オンラインゲームしてたらいつの間にやら勇者になってました(笑)

こばやん2号

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第2章 「ドグロブニク攻防戦」

88話:「丘の上の邸宅」

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漁港で出会ったおじさんからビルド大陸に渡るための定期船が出ていないとの話を聞いた大和たちは
船の管理する責任者を紹介され、その人物のもとに向かっていた。

「どんな人なんでしょうね?」

大和の顔を覗き込むように隣を歩いていたリナが問いかける。
その問いに思ったことをそのまま口にする。

「わかんねえけど、行ってみるしかないだろ?
 出ないとアース大陸でずっと足止めだ」

そう言いつつ、一行は歩を進める。
町の北東部に位置する場所に一軒の邸宅が建っていた。
その場所はドグロブニクの町の最も標高の高い小高い丘のような地形をした場所に建てられていた。
まさにこの町を支配する者が住むのに適した場所にその邸宅があるようにさえ思える立地だ。

厳粛な鉄製の門を潜り抜け、道なりに進むこと数分後ようやく邸宅の玄関口に到着する。
遠目からでも存在感を示していたがこうして間近で見るとその広さと大きさが嫌でも目立った。

玄関口の階段を数段登ると扉に付いたドアノックをゆっくりと3回打ち鳴らす。
木製のドアに鉄製のドアノックが殴打され、静寂に満ちている邸宅内に木霊する。
ややあってドアが開き中から給仕姿をした妙齢の女性が姿を現す。
どこか幼げな雰囲気を残しつつも落ち着いた態度の彼女が恭しく一礼し口を開く。

「何か御用でしょうか?」

丁寧な言葉遣いではあったがどこか言葉の端に棘のような雰囲気がある言い方で彼女は応対する。
こちらもそれに応戦するように彼お得意の営業スマイルで問いかける。

「お忙しいところ誠に申し訳ございません。 こちらに船の管理をしておられる
責任者の方がいると聞いてきたのですがお取次ぎ願えますでしょうか?」

こちらも遊びで来ているわけではないので、きっちりとした大人の対応を心掛ける。
そして、女性は「中へどうぞ」と招き入れてくれた。
応接間のような場所に通され、「こちらでしばらくお待ちください」と言い残し部屋を後にする。

部屋にはこの町の支配者らしく豪華絢爛な家具が所狭しと置かれていた。
深紅のじゅうたんには金の刺繍が施されておりかなり高価そうな代物だし
マーリンとリナが腰かけた白いソファーもまたいい素材を使って作られているのが見受けられる。

その他にも古美術に造詣があるのか、陶器の壺や鹿の頭のはく製など
お金持ちの趣味といったものが無造作に飾られていた。
部屋の中にあるものを一通り見終わった頃、先ほどの女性が戻ってきた。

「大変申し訳ございませんが旦那様は今日はお忙しいと言うことですので
今日の所はお引き取り願いませんでしょうか?」

言葉自体は丁寧だがあからさまに拒否の態度で言われているため
他の人からすれば不快に感じるだろう。
大和が「そうですか」と言おうとした時、彼女の対応に我慢できなくなったのか
リナが不快感を露わにしながら彼女に食って掛かった。

「先ほどからあなたのその態度はなんなのですか?
 仮にも尋ねてきたお客に向けるものではないと思いますが?」

「ご気分を害されたのでしたら謝罪します。
 ですがあなた方も突然やってきて旦那様に会わせろというのはいかがなものかと思いますが?」

彼女の言葉は正しい。
特にかつて営業サラリーマンだった大和はアポイントメントの重要性を理解していた。
事前に連絡することで相手の予定を狂わせることなく話を円滑に行えるため
こういった場合、事前に連絡するのが無難なのだがこの世界に少し馴染んだのか
そういう社会人としての対応を忘れていたのかもしれない。

そんなことを考えているとリナが演技がかった口調で話し始めた。

「控えおろう! このお方をどなたと心得る!!」

次の言葉を言う前に後ろから羽交い絞めにして退場させる。
「そんな空気じゃないから」という冷たい一言を添えて。

場の空気を変えるように大和がコホンと咳ばらいをし話し出した。

「それについてはこちらの不手際でした。 謝罪いたします。
 それと私の身分についてお伝えしておきますが私はこういうものです」

そう言って腰に手を当て鞘から剣を引き抜いたところで
急に女性が軽い身のこなしで一歩後退し、戦闘態勢を取った。

「やはり暗殺者か!!」

剣を引き抜いたことで主の命を狙う暗殺者と勘違いしたのか
逆にこちらに攻撃を仕掛けてきた。

「ちょちょっとまっ・・・・」

大和が弁明する暇もなく素早い動きで懐に入り、回し蹴りが放たれる。
その蹴りを軽く躱し、先ほど言おうとした言葉を口にする。

「ちょっと待っていただきたい! 俺たちは暗殺者じゃない!!」

こちらの言い分は全く聞かず、彼女が再び間合いを詰める。
今度は彼女の拳が大和の顔面に放たれる、慌ててそれを回避する。
彼女が放った拳は物凄い風切り音を出しながら盛大に空を切った。

「ちっ! これを躱すか!!」

あからさまに舌打ちをしながら一度距離を取る。
そして、隙を見ては大和の懐に的確に飛び込み必殺の一撃を入れていく。
大和も抜いた剣を構えつつも相手との話し合いをするため剣での攻撃をためらっていた。

「しまっ!」

その一瞬の躊躇いを突かれ、一瞬早く彼女が懐に入り込み拳を繰り出す。
相手の隙を付き自ら放った攻撃が相手に当たると確信し、ニヤリと口端を吊り上げる。
彼女の拳がどんどん顔に近づき顔面に直撃すると思われた刹那その攻撃はとある人物の声によって阻止された。

「止めるんだマチルダ!!」
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