何度も死に戻りした悪役貴族〜自殺したらなんかストーリーが変わったんだが〜

琥珀のアリス

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学園編

交渉

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 オルガの後に続いて談話室へと入った俺たちは、オルガと向かい合うようにしてソファーへと座り、ミリアはメイドらしく壁側へと控える。

「改めて自己紹介をするが、俺はクラン黒獅子の断罪のクランリーダーをやっているオルガで、冒険者ランクはSSだ」

「俺はエイル。クランとかには特に所属してないな。ランクはSだ」

 オルガの冒険者ランクは予想通り俺よりも上であり、彼から放たれる風格は正に強者のそれであった。

「さっきは迷惑をかけたようですまなかったな」

「いや、あんたが謝ることでもないだろう。あの男はあんたのクランメンバーでもなかったようだし、謝るとしてもあの男の方だろ?」

「はっはっは!確かにな。ならさっきの件はこれで終わりにしよう」

 オルガはしばらくの間、楽しそうに笑った後、少し真面目な表情へと変わり目を細める。

「エイルってよ。もしかして、二年ほど前にアドニーアの魔物暴走を止めたあのエイルか?」

「魔物暴走を止めた、か。それは結果的にって話だな。俺は森の王と戦いたかっただけだ」

「やっぱりか!ははは!こりゃあいい!」

 何が楽しいのかは分からないが、オルガはそう言って笑うと、何故か嬉しそうな雰囲気へと変わった。

「何がそんなに嬉しいんだ?」

「そりゃあお前、俺はアドニーア出身なのさ。生憎と、魔物暴走の時にはすでにクランを作って帝都に来ていたから動けなかったんだが、向こうにいるダチにエイルっていう化け物のような冒険者が街を救ったって聞いたんだ。それから俺は、ずっとお前に会いたいって思ってたんだよ」

「ふーん、そうだったのか」

「あぁ!ほんとにありがとな!あの街にいる冒険者はみんな兄弟みたいなもんだからよ。ほんとに感謝してるんだ!」

 それから詳しく話を聞いてみると、どうやらオルガはアドニーア領で暮らしていた孤児のようで、彼が幼い頃に冒険者をやっていた両親は魔物によって殺されてしまったらしい。

 その後、彼は同じ境遇の子どもたちを集めて助け合いながら生活するようになり、12歳になった時には冒険者として活動するようになったそうだ。

 それからはオルガの才能もあったのかすぐに頭角を表し、Sランク冒険者になった時にはずっと活動を共にしてきた仲間たちと黒獅子の断罪というクランを作り、数年前にはSSランクの冒険者になったことを話してくれた。

「だから俺は、過去の自分と同じ境遇の子供たちや若い冒険者をクランに入れ、活動しやすいようにクランリーダーとしてサポートしてるんだ」

「なるほどな。とても良い考えだと思うよ」

 オルガは見た目こそ黒い獅子のように他者を恐れさせる威圧感を放っているが、中身は仲間思いの優しいやつで、少し話しただけでも彼の人の良さが伝わってきた。

「それでだ。もしよければ、エイルもうちのクランに入らないか?」

「クランに?」

「あぁ。俺のダチが世話になったからお礼がしたくてな。それに、お前が強いことは一目見てわかった。もし入ってくれるなら、うちの幹部として迎え入れるつもりだが…どうだ?」

「ふむ。クランか…」

 正直、クランに入るなんてことはこれまで一度も考えたことがなかったし、何より入るメリットが現時点ではあまりなかった。

 クランは基本的に拠点を設置したところからあまり動くことはないし、大人数でダンジョンに挑むことが多い。

 そうなると、自由に動きたい俺としては動きを制限されることになるし、大人数で戦うと俺たちの戦いについて来られないやつらは邪魔になるだけだった。

「もちろん無理にとは言わない。だが、お前が入ってくれるのなら、こちらも最大限に要望は聞くつもりだ」

「うーん。なら、いくつかいいか?」

「あぁ。なんでも言ってくれ」

「まず一つ。クランに入った場合、パーティー編成はどうなる?」

「幹部の1人に新人教育を任せているやつがいる。基本的にそいつが新人たちの相性を見てパーティー分けをしている。人数は大体5人から6人ほどで、そのうちの1人にDランク冒険者を付けている」

「なら、俺たちにパーティーの再編成は必要ないし、Dランク冒険者もいらない。あんたのクランにどんなやつがいるのかは知らないが、今から低ランクの冒険者と組むつもりはないからな」

「それなら、元々そのつもりだったから安心しろ。正直、今のお前についていけそうなのは俺を含めて数人程度しかいない。最初からお前のパーティーを再編成するつもりはなかった」

「それは助かるな」

 俺は誰かと協力して戦うことがあまり得意ではなく、フィエラとシュヴィーナとだって、各々が戦いたいようにやった結果噛み合っているにすぎないのだ。

「二つ目。俺はクランには属するが、基本的には自由に行動させてもらいたい」

「自由に?」

「あぁ。俺には目的があるんだが、それを叶えるためにはどこか一箇所に留まるってことができない。

 それに、一応は学園の生徒でもあるからな。もちろん、あんたが俺の力が必要だって判断したなら手伝うし、未発見のダンジョンに挑む時は参加させてもらいたい。だが、それ以外は自由に行動させてほしいんだ」

「つまり、クランに入りはするが、基本的には干渉するなってことか?」

「そういうこと。だが、勘違いしてほしくないのは、クランに入ったからには、ちゃんとクランにも貢献する。

 俺は今後、強い魔物と戦うために魔物討伐の依頼を多く受ける予定だし、Sランクダンジョンにも挑戦するつもりだ。クランに必要な貢献度は十分に稼げると思うが、どうだ?」

 クランには1ヶ月ごとに実績や依頼の達成数などを報告する義務があり、その結果によってランクが上下する。

 そこで俺からの提案は、自由にしてくれるのなら、その分ダンジョン攻略という実績と依頼達成数で貢献してやるという話だった。

「なるほどな。確かに、お前たちみたいな強者を一つのところに縛りつけるのは勿体無い…か。いいだろう。その条件も飲んでやる」

「ありがと。最後に三つ目。これが一番重要なんだが…」

「なんだ?」

 俺は敢えて一度言葉を区切ると、ニヤリと笑ってから最後の条件を口にする。

「あんた。俺と戦おう」

「なんだと?」

「さっきも言ったが、俺の今のランクはSランクだ。元々ランクは上げたいと思っていたんだが、SSランクの冒険者は数が少ないだろ?

 そこにちょうどあんたが現れたんだから、この機会を逃すのは勿体無いと思ってさ。それに、個人的にもあんたとは戦いたいと思ってたんだ」

 SSランクになるためには、実際にSSランクの冒険者と戦ってその試験官が実力を認め、さらにギルドマスターと面接を行い、それを冒険者ギルド本部のお偉い様方が審議をして合格することで昇格することができる。

 しかし、SSランクの冒険者は数が少なく、ほとんどが高難度のダンジョンに挑戦していたり違う国で活動していたりと、なかなか会うことができなかったのだ。

「それに、あんたも俺と戦いたいだろ?」

「ふっ。はっはははは!そうだな!俺もお前とは戦いたいと思ってたんだ!やっぱり俺たちは気が合うようだな!」

 オルガは実に楽しそうにしばらくの間笑った後、先ほどまでとは違い、まるで獲物を狙う獣のような目つきへと変わる。

「いいだろう。俺がお前を試験してやる。ただ、今すぐにってのは無理だから、二週間後の休日でどうだ?」

「問題ない。それと、もう1人受けさせたいやつがいるんだが、そいつもいいか?」

「もう1人?」

 オルガは俺の言葉を確かめるように近くにいたソニアとミリアに目を向けるが、残念ながら俺が言っているのはこの2人のことではない。

「いや、今回受けさせるのはこいつらじゃない。今の2人の実力はAからSランク程度だからな。あんたらを楽しませることはできなさ」

「なら、いったい…あ、もしかして獣人の嬢ちゃんか?」

「正解だ」

 どうやら俺の話を聞いた友人からフィエラの話も聞いていたようで、オルガはすぐに納得したように頷いた。

「お前が言うのなら、確かな実力者なんだろう。だが、さすがに俺1人で2人を続けて相手にするのは無理があるぞ?」

「もう1人いるだろ?さっきのライって男がさ」

 先ほど、下の階で俺に絡んできた男を回収していったライと呼ばれていた男は、オルガとは違って威圧感などは無かったが、気配の消し方や動きの一つ一つが洗練されており、彼がSSランクの冒険者であることはすぐに気がついた。

「ははは!さすがだな。あの一瞬でライの実力を見抜くとは。確かにあいつもSSランクの冒険者だ。いいぜ。その望みも聞いてやる。他にはないか?」

「今のところは無いかな。何かあれば、また話させてもらうよ」

「そうか。あ、それとそこの嬢ちゃんたちもエイルと一緒にクランに入ってくれて構わない。実力者なら大歓迎だからな」

「ありがとうございます」

「あたしも、良ければ入れてもらいたいです」

「はいよ。なら、手続きは昇格試験の後でいいな」

「りょーかい。んじゃ、これで話も終わったし、俺たちは帰るよ」

「あぁ。二週間後にまた会おうぜ」

 オルガと別れた後、俺たちはシーラにも挨拶を済ませ、近くの店で甘いケーキを食べながら一休みする。

(計画には無かったが、面白い後ろ盾を手に入れられたな。これで高ランクの依頼も受けやすくなるし、未発見のダンジョンにも挑みやすくなった)

 思わぬ収穫ではあったが、これでまた一つ自身を強くするための手札が手に入ったことで少しだけ楽しくなる。

「あぁ。二週間後が本当に楽しみだ」

 オルガという強者と戦えることが決まった俺は、その後いつもより少しだけ浮かれた気持ちで学園へと戻るのであった。





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