121 / 162
3部【ビルド大陸上陸編】 第1章 「勇者ってこんなに人気者?」
119話:「大和、取り囲まれる」
しおりを挟む「あなたの好きな○○は何ですか?」
この質問は人生において必ず一度は問われる内容のものだが
あなたは経験があるだろうか?
この質問を一日に千回質問されたことが―――。
現在大和たち一行はジェノンの港町の観光をするために市場と宿を含めた住居区とを繋ぐ
メインストリートを歩いていた。
通りには様々な職種と人種が入り混じった人の往来があり、港町らしい活気と喧騒が耳に届いてくる。
聞いた話によればジェノンはこの世界でも五本の指に入るほどの港町であり
その活気と職種・人種の多さでも随一の都市としてその名を世界に轟かせている町だそうだ。
「うーん・・・・・・」
そんな大通りのど真ん中を我が物顔とはいかないまでも、どことなく申し訳ない顔を
顔に張り付けながら少し小幅で大和は歩いていた。 理由は至って単純だ。
今は大和の周りを十人ほどの護衛が守ってくれていた。
どうやら町長のウミガスキーが手配してくれた護衛のようだったが、護衛が必要な理由を
リナたちも大和も十二分に理解することとなった。
絢爛豪華な宿を後にしてこの大通りにやってきた途端に大和の姿を見つけると
人がワラワラと集まり出し、現在大和の周囲には数百人規模の人ごみが形成されていた。
その人ごみの殆どが女性であり、男性もいるにはいるが人ごみに割って入ることができずに
弾かれてしまっていた。
何とかその群がってくる人を大和に近付けまいと護衛の人たちが頑張ってくれているのだが
あまりに人が多いため全てをカバーしきれず何人かは大和のところまでやって来てしまうのだ。
そこで先の質問【あなたの好きな○○は何ですか?】という類の質問攻めにあっているのだ。
内容は至ってシンプルなものが多く、好きな色、好きな食べ物、そして最も多いのが
好きな異性のタイプというのが八割を占め、その質問がある度リナたちの耳がこちらに傾いているのがわかった。
リナたちも協力して、大和に近づいてくる人たちの対応をしているがそれでも押し寄せる人の波に
対応しきれずにいたのだった。
「ヤマト様、申し訳ありません戦線を維持できません!!」
「馬鹿者! 諦めたらそこで終わりだとどっかの監督も言っていただろうが!!」
「ヤマト様、カントクってなんですか?」
そんな掛け合いもやりつつ何とか人ごみをかき分け人通りの少ない通りに来ることができたのだが
ここで少し気になることが起こった。
(ん? 見られているな、数は・・・・・・二人、いや三人か―――)
「ヤマト様」
「主」
そんなことを考えていると、フレイヤとマチルダが真剣な表情で大和の名を呼ぶ。
大和は二人に手を上げるとその先の言葉を言う必要はないと無言で答える。
殺気交じりの視線が肌にビリビリと伝わってくる感覚を覚えながら大和はできるだけ
人通りの少ない方へと進んでいく。
どれくらいの時間歩いただろうか、そこは人通りの少ない倉庫街のような場所で
見た目通り、物資やアース大陸に輸出する品物などを保管しておくための倉庫が立ち並ぶ区画であった。
その区画を抜けた先に波止場のような場所にたどり着いた大和たちは先ほどから追ってきていた
視線の主が現れたことを確認するととりあえず問いかけることにした。
「それで、お前たちは一体何者だ?」
「我々は魔人メルウェム様を神と崇め崇拝する信徒の一派メルウェム教財団である」
大和の前に現れた数人の人物のうち真ん中にいたリーダー格らしき中年の男性が答える。
黒髪をオールバックにした目つきの鋭い痩せ型の見た目をした男だ。
「故あって、勇者コバシヤマトにはここで死んでもらう。
くらえ、黒魔術【封呪結界】!!」
男が呪文を唱えると、大和の周りに紫がかった魔法陣が展開し、そこに同じ紫色をした
人ひとりを覆いつくすほどの球体が大和の周りを取り囲んだ。
「ヤマト様!!」
さらに男が右手で紫の球体を操ると、大和を球体の中に閉じ込めたまま自分の方へと引き寄せたのであった。
怪しげな術で球体に閉じ込められてしまった大和の運命や如何に。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
扱いの悪い勇者パーティを啖呵切って離脱した俺、辺境で美女たちと国を作ったらいつの間にか国もハーレムも大陸最強になっていた。
みにぶた🐽
ファンタジー
いいねありがとうございます!反応あるも励みになります。
勇者パーティから“手柄横取り”でパーティ離脱した俺に残ったのは、地球の本を召喚し、読み終えた物語を魔法として再現できるチートスキル《幻想書庫》だけ。
辺境の獣人少女を助けた俺は、物語魔法で水を引き、結界を張り、知恵と技術で開拓村を発展させていく。やがてエルフや元貴族も加わり、村は多種族共和国へ――そして、旧王国と勇者が再び迫る。
だが俺には『三国志』も『孫子』も『トロイの木馬』もある。折伏し、仲間に変える――物語で世界をひっくり返す成り上がり建国譚、開幕!
S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります
内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品]
冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた!
物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。
職人ギルドから追放された美少女ソフィア。
逃亡中の魔法使いノエル。
騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。
彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。
カクヨムにて完結済み。
( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )
おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう
お餅ミトコンドリア
ファンタジー
パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。
だが、全くの無名。
彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。
若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。
弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。
独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。
が、ある日。
「お久しぶりです、師匠!」
絶世の美少女が家を訪れた。
彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。
「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」
精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。
「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」
これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです!
何卒宜しくお願いいたします!)
収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?
木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。
追放される理由はよく分からなかった。
彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。
結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。
しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。
たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。
ケイトは彼らを失いたくなかった。
勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。
しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。
「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」
これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる