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第2章 「目指せ、ドライゴン帝国!」
124話:「クラスアップ」
しおりを挟む始まりは「クラスアップって何処でやるんだ?」という大和の言葉からだった。
その問いかけに答えてくれたのは神官服に身を包んだリナ・シェーラだ。
「クラスアップに関しては各大陸の主要都市に建設されている【大神殿】で出来ます。
生憎とビルド大陸に赴いたことがありませんのでどの都市に大神殿があるのか分かり兼ねますが」
大和の疑問に全て答えることができなかったことに対する悔しさなのか
綺麗に整った眉を歪ませる。
大和が他の仲間に視線を合わせるとどうやらリナと同じで
何処に大神殿があるのかわからなかったようで皆目が合うと苦笑いを浮かべる。
(こうなったら仕方ない困ったときのあいつ頼みだ)
大和は思い切り息を吸い込むと、大きな声でそいつの名を叫んだ。
「のおおおおおおおおおおおむうううううううううう!!!!」
大和の大きな声に釣られて、精霊空間からひょっこりとノームが顔を出す。
「ヤマト、ボキを呼んだだっぴゃ?」
「ああ、実はかくかくしかじかで―――」
てな具合で大和は大神殿がある場所をノームに尋ねると
ノームは空中で左右に揺れながら機嫌良く質問に答えた。
「えーっと、このビルド大陸にある大神殿は全部で三つあるだっぴゃ
その中で一番近いのはドライゴン帝国って国の王都ガルヴァスっていう都市だっぴゃね」
手足のないノームだがもし彼に手があれば間違いなく顎に手を当てて答えていたであろう仕草をした。
とにもかくにもノームのお陰でランクアップするための場所、大神殿があるドライゴン帝国という国が
次の我々の目的地に決まった。
「そっか、ありがとな助かったよ!」
「いいだっぴゃよ」
それからいつものようにノームを撫でてやると気持ちよさそうに目を細める。
そしてこれもまたいつものように女の子たちがそれを見て羨ましそうな羨望の眼差しを
ノームに向けるのであった。
「コホン、ところで主、目的地は決まりましたが
いつこの町を出立いたしましょうか?」
「うん? そうだなぁ~、町長にも挨拶したいのと旅の準備もあるだろうから
二日後くらいでいいんじゃないか?」
「かしこまりました。 ・・・・・・主、いつまでノーム様を撫でているのですか?」
「ん?」
そう言われて自分の右手がノームを無意識に撫でていたようで
恍惚の表情を浮かべて気持ちよさそうに宙を漂っていた。
その姿に少しいじけたような感情が込められた小さなつぶやきが聞こえた。
「我も少しは主に撫でて欲しいです・・・・・・」
フレイヤは大和に聞こえないよう声を絞ったつもりだったのだが
予想に反してその声は大和の鼓膜を震わせ声として認識してしまった。
一呼吸の沈黙があったのち大和の右手がフレイヤの頭に乗せられた。
「ひゃぅ!?」
自分の声が聞こえていないと思っていたせいで大和の手が頭に乗せられたことに
肩をぴくりと震わせ、素っ頓狂な声を上げる。
「こうして欲しかったんだろ?」
そう言うと大和は顔に意地悪な表情を張り付け、彼女の深紅の髪を撫でまわす。
ドラゴンである彼女の髪は他の女性より少し髪質が固く指に纏わりついてくるが
決して不快になるものではなく寧ろ心地良い。
ドラゴンとはいえ女性である彼女の髪からは女性特有のフローラルな香りが漂い
手入れを怠っていないことが窺い知れた。
大和はその香りを嗅ぐため彼女の頭に顔を近づけくんくんとその匂いを嗅いだ。
「ちょっ、主様っ―――」
急に大和の顔が近づいてきたためいつもより少し高い声で答えるフレイヤ。
褐色の肌でも見ただけでわかるほど頬を赤く染め上げていた。
「フレイヤの髪はいい匂いがするなぁ~」
普段の大和であればこのような気障な行動はしないが
フレイヤにいたずらをするため敢えてこのようなイケメンが取る行動を取っていた。
最後の仕上げとばかりに撫でていた右手を彼女の顎に持っていき、くいっと顎を優しく上げた刹那―――。
「がはっ」
フレイヤがいた場所にはすでに彼女の姿はなく、顎を乗せていた手がむなしく残る。
何が起こったかは大体の予想が付くが、大和から見て左手を見るとフレイヤがいなくなった原因を
作ったであろう人物たちがそこにはいた。
それぞれ違う体勢を取っているが、どの体勢もフレイヤを殴ったことが容易に想像できる。
リナとマチルダは軸足を支えにして片足を付き出すような体勢を取り、マーリンは杖を振りかぶった後のような体勢で
そしてエルノアは逆手を脇の下に引きつけ利き手の拳を突き出したちょうど正拳突きのような体勢だった。
そして、これもいつもの日常になりつつあるが、フレイヤが壁に突き刺さってピクリとも動かないという
見る人が見れば常識ではない非常識な光景が広がっていた。
その後はいつものように復活したフレイヤがリナたちとガチンコファイトに及ぼうとするが
大和の鉄拳制裁を食らいあえなく全員沈黙することになったのであった。
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