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第2章 「ドグロブニク攻防戦」
110話:「お疲れ様パーティー」
しおりを挟むマチルダと別れた後、大和は宿屋に戻りまだ夢の中にいた三人のお寝坊さんを
フライパンとおたまをかんかん打ち鳴らしながら叩き起こした。
約一名はそれでも起きなかったため、某5歳児の母親がやるこめかみに拳を押し当て
そのままドリルのようにぐりぐりやると大音量の悲鳴と共に覚醒した。
朝の支度を手早く終わらせ朝食を取り、彼女と別れてから一時間半後
大和はマチルダの主人であるアイゼンに事の経緯を伝えるため彼の屋敷に足を運んだ。
「おおっ! これはヤマト殿、お待ちしておりました。
マチルダとの婚儀を了承してくださり私もこれで肩の荷がようやく―――」
「待て待て待てえええい!!」
今朝の彼女との話と異なる内容に思わずため口で突っ込んでしまう。
どういうことかとマチルダに視線を合わせると首を左右に振る仕草をする。
どうやらアイゼンが間違った捉え方をしているようで話が伝わっていなかったようだ。
大和はアイゼンに彼女とのやり取りを今一度聞かせると、なるほどと理解の色を示して頷く。
「ヤマト殿の旅に同行はするが現時点で結婚はできないと言うことですか・・・・・・」
娘のように可愛がってきた故なのかどことなくがっかりした様子で大和の説明の内容を
かみ砕いているようだった。
「あくまでも現時点ではということです。
この先彼女のことを本気で好きになればもちろん結婚も視野に入れた
お付き合いになってくることでしょう」
大和は想像以上に落胆するアイゼンに悪いと思ったのか補足説明を付け加える。
すると途端に彼の表情がキラキラと輝きを取り戻した。
自分の一言でこうも一喜一憂する彼が少し面白かった。
「であればマチルダ、此度の旅で是が非でもヤマト殿の心を射止めてくるのだぞ!
そしてゆくゆくはお前の子を早う抱かせておくれ」
「はい! アイゼン様頑張ります!!」
そこには本当の親子のような信頼関係を気付いた二人の姿があった。
当事者である自分としてはなんだか複雑な気持ちになりながらも
二人の仲の良さに心がほっこりとする大和であった。
その後ビルド大陸に行くための船の件についてアイゼンに聞いてみたところ。
船の準備に関しては問題ないようでいつでも出航できるとのことだった。
そこで大和はみんなの意見を聞いてみたところいつでも出発できるという回答だったが
今回の一件で肉体的にも精神的にもマチルダを含めた四人は疲弊しているのではと考えた大和は
新たに仲間に加わるマチルダとの親睦も兼ねた【お疲れ様パーティー】を開くことにした。
その話を聞いたアイゼンがパーティー会場となる屋敷の一部屋を貸してくれるとのことだったため
早速それぞれ役割分担を決め準備に取り掛かることにした。
まず会場の設営準備を元々そこに務めているマチルダに。
パーティーで出す料理をリナとエルノアの二人が担当し
残った大和とマーリンで料理を作る材料の調達のため二人で買い出しに行くこととなった。
マーリンが買い出しに行くと決まった瞬間、理由はわかりたくもないが
リナとエルノアが勢いよく反対したが、問題なくパーティーの準備をするために
大和が爽やかな笑顔で「二人の料理楽しみにしてるよ」と言うと。
「「かしこまりました、旦那様!!」」
「誰が旦那だっ!!」
そういった漫才が繰り広げられた後、大和とマーリンは料理の材料を買いに行くため
市場へと向かった。
マーリンと他愛ない会話を楽しみながら歩を進めていくと
幅広の大通りに所狭しと大小さまざまな露店が立ち並ぶ区画が目に飛び込んで来た。
そこには多種多様な野菜や果物を取りそろえた店や魚だけを扱っている店。
あるいは牛豚鳥などの肉類を扱う店などといった様々な店が立ち並んでいた。
店によっては魔物と思しき肉や魚系の魔物などといった類の物も含まれていたが
今回は無難に色とりどりの野菜や果物、牛や鳥の肉といった無難なものを選んでいった。
途中の店で香辛料を取り扱っている店があったため塩や胡椒など
今後の旅に必要になってくる最低限の調味料も購入しておくことにした。
「ところでヤマトさん? 前から気になっていたのですが
予備の装備品やアイテムなどはどこにしまっているですのん?」
この世界にはどうやらいろいろなものが収納できる大容量の魔法の鞄は存在せず
純粋にバッグやリュックなどといったもので所持品を収納しているようだ。
特に大和の使っているアイテムボックスはかつて旧王都で購入した馬車を
馬ごと収納しておける優れもので収納された物の時間は経過しないため
出来立ての料理を保管しておけばいつでも温かい料理が食べられるのだ。
「という感じの魔法の鞄を持ってるのさ」
大和の説明を聞いたマーリンは目を見開き感嘆する。
そして、頬を膨らませると可愛らしく悪態をつく。
「ヤマトさんだけずるいですのん!」
「これも勇者の特権じゃ、はっはっはっ!」
というようなやりとりをしていると二人の進行方向からとある女性が歩いてきた。
この女性の出現が彼の新たなる女難となることを大和はまだ知らなかったのである。
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