オンラインゲームしてたらいつの間にやら勇者になってました(笑)

こばやん2号

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第2章 「ドグロブニク攻防戦」

95話:「マチルダの覚悟」

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大和たちはドグロブニクから沖合に数キロ船で進んだ地点を航行していた。
乗組員は船を操る船員が7人とゲソルドと戦う我々5名の計12名だ。
結局なし崩し的にマチルダを連れてくることになってしまったが行きがかり上仕方がない。

大和が船の手すりに肘をついて顔を支えながらぼんやりと大海原を見ていると
話しかけてくる人物がいた。

「ヤマト様お話してもよいでしょうか?」

振り返るとそこには案の定マチルダさんがいた。
赤い髪にサファイアのような青い瞳を持ちメイド服に身を包んだ彼女が
こちらの様子をちらちらと窺っていた。

「どうかしましたか? マチルダさん」

未だにどこか他人行儀な呼び方に頬を膨らめせながら彼女が答える。

「マチルダとお呼びください。
 その・・・・もうすぐ他人ではなくなるのですし・・・・・・」

そう言い切る彼女の頬は赤みを帯び瞳を揺らしながらこちらを見つめてくる。
もし今の彼女を他の男が見たら十中八九『かわいい』そう感想を述べることだろう。
そして、大和もまた例に違わず【男】なわけで・・・・

「かわいい・・・・」

そのつぶやきは彼にとっては心の中で呟いたはずの言葉だった。
だが彼女があまりにもあまり過ぎるほど可愛過ぎたために
心の声がいつしか口をついて出てしまったのだ。
その声量は通常であれば聞こえるかどうかといった囁きに近いものだったが
二人の距離が僅かしか離れていなかったがために彼の発した声は彼女の鼓膜を確実に振るわせた。

大和が発した言葉の意味を理解するや否や彼女の顔がみるみる林檎のように真っ赤に染まる。
二人の間に気まずい空気が流れるがそれは決して居心地の悪いものではなく
恥じらいや照れ臭いといった類からくる気まずさであるためお互い顔を背け押し黙る。

一呼吸ののち大和の方から沈黙を破った。

「あーマチルダさっ、いやマチルダ。 それで話って何かな?」

彼女が砕けた態度で接してほしいと見受けられたため
大和はそれ以降彼女に対し敬語を使うことを止めた。
マチルダも大和の変化が嬉しかったようで顔を輝かせるが
言葉には出さず、彼の質問に嬉々として答える。

「今回のゲソルド退治にわたしの同行を許可してくださりありがとうございました」

そう言いながら深々とお辞儀する彼女に困惑しながらも
いたずら心がくすぐられたのか突然「マチルダ?」と名前を呼ぶ
その呼びかけに頭を上げ彼女がこちらと目が合うタイミングを見計らって
彼女の額をコツンと小突く。

「いたっ、何するんですかっ!?」

そう抗議する彼女に向かってジト目で見ながら皮肉めいたことを述べる。

「全くだよ。 こっちは魔王討伐の重大な使命があるってのに
いきなりこんなのを嫁に貰えだなんていい迷惑だよっ!」

少しオーバーアクション気味に言っているが
マチルダの性格上あまりこういった冗談は通じないため
彼の言葉をそのまま真に受けてしまい顔を下を向けて俯く。

そして、俯いた彼女の顎に下から手を入れそのまま無理矢理
自分と目を合わせると彼はこう答えた。

「ホントに・・・・こんな美人を嫁に貰ったら
魔王討伐どころの話じゃなくなってしまうじゃないか・・・・」

そう気障なセリフを言いながらもはや十八番おはこになりつつある
【悩殺スマイル】を顔に浮かべてそうのたまう。
その言葉を聞いた瞬間彼女も現金なもので途端に先ほど以上に顔を赤くする。

そして、彼女が落ち着いたところで真面目に話をするため大和は口を開いた。

「マチルダ聞いてくれ、君を嫁に貰うという話は別としてだ。
 さっきも言ったが俺たちの旅は【魔王討伐】の旅だ。
 当然危険な旅になる。 それでも俺たちに付いてくると言うのか?」

大和は真面目な表情を作って彼女に覚悟はあるのかと問い掛ける。
下手をすれば生きて戻ることは叶わないかもしれない危険な旅。
魔族と敵対し、時には命を狙われることだってあるだろう。
この時大和は彼女を連れていくことを躊躇ためらっていた。

基本的に大和は他人の痛みを理解することができる人間だ。
だからこそ大和はもともとこの旅は一人で行くつもりだった。
だが度重なる偶然と成り行きで今や4人組になってしまったこの状況で
5人組になることはできれば避けたかったのだ。

彼女には本来の居場所がある。
帰るべき家がある。
家族と呼ぶに足りる人間もいる。

そんな彼女が手に入れたもの全てをかなぐり捨てて
命がけの旅に巻き込みたくないという思いが大和の中で膨らんでゆく。

そんな彼の心情を察知したのか。
柔らかい微笑みを浮かべて彼女は答えた。

「わたしはずっと居場所を探していました。 わたしの全てを捧げられるそんな場所を」

言葉を一度切り彼女が再び話し出す。

「もちろん今いる場所が不満でもましてや不服でもありません。
 アイゼン様はこんなわたしを娘のように可愛がってくださいますし
わたしもあの方を父のように慕っております。
 だからこそわたしは何か自分にしかできないことをやりたい
そしてそれを成した後であの方のもとに帰って行きたいのです!」

真剣な眼差しが大和の視線と交差する。
彼女の思い、願い、誓い、そんな感情がはっきりと伝わってくるのがわかった。
旅に同行したいというのは生半可な気持ちではないと言うことが、覚悟ができていることを確認できた大和は
彼女に旅の同行を許そうと口を開きかけた刹那。

耳朶じだを打つような大きな衝撃が大和たちの乗っていた船越しにに伝わってくる。
そして、その原因であろう元凶がなんなのか船員の悲鳴のような叫び声が教えてくれた。

「げっゲソルドだあああああああああああああああ!!!!」
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