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第四章 第二の街【ツヴァイトオルト】
20話「ロジェビ草GETと命を懸けた鬼ごっこの始まり」
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ゲイルウルフの群れを退けた俺たちは、その後も勾配のある斜面をひたすら上り続けていた。所々に茂る草や木々を眺めながら、周囲の警戒を怠らずに進んで行く。その道中で、ゴブリンの上位種である【ホブゴブリン】や蛇型のモンスター【ラフタルスネーク】などが襲い掛かってきたのだが……。
「せい、やー、たー」
「……」
今回のパートナーである乳デカごりr……ケフン、もといローザが一撃のもとに粉砕していった。こちらとしては、戦うことなくポイントが稼げるのでありがたい話といえばそうなのだが、なんとなくサボっているような気がしてならない。
「なあ、俺も戦わせてほしいんだが?」
「え? だって、君は後衛職の魔法使いじゃん。魔法使いの役目は、後方からの広範囲殲滅魔法で敵を一掃するのが仕事だよ?」
俺の要望に対し、さも当たり前のような態度でローザはそう返した。このAFOが人生初のゲームである俺にとって、彼女の持っているゲームの常識や知識というのは初めて聞くことばかりのものだった。だからこそ、俺がゲームというものを経験したことがない初心者だと打ち明けようとしたのだが、そんなことに耳を傾けるほど奴が聡明なはずもなく、ただただローザによるモンスター蹂躙ショーを見せられることになってしまっていた。
それから、ローザの戦いを横目に見ながら先へと進んで行くと、開けた場所に出た。そこには薬草と思しき草や花が所狭しと自生しており、本当の意味で“お花畑”という光景が広がっていた。
「うわあ、凄く綺麗なところだね」
「ああ、おそらくだがここに自生している薬草がロジェビ草だろうな。一応調べるが……」
そう言って、俺は薬草の一本を地面から引き抜き詳細を確認してみることにした。
【ロジェビ草】
ヴィント山に自生しているとされる薬草。煎じて飲むことで【ウィクネス病】を治す薬となる。 ランク:5
どうやら、これがロジェビ草で間違いないようだ。案外簡単だったな……。いや、道中出現したモンスターの量と強さを考えれば、難易度としては現在の自力を考慮してかなり高い難易度となっているはずだ。だが、簡単だと感じてしまった理由としては、やはりローザの蹂躙劇が原因だろう。
(あのバトルジャンキーめ、武術家じゃなくてバーサーカーと呼んだ方がしっくりくるんじゃないか)
兎にも角にも、ロジェビ草を確保した俺とローザは一通り花畑の景色を堪能すると、街へと戻るため踵を返した。
「うん? おい、ゴリ……じゃなくて、ローザ一旦止まれ」
「……今あきらかに【ゴリラ女】って言おうとしたでしょ!?」
「……そんなことはどうでもいいことだ。いいから一旦止まるんだ」
「むぅ」
俺の返答に頬を風船のように膨らませながらも、俺の指示に従いローザは歩みを止めた。その見た目だけであれば愛らしいのにと胸中で残念がる俺だったが、そこから状況が一変する。
何か得体のしれない大きな生き物が、山の中を駆けずり回っているかのような音が聞こえてくる。地鳴りのような咆哮に、実際大地も揺れていた。それから様子を窺う事数分の時が経過したその時、草陰から何かが飛び出して来た。
「だから言ったじゃないか! あのとき撤退しておいた方がいいって!!」
「そんなこと言ったってしょうがないじゃない! こんなことになるなんて思ってなかったんだから」
「二人とも、無駄口叩いとらんで足を動かすんじゃ!! 追いつかれてしまうぞい」
突如として現れたのは、三人組のプレイヤーだった。容姿は若い男女二人と、老齢の男性という珍しい組み合わせだ。彼らに何事かと問い詰めたかったが、彼らのあとを追って現れたモンスターを見て全てを理解することになる。
「うお、なんだあの化け物は!?」
「これは、なかなかの大物だね。さて、やりますか」
「お前馬鹿か! 俺たちも逃げるぞ!!」
「ちょ、ちょっと!?」
そこに現れたのは、全長5メートルはあろうかという大蜘蛛だった。あまりに巨大すぎて足に生えている産毛のような毛がまるで工事現場で使うロープのような太さになっていた。そして、奴を見た瞬間俺は思った。“これは勝てん”と……。
その後の俺の行動は迅速かつ的確なもので、まず最初にやるべきことはローザの体を抱えることだ。これまでの彼女の言動からして、サーチ&デストロイなのは明白だ。そんな人間が、あれほど巨大なUMAのような化け物を目の当たりにして戦わないという選択肢は皆無だろう。だからこそ、“逃走”という選択肢を取るためにはローザを確保するのは必然だった。
「な、なんであたしを抱えてるのよ! 降ろして、降ろしなさあああああい!!」
「誰が降ろすか、ゴリラ女め。降ろしたが最後、お前あの化け物に向かって行くだろうが!!」
「そんなの当たり前じゃない! 目の前の敵に向かって行かなくて武術家など語れまい! それと、誰がゴリラ女だああああああ!!」
俺の手から逃れようと必死に抵抗するローザ。だがしかし、ここにきてAPを攻撃力に振り分けていたことが功を奏したのか、がっちりとホールドされていてその手は離れることはない。しかしながら、いくら体の小さなローザとはいえその体重は三、四十㎏は下らない。人ひとりを抱えて移動できるのにも限度があり、加えて抱えている対象が暴れて抵抗しているとなれば、さらに移動は困難を極めるだろう。
「ちょ、ちょっとぉー!? どこ掴んでんのよぉおおおお!!」
「しゃーねーだろ!! お前が暴れるからしっかり掴める場所がここしかねえんだよおおおおお!!」
彼女を落とすまいとしっかりと腕に力を入れる俺に対し、激しく抵抗するローザ。だが、そのホールドも徐々に緩んでいきちょっとでも力を抜けば彼女の体を落としてしまいそうになる。だから俺は苦肉の策として、自分の腕を襷のようにローザの体に回すと、その手を彼女の豊満な胸へと持っていき鷲掴むようにしっかりと固定した。……今は非常時なのだ。文句なら後でいくらでも聞いてやろう。
一応、言い訳として言っておくが、ローザの胸を掴んでいるということは当然彼女の胸の柔らかい感触が伝わっていた。だが、その感触を楽しんでいる暇はなかったとだけはここで言っておきたい。……次があればもっとじっくりと楽しみたいものだ。“次”があればな……。
そんなコメディチックな出来事があった後の状況といえば、すこぶる悪いというのが正直な感想だろう。俺がローザと喜劇を演じている最中、大蜘蛛の糸による攻撃によって逃げてきた三人組の一人である若い男が犠牲となってしまった。そして、この状況をなんとかしようと俺は逃げていた老齢の男性に声を掛けた。
「おい、爺さんあれは一体なんなんだ!?」
「そんなことは今はどうでもよかろう! 今は逃げることに全力を尽くすのじゃ!!」
「てか、いい加減に降ろしてくれえええええ!!」
この老人の言っていることにも一理あるので、俺はそれ以上の追及をやめた。もちろん、ローザの抗議は右から左に受け流した。
「きゃああああ」
「ユキナの嬢ちゃん!!」
体力が持たなかったのか、それとも不注意だったのかはわからないが、一緒に逃げていた若い女が地面の凹凸に蹴躓きその上を暴走機関車と化している大蜘蛛が通過する。……その結果は、言うまでもないだろう。
「なあ、爺さん。このままじゃいずれ、あの化け物に追いつかれるか俺たちの体力が尽きてあの巨体に轢き殺されるかのどっちかだ。だから、あんたに頼みがある」
「なんじゃ、言うてみぃ」
俺の真剣な表情が伝わったのか、今この状況で自分にできることならなんでもするという思いが彼から伝わってきた。俺は内心でそのことに感謝しつつ、彼にお願いする頼みごとを口にした。
「俺が囮になってあいつを引き付けるから、爺さんはその間に俺が抱えてるこいつと一緒に逃げてくれねえか?」
「お前さん、死ぬ気か?」
俺の頼みごとに、老人もローザも驚愕の表情を浮かべていたが、俺が本気だと分かるとその提案に頷いてくれた。
「わかった、だがくれぐれも無理はするなよ」
「なるだけやってみるさ」
「というか、あたしを差し置いてなに二人で決めちゃってるのよ! 放して、戦わせろおおおお!!」
俺がローザをなぜ託すのかという疑問は、どうやら先の彼女の言葉で何となく察してくれたようだ。さすがは年の功と言うべきだろうか?
兎にも角にも、ローザを落とさないように俺は老人に彼女の身柄を預けた。彼女の胸から手を離す時、ちょっとだけ揉んだことは黙っておこう。これくらい許されるよね? てか許されなくても別に構わん!!
「では、気を付けるのだぞ」
「ああ、俺の頼みを聞いてくれてありがとな爺さん」
老人に感謝の言葉を言うと、俺は即座に腰に下げていた杖を取り出し、呪文の詠唱に入った。一方、老人は俺の邪魔にならないように大蜘蛛の進行方向とは反対側に逃げて行ってくれるようだ。
「『火よ、全てを蹂躙せし無数の刃となりて、我が敵を討て』! 【フレイムジャベリン】!!」
呪文の詠唱を終えると、タイミングを見計らってそれを大蜘蛛の眼球に狙いを定め一気に解き放った。突如として現れた無数の火の槍に怯んだ大蜘蛛の足が急に止まる。
「シャアアアアアアア」
「おらおら、どうした。こっちだ。悔しかったら、ここまでおいでー。お尻ぺんぺん」
大蜘蛛を挑発するように、俺は一昔流行っていたらしい挑発行為を取った。実際やっている人間はこの現時代において皆無なのだが、知識として持っていたため一度やってみたかったのだが、感想としては……もう二度とすまい。
俺の挑発が効いたのか、それともさっきの魔法を使ったのが俺だと認識したのかはわからないが、今度は俺に向かって突進してくる大蜘蛛。さて、ここから命がけの鬼ごっこの始まりだと覚悟を決め、俺は身軽になった足で地面を蹴った。
「せい、やー、たー」
「……」
今回のパートナーである乳デカごりr……ケフン、もといローザが一撃のもとに粉砕していった。こちらとしては、戦うことなくポイントが稼げるのでありがたい話といえばそうなのだが、なんとなくサボっているような気がしてならない。
「なあ、俺も戦わせてほしいんだが?」
「え? だって、君は後衛職の魔法使いじゃん。魔法使いの役目は、後方からの広範囲殲滅魔法で敵を一掃するのが仕事だよ?」
俺の要望に対し、さも当たり前のような態度でローザはそう返した。このAFOが人生初のゲームである俺にとって、彼女の持っているゲームの常識や知識というのは初めて聞くことばかりのものだった。だからこそ、俺がゲームというものを経験したことがない初心者だと打ち明けようとしたのだが、そんなことに耳を傾けるほど奴が聡明なはずもなく、ただただローザによるモンスター蹂躙ショーを見せられることになってしまっていた。
それから、ローザの戦いを横目に見ながら先へと進んで行くと、開けた場所に出た。そこには薬草と思しき草や花が所狭しと自生しており、本当の意味で“お花畑”という光景が広がっていた。
「うわあ、凄く綺麗なところだね」
「ああ、おそらくだがここに自生している薬草がロジェビ草だろうな。一応調べるが……」
そう言って、俺は薬草の一本を地面から引き抜き詳細を確認してみることにした。
【ロジェビ草】
ヴィント山に自生しているとされる薬草。煎じて飲むことで【ウィクネス病】を治す薬となる。 ランク:5
どうやら、これがロジェビ草で間違いないようだ。案外簡単だったな……。いや、道中出現したモンスターの量と強さを考えれば、難易度としては現在の自力を考慮してかなり高い難易度となっているはずだ。だが、簡単だと感じてしまった理由としては、やはりローザの蹂躙劇が原因だろう。
(あのバトルジャンキーめ、武術家じゃなくてバーサーカーと呼んだ方がしっくりくるんじゃないか)
兎にも角にも、ロジェビ草を確保した俺とローザは一通り花畑の景色を堪能すると、街へと戻るため踵を返した。
「うん? おい、ゴリ……じゃなくて、ローザ一旦止まれ」
「……今あきらかに【ゴリラ女】って言おうとしたでしょ!?」
「……そんなことはどうでもいいことだ。いいから一旦止まるんだ」
「むぅ」
俺の返答に頬を風船のように膨らませながらも、俺の指示に従いローザは歩みを止めた。その見た目だけであれば愛らしいのにと胸中で残念がる俺だったが、そこから状況が一変する。
何か得体のしれない大きな生き物が、山の中を駆けずり回っているかのような音が聞こえてくる。地鳴りのような咆哮に、実際大地も揺れていた。それから様子を窺う事数分の時が経過したその時、草陰から何かが飛び出して来た。
「だから言ったじゃないか! あのとき撤退しておいた方がいいって!!」
「そんなこと言ったってしょうがないじゃない! こんなことになるなんて思ってなかったんだから」
「二人とも、無駄口叩いとらんで足を動かすんじゃ!! 追いつかれてしまうぞい」
突如として現れたのは、三人組のプレイヤーだった。容姿は若い男女二人と、老齢の男性という珍しい組み合わせだ。彼らに何事かと問い詰めたかったが、彼らのあとを追って現れたモンスターを見て全てを理解することになる。
「うお、なんだあの化け物は!?」
「これは、なかなかの大物だね。さて、やりますか」
「お前馬鹿か! 俺たちも逃げるぞ!!」
「ちょ、ちょっと!?」
そこに現れたのは、全長5メートルはあろうかという大蜘蛛だった。あまりに巨大すぎて足に生えている産毛のような毛がまるで工事現場で使うロープのような太さになっていた。そして、奴を見た瞬間俺は思った。“これは勝てん”と……。
その後の俺の行動は迅速かつ的確なもので、まず最初にやるべきことはローザの体を抱えることだ。これまでの彼女の言動からして、サーチ&デストロイなのは明白だ。そんな人間が、あれほど巨大なUMAのような化け物を目の当たりにして戦わないという選択肢は皆無だろう。だからこそ、“逃走”という選択肢を取るためにはローザを確保するのは必然だった。
「な、なんであたしを抱えてるのよ! 降ろして、降ろしなさあああああい!!」
「誰が降ろすか、ゴリラ女め。降ろしたが最後、お前あの化け物に向かって行くだろうが!!」
「そんなの当たり前じゃない! 目の前の敵に向かって行かなくて武術家など語れまい! それと、誰がゴリラ女だああああああ!!」
俺の手から逃れようと必死に抵抗するローザ。だがしかし、ここにきてAPを攻撃力に振り分けていたことが功を奏したのか、がっちりとホールドされていてその手は離れることはない。しかしながら、いくら体の小さなローザとはいえその体重は三、四十㎏は下らない。人ひとりを抱えて移動できるのにも限度があり、加えて抱えている対象が暴れて抵抗しているとなれば、さらに移動は困難を極めるだろう。
「ちょ、ちょっとぉー!? どこ掴んでんのよぉおおおお!!」
「しゃーねーだろ!! お前が暴れるからしっかり掴める場所がここしかねえんだよおおおおお!!」
彼女を落とすまいとしっかりと腕に力を入れる俺に対し、激しく抵抗するローザ。だが、そのホールドも徐々に緩んでいきちょっとでも力を抜けば彼女の体を落としてしまいそうになる。だから俺は苦肉の策として、自分の腕を襷のようにローザの体に回すと、その手を彼女の豊満な胸へと持っていき鷲掴むようにしっかりと固定した。……今は非常時なのだ。文句なら後でいくらでも聞いてやろう。
一応、言い訳として言っておくが、ローザの胸を掴んでいるということは当然彼女の胸の柔らかい感触が伝わっていた。だが、その感触を楽しんでいる暇はなかったとだけはここで言っておきたい。……次があればもっとじっくりと楽しみたいものだ。“次”があればな……。
そんなコメディチックな出来事があった後の状況といえば、すこぶる悪いというのが正直な感想だろう。俺がローザと喜劇を演じている最中、大蜘蛛の糸による攻撃によって逃げてきた三人組の一人である若い男が犠牲となってしまった。そして、この状況をなんとかしようと俺は逃げていた老齢の男性に声を掛けた。
「おい、爺さんあれは一体なんなんだ!?」
「そんなことは今はどうでもよかろう! 今は逃げることに全力を尽くすのじゃ!!」
「てか、いい加減に降ろしてくれえええええ!!」
この老人の言っていることにも一理あるので、俺はそれ以上の追及をやめた。もちろん、ローザの抗議は右から左に受け流した。
「きゃああああ」
「ユキナの嬢ちゃん!!」
体力が持たなかったのか、それとも不注意だったのかはわからないが、一緒に逃げていた若い女が地面の凹凸に蹴躓きその上を暴走機関車と化している大蜘蛛が通過する。……その結果は、言うまでもないだろう。
「なあ、爺さん。このままじゃいずれ、あの化け物に追いつかれるか俺たちの体力が尽きてあの巨体に轢き殺されるかのどっちかだ。だから、あんたに頼みがある」
「なんじゃ、言うてみぃ」
俺の真剣な表情が伝わったのか、今この状況で自分にできることならなんでもするという思いが彼から伝わってきた。俺は内心でそのことに感謝しつつ、彼にお願いする頼みごとを口にした。
「俺が囮になってあいつを引き付けるから、爺さんはその間に俺が抱えてるこいつと一緒に逃げてくれねえか?」
「お前さん、死ぬ気か?」
俺の頼みごとに、老人もローザも驚愕の表情を浮かべていたが、俺が本気だと分かるとその提案に頷いてくれた。
「わかった、だがくれぐれも無理はするなよ」
「なるだけやってみるさ」
「というか、あたしを差し置いてなに二人で決めちゃってるのよ! 放して、戦わせろおおおお!!」
俺がローザをなぜ託すのかという疑問は、どうやら先の彼女の言葉で何となく察してくれたようだ。さすがは年の功と言うべきだろうか?
兎にも角にも、ローザを落とさないように俺は老人に彼女の身柄を預けた。彼女の胸から手を離す時、ちょっとだけ揉んだことは黙っておこう。これくらい許されるよね? てか許されなくても別に構わん!!
「では、気を付けるのだぞ」
「ああ、俺の頼みを聞いてくれてありがとな爺さん」
老人に感謝の言葉を言うと、俺は即座に腰に下げていた杖を取り出し、呪文の詠唱に入った。一方、老人は俺の邪魔にならないように大蜘蛛の進行方向とは反対側に逃げて行ってくれるようだ。
「『火よ、全てを蹂躙せし無数の刃となりて、我が敵を討て』! 【フレイムジャベリン】!!」
呪文の詠唱を終えると、タイミングを見計らってそれを大蜘蛛の眼球に狙いを定め一気に解き放った。突如として現れた無数の火の槍に怯んだ大蜘蛛の足が急に止まる。
「シャアアアアアアア」
「おらおら、どうした。こっちだ。悔しかったら、ここまでおいでー。お尻ぺんぺん」
大蜘蛛を挑発するように、俺は一昔流行っていたらしい挑発行為を取った。実際やっている人間はこの現時代において皆無なのだが、知識として持っていたため一度やってみたかったのだが、感想としては……もう二度とすまい。
俺の挑発が効いたのか、それともさっきの魔法を使ったのが俺だと認識したのかはわからないが、今度は俺に向かって突進してくる大蜘蛛。さて、ここから命がけの鬼ごっこの始まりだと覚悟を決め、俺は身軽になった足で地面を蹴った。
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