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第2章 「目指せ、ドライゴン帝国!」
126話:「主人公の気持ちとしつこい町長」
しおりを挟むここで唐突だが、ふと頭をよぎったことがあるのでここで言っておく。
異世界転生物の物語の主人公は決まって美女や美少女と出会ってそこから
旅をしながらまた新たな女の子を仲間にしていくが、ほとんどの主人公が
ヒロインの女の子と付かず離れずの関係を保っている。
なぜこういった物語の主人公たちは女の子に手を出さないのか?
今朝起こった出来事でその理由が分かった気がする。
簡単に言えば、一人の女の子に手を出してしまうと他の女の子も
相手にしなければならなくなるからだ。
そこはTVや漫画というメディアでそういった描写を描くことができないという
大人の事情を抜きにしても主人公が女の子に手を出さないのにはそんな理由があるのではと俺は思った。
さて、ここで本題だが今朝目が覚めるとそこには例に違わず、リナたちがいつの間にか
俺の寝ている一人で使うには有り余るほどのダブルキングサイズ級のベッドに潜り込んでいたことが始まりだった。
何度言ってもベッドに潜り込んでくる彼女たちに最早怒る気も失せてしまい今では何も言わなくなってしまった俺に
味を占めた彼女たちは俺が眠りについたのを見計らいベッドに潜り込んでくるのだ。
幸いなことに純潔は奪われていないもののいい年をした男と年頃の娘が同じベッドで寝るというのは
倫理的にも良くない。
だから俺は一度ガツンと叱るべく全員を叩き起こすと正座させ説教を始めた。
「いいかお前ら、何度言ったらわかるんだ? ちゃんと部屋割りをしたベッドがあるのに
なんでそこで寝ないんだ! こっちはいい迷惑なんだぞ?」
そう言うと、代表してマチルダがこれに反論した。
その表情は切実な思いが込められているようで瞳を揺らしながらまるで懇願するかの様相だ。
「そうは言いましても、私が夜のご奉仕をしようとヤマト様にお伝えしましたところ
『そんなものは不要だいいから自分の部屋で寝ろ』と一蹴されてしまいました。
いずれあなた様の妻になる身としては夫の夜伽もできないのでは女の恥なのでございます。
ですからせめて、同じベッドでヤマト様と一夜を共にすることだけでも許してもらえないでしょうか!!」
他の女の子に視線を向けると全員が同意見なのか首を激しく上下に振って頷いていた。
結局俺は全員の頭にチョップをお見舞いすると、なし崩し的にベッドに入ってくるなと命令して
この状況を収めたが、奴らはきっとまた同じ過ちを繰り返すことだろう――――――。
と、このように俺の周りの女共は俺とそういう関係になりたいと望んでいる。
そんな状況で一人と関係を持ってしまえば、砂糖に群がる蟻のように「私も私も」という事態になるのは
想像に難くない。
そして、これは俺個人の問題なのだがそう言って迫ってきた女性を拒む自信がない。
ただでさえ元の世界で女にモテてこなかった俺が性格にいろいろと問題があるとはいえ
見た目だけで言えば絶世の美女と言っても過言ではない彼女たちの誘惑に
耐えきれるかと言えばはっきり言おう―――無理だ。
というような出来事があった状態で足取り重く俺たちはこのジェノンの町の町長である
ウミガスキーの家に赴いた。
目的は仲間たちのクラスアップのために【大神殿】があるドライゴン帝国に向かうべく
出立の挨拶をするためだ。
町長のいる応接室のような一室に通されると、両手を広げながら歓喜の舞を踊りそうな勢いで
俺たちを出迎えてくれた。
「おお、これはこれは勇者様! このような場所にわざわざ足を運んでいただくとは・・・・・・
して、私に何か用事ですかな?」
「準備も整いましたので、次の目的地に向けて出立の旨を伝えに来ました」
俺の言葉を聞いた瞬間、その場の空気が一変する。
まるで時が止まったかのような、氷の魔法で動きを止められたかのような錯覚に陥っていると
俺の腰に腕を回しながら、両膝を床に付いて焦燥の表情を浮かべながら懇願する町長の姿があった。
「勇者様、お待ちくだされ!! もうしばし、もうしばしこの町に滞在してくださりませぬかっ!?」
もうすでに次の目的地に向けての旅立ちの準備は終わっていたため、今更この町に留まる理由もないため
町長には申し訳ないがやんわりとした口調で彼の申し出を断る。
「大変申し訳ないのですが、我らには魔王討伐という使命があるのです。
名残惜しくはありますが、急ぎこの町を出立っ―――」
俺が言い終わる前にこの場から逃がさないと言わんばかりに腰に回した手に力を入れると
まるで子供が駄々をこねるようにわがまま染みたことを言い始めた。
「もう少しだけ滞在してくれてもいいじゃないですかぁ!!
勇者様がこの町に訪れたという事でビルド大陸中の貴族に招待状を送ったところだというのに・・・・・・」
それが本音かよっ!! と心の中で突っ込むが決して口には出さない。
ここは俺が大人の対応で町長を説得するしかないと心に決めた。
その後、約3時間に渡って町長との訳の分からない攻防が続いたが
町長の奥さんである【ラブシー】さんが落ち着いた口調ながらも有無を言わせぬ態度に
半ば諦めにも似た表情で何とか説得することに成功するのだった。
その後、最後の晩餐というわけではないが夕方には盛大な俺たちの送別会という宴が開かれ
羽目を外し過ぎたリナたちのお陰もあって実際にジェノンの町を出発したのはそれから2日後になるのだった。
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