オンラインゲームしてたらいつの間にやら勇者になってました(笑)

こばやん2号

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第2章 「目指せ、ドライゴン帝国!」

134話:「王都ガルヴァスの身体検査」

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 ラゼルの洞窟を抜けた俺たちはドライゴン帝国が設置した関所を抜け、3日ほど馬車で走らせた街道を進んでいた。
 関所での出来事だが、ちょっとした一悶着があったが俺が勇者だとわかると掌を返すが如くにすんなりと通してくれた。
 相変わらず舗装が不十分な凸凹の街道をガタゴトと揺られながらの旅は辛いものだが、この十数日の旅でそれも慣れてきていた。
 他の5人は元々この世界の住人であるためなのかこれほどの揺れの馬車でも酔うことなく平然としていた。
 現代社会で育ってきた俺としては交通の便一つ取っても不便だと感じてしまうのは仕方のないことと言えばそうなのだが
実際はこの世界が不便なのではなく元の世界が便利すぎると言えなくもないので如何ともし難い。

 「ヤマト様見えました、あれが王都ガルヴァスです!」

 リナが指さす方向を見れば、巨大な城塞都市がその姿を現した。
 大体東京ドームを3倍くらいの大きさにしたほどの円形型の都市であり遠目から見ても高くそびえ立つ城が目に飛び込んでくる。
 その都市をまるで結界のように取り囲んでいる石壁は優に30メートル以上の高さがあり、空でも飛べなければ飛び越えることは不可能だろう。
 今まで訪れたどの都市よりも巨大で威厳があるその姿は差し詰め侵入不可能な砦を思わせる。
 そんな壮大な光景に目が点になっていると、エルノアが感嘆のため息とともに口を開く。
 
 「凄いですね、なんというか、とにかく、凄いですね・・・・・・」

 言っていることは何とも安直な感想だが、言わんとしていることは何となくわかるので「ああ」と短く返事をしておいた。
 他の者もエルノアの間抜けな感想に同意しているようで、王都ガルヴァスの姿をしばらく眺めていた。
 その後、王都ガルヴァスに入るための門前に到着したのは王都の姿を視認してから実に3時間後の事だった。
 目の前に見えているからといってすぐそこにあるわけではないと理解はしていたが
まさかそれほどの時間がかかるとは思っていなかったので正直言って驚いた。
 俺たちの他にも商人や旅人などが来ているのだろう、この世界では珍しい馬車の行列が門前にできていた。
 早くこの都市の拠点となる宿を確保したかったのだが、思った以上に都市に入るための警備のチェックが厳重で
この門前に来てからさらに1時間が経過していた。

 基本的に俺は待たされるのが大嫌いだ。
 例えば銀行で預金を下ろす時もATMに列ができていれば、並ばずに別の店舗に行くほどだ。
 だが俺とて空気は読むほうなので待たされることに不満を言ったところで結局は待つことになるので
俺は大人しく自分たちの番が来るのを今か今かと待っている。
 それから30分が経過してようやく俺たちの番がやってきた。
 
 「通行証の提示をお願いします」

 その言葉に従い、俺は懐から取り出した通行証を衛兵の女性に見せる。
 ちなみにこの通行証はジェノンの町長であるウミガスキーが書いてくれたもので
「必要になりますから」ということであらかじめもらったものだった。
 これがなかったらこの都市に入れなかったのだろうかという疑問が浮かんだため衛兵に聞いてみると
どうやら入市税を幾分多く支払うことで仮の通行証を発行してもらえるとのことだった。
 そんなやり取りがあった後、衛兵が手荷物検査をするため馬車に積まれた荷物を調べると言い出した。

 「何か危険な物や違法な物はありませんね?」

 「無いはずですよ? 見てもらえればわかると思いますが」

 実際の俺たちの荷物は馬に与える餌である干し草に水を入れるタライ、そしてテント設営のための
布や縄といった旅に必要な最低限度の荷物しかなかった。
 その他の荷物などは全て俺のアイテムボックスの中に収納しているため問題はない。
 衛兵も馬車の中を一通り見て何もないことを確認すると馬車から降りていった。
 そして、改めて俺に向き直ると平坦な口調で伝えてきた。

 「では一人ずつ身体検査をしますので、最初はそこの神官殿から」

 「私からですか、わかりました」

 そう言うとリナが馬車から降りていき木造の詰め所に入っていった。
 数分後リナが戻ってくると次はエルノアといった具合に順番に身体検査が行われていく。
 そして、女性陣で最後のフレイヤが戻ってくると衛兵が次は俺の番だと視線を向けてきた。
 俺はそれに従い馬車を下りて、女性陣が入っていった詰め所に入る。
 そこには何の変哲もない簡素な造りのテーブルと4脚の椅子が置いてあるだけで他は何もなかった。
 怪しいものは何もないことを確認すると俺は衛兵に向き直ると問いかける。

 「どうすればいいんだ? 脱げばいいのか?」

 「えっ! あ、ああそのままじっとしていてくれ・・・・・・」

 そう言うと彼女は俺の腰に手を回すと怪しいものを持っていないか身体をペタペタと触り始めた。
 心なしか鼻息が荒くなっているような気がしたのだが、これも必要なことだと我慢していると
あらかた調べ終えたのか彼女が俺から離れていった。
 俺は終わったと思い込みそのまま出ていこうとすると急に彼女が強い口調で命令してきた。

 「じゃ、じゃあ今度は服を脱げ!!」

 「えっ、もう済んだんじゃ―――」

 「いいから脱ぐんだ!!」

 ここで揉めても仕方がないので俺は大人しく指示に従った。
 上半身の服を脱ぎ半裸の状態になる。
 30代にしては無駄な脂肪もなくかといって過剰な筋肉もついていない中肉中背の肢体が白日の下に晒される。
 その姿にその場にいた衛兵たちがごくりと唾を飲む。
 そう言えば言い忘れていたことが一つあるのだが、この都市の衛兵もまた全員女だった。
 そして、衛兵の女性が俺の身体に触ろうと手を伸ばした瞬間、他の衛兵が彼女を押しのけて宣言する。

 「隊長は他の仕事に行ってください、ここからは副隊長であるこのわたしが」

 「なっ何を言っているんだ貴様は、こっからがいいところなんだぞ!!」

 「たっ隊長も副隊長も落ち着いてください! お二人の手を煩わせるのは忍びないこのような雑事は平の衛兵であるあたしが」

 「「お前は黙ってろ!!」」

 などという誰が俺の身体を調べるかという俺にとってはどうでもいいことだが
彼女たちにとっては重要なことについて言い争いを始めた。
 挙句の果てにその場にいた衛兵全員が俺の身体を調べると言い張って膠着状態が続いた。
 そんなことはどうでもいいから早く調べてくれないか衛兵さん?
 そう思っていると決着はじゃんけんで決めることとなったが、何故だか6人じゃんけんなのにもかかわらずなかなか決着がつかない。
 痺れを切らした俺は本当はやりたくないがあの手で行くことにした。
 必死の形相でじゃんけんをする6人に割って入ると、先ほど隊長と呼ばれていた女性に胸を張って堂々と距離を詰めていく。
 詰め寄られた彼女は突然の俺の行動に後ずさって行くが壁を背にした彼女に逃れる術はなく自身の背中を壁に預ける。
 そのタイミングを見計らって俺はその壁に手を付くと彼女の右の耳元に口を近づけると甘えるような口調で囁いた。

 「隊長さんよぉ、俺たちは早くこの都市に入りたいんだよねぇ。
 そのためにはあんたたちが早くここを通してくれるのが一番だと思わないか?
 そんなことしてないで早くここを通してくれよぉ なぁ、いいだろぉ?」

 俺が取った選択は隊長と呼ばれる彼女に色仕掛けで迫りここを通してもらうという作戦だ。
 この世界の基準で言えばどうやら俺の顔は美形であるという事なのでこういった色仕掛けをすれば
何とかなるのではという、ギャグアニメや漫画の要領でやってみたのだがその効果はてきめんだったようで―――。

 「かっかしこまりました!! ど、どうぞ通っちゃってください!!」

 「はぁ~、素敵」

 そのあまりの破壊力にある者は鼻血を吹き出し、ある者は失神して意識が無くなってしまう。
 それほどまでに俺の誘惑は別の意味で凶悪なのだ。 
 この時はまだそれを俺は理解していなかった、だからこそ軽い気持ちで出来たのかもしれない。

 隊長の言葉を聞くと俺は脱いだ服をそのまま肩に掛けると彼女たちに背を向けたまま右手を後ろ手に上げながら
「ありがとう」というとできるだけ颯爽と馬車に戻った。
 馬車に戻ると今度はリナたちの鼻息が荒くなる展開になったがそこはチョップで大人しくさせた。
 全く都市に入るために衛兵を誘惑するとか、俺何やってるんだろう・・・・・・。
 遠い未来に黒歴史にしかならないことだと後悔しつつも俺たちはなんとか王都ガルヴァスに入ることができたのだった。
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