのなら構わないといった話についてだろう。

 まぁ、普通の人間なら誰しも死にたいなんて思わないだろうし、ましてや生きたいわけじゃないなんて言われれば人間性を疑うのは当然のことだろう。

「それで、どうする?ランクアップするかい?」

「お願いします」

「わかった。帰る前に受付でレイナにカードを渡しな。そしたらランクアップの手続きをしてくれるように言ってあるから、あとは彼女に任せるといい。話はこれで終わりだよ。さぁ、帰って休みな」

「ありがとうございます」

 レーネさんにお礼を言ったあと、受付でレイナさんにギルドカードを渡してランクアップの手続きをお願いすると、近くの椅子に座って呼ばれるのを待っていた。

「あ、エイルじゃないか!」

 すると、ギルドの扉を開けて入ってきたのは、前にキングトレントから助けたリックたち四人組だった。

「今日はどうしたんだ?エイル」

「あぁ。明日にはこの街を出るから、その前に今回の森の王の件について話が聞きたいってギルマスに呼ばれてな。それで今日はここにきたんだよ」

「なるほどな。お前が森の王を討伐したのなら、確かに話を聞くのは大切だな」

「それよりリック…お前…」

 俺はリックの右腕の方に目を向けると、そこには本来あるべきはずの右腕はなく、肘のあたりでグルグルと包帯が巻きつけられてあった。

「あー、これか?実は魔物暴走の時に不覚を取ってね。魔物にやられちまったんだ」

 リックは心配をかけまいとしてか、「たはは」と笑うが、目元はたくさん泣いたのか赤くなっていて、表情も少しだけやつれて見える。

(当然だよな。剣士が利き腕をなくせば、事実上の戦力外でしかない)

 フォールやソーニャ、メイルの三人もどう声をかけたら良いのか分からず、皆んな暗い顔をしていた。

(ふぅ。仕方ない)

「みんな、ちょっとついてこい」

「お、おい。どこに…」

 俺はリックの残っている左腕を掴むと、レイナさんに頼んで空き部屋を貸してもらう。

「どうしたんだよ。エイル」

「いいか?今からやることは、誰にも俺がやったとは言うな。面倒だからな」

「何を言って…」

「『完全回復』」

 俺が光魔法の完全回復を使うと、リックの無くなったはずの腕が再生され、何事もなかったかのように元に戻った。

「嘘だろ…」

「すごい…」

 これまで俺はこの魔法を普通に使ってきたが、実は部位欠損を治せる完全回復を使える者はこの世界にあまり多くない。

 というのも、無くなった部位を治すのには膨大な魔力が必要となり、また違和感なく再生させるには緻密な魔力操作と人体への理解が必要となるからだ。

 そのため、完全回復が使える者はどの国でも重宝されており、見つかれば国から雁字搦めにされるのだ。

 と言っても、高ランクダンジョンであればごく稀に部位欠損を治せるアイテムが手に入るため、高ランク冒険者であれば緊急時ように持っている場合もあるが。

「わかっていると思うが、この事は誰にも言うなよ」

「分かっている。本当にありがとう!」

 リックはそう言うと、涙を流しながら自身の腕を嬉しそうに摩っていた。

「エイル!本当にありがとう!でも、リックの腕を治してもらったのに、私たちにはそれに見合うお金が…」

「別にいいよ。リックには貴重な情報を貰ったし、そのお礼だから気にするな。それよりそろそろ戻ろう」

 俺はそう言うと、マジックバッグから空の瓶を一本取り出し、それを手に持って見えるようにしながら外へと出る。

 これは俺がリックに貴重なアイテムを使ったと思わせるためのカモフラージュであり、俺が持つのはリックたちがまだ持っていると思われて襲われないようにするためだ。

 部屋から出て受付へ戻ると、ちょうど更新の手続きが済んだという事でカードを受け取り、俺たちはリックたちに別れを告げる。

「それじゃあな、みんな」

「またいつか」

「あぁ!エイル!フィエラ!本当にありがとう!またいつかどこかで会おう!」

「またね!」

「次は一緒に酒を飲もう」

「お元気で」

 リックたちと別れた俺たちは、その後は宿屋でアドニーア最後の夜を過ごし、翌日には早朝にこの街を出るのであった。

 次に向かうのは南の街、湾岸都市ミネルバ。そこではどんな経験ができるの膨らませながら、俺はフィエラと二人で走りだすのであった。




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