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第19話:あの子が気になる~ユーグラテス視点~
僕の名前はユーグラテス・ディア・グラデス。グラデス王国の第二王子として生れた。5つ上の兄上との関係も良好。兄上が既に王太子に内定している為、比較的自由な身分だ。
父上や母上も僕を大切にしてくれている。
「ユーグラテス、お前の為に領地を取ってあるから、あえて跡取りを探している令嬢と結婚する必要は無いから安心しなさい」
それが国王でもある、父上の口癖だった。
ただ母上は
「陛下が準備してくれている領地は、以前伯爵家が管理していたものよ。そんなものではなくて、あなたはもっと爵位の高い家の令嬢を捕まえなさい。そうね、例えばミューティング公爵家なんてどうかしら?あそこはグラデス王国で3本の指に入る名門貴族よ。確かあなたと同い年の令嬢が居たわ」
そう言ってにっこり笑う母上。確かミューティング公爵家の令嬢と言えば、我が儘で傲慢だと有名だ。さらに見た目も豚みたいだと誰かが言っていた。そんな女と結婚させようなんて。
いくらグラデス王国で力を持っている貴族だからって、そんな女と結婚するくらいなら、僕は伯爵程度の領地をひっそりと経営した方がいい。
でも、僕は良い子で通っている。そう、僕は自分の意見を言うのが苦手だ。つい人の顔色を伺ってしまうのだ。今だって母上の機嫌を損なわない様、”ミューティング公爵令嬢と結婚なんて嫌だ”と言う事すら出来ない。
僕は自分と言うものを持っていないのだ。いつも人の意見に流されてしまう。それでも第二王子という身分と、母上譲りの美しい顔立ちで、令嬢たちからは物凄くモテる。
僕が軽くほほ笑むだけで、みんな頬を赤らめて嬉しそうにすり寄って来る。正直僕にしてみれば、すり寄られて気持ち悪い事この上ない。そもそも、こっちは社交辞令で微笑んでいるんだ。それなのにすり寄って来るなんて、本当に令嬢という生き物は図々しい。
そう思いつつも、令嬢たちをあしらう事すら出来ないのだ。本当に、僕は自分では何も意見出来ない。
そんな中、僕がほんの少しだけ安らげる場所がある。それは騎士団だ。7歳の時、騎士団に入れられた。正直剣を振るったり体を鍛えたりするのはあまり好きではないが、ここは男ばかり。
あまり気を使う事がない。ただやはりここでも、僕は意見を言う事が苦手だ。それでも、なんだかんだで友達も出来た。と言っても、幼馴染のレオのおかげではあるが。
ミューティング公爵家と肩を並べる名門貴族のレオ。小さい時から、僕の遊び相手としてよく王宮にも顔を出していた。そんなレオは全然貴族らしくなく、誰にでも気軽に話す。
人懐っこいレオと一緒に居たら、自然と僕にも友達が出来たという訳だ。ただレオ以外の奴には、未だに敬語で話しかけられるが、それはまあ仕方ないと思って諦めている。
そんなある日、レオが物凄く怖い顔をしていた。そう言えば明日は騎士団の試合がある日だ。レオは強いから選手に選ばれている。
僕が声を掛けると、いつものレオに戻った。なぜか僕に、明日の試合を見に来るかどうか聞いて来た。正直行くつもりは無かったから、”行かない”と答えた。
その瞬間、一瞬だけ物凄く嬉しそうな顔をしたレオ。その時はあまり気にならなかったのだが…
翌日、1人で本を読んで過ごしていたのだが、昨日僕が試合を見に行かないと言った時の嬉しそうなレオの顔が忘れられない。どうしてレオは、あんなに嬉しそうな顔をしたのだろう。もしかして僕が試合を見に行ったら、都合が悪い事でもあるのかな?
なんだか物凄く気になって来て、試合会場へと向かった。来るのが遅かったみたいで、既にレオの試合が終わった後だった。
もうレオは帰っちゃったのかな?そう思って帰ろうとした時、レオが女の子と一緒に居るのが目に入った。
ストロベリーブロンドの美しい女の子だ。あんな可愛い子と一緒に居るなんて、レオの奴中々やるな。そう思って、レオに声を掛けたのだが…
なぜか僕の顔を見るなり、レオの後ろに必死に隠れる女の子。明らかに怯えている。目には涙まで溜めて…
それでも何とかレオの背中から離れ、レオの隣まで来た女の子。近くで見ると、さらに美しい。こんな美しい女の子は初めて見た。
そんな彼女を、僕に文句を言いつつもレオが紹介してくれた。
「ユーグラテス、何でお前が居るんだよ!今日は来ないって言っていただろう?まあいい、こっちは俺の幼馴染のミシェルだ」
えっ?今、ミシェルって言ったよね。
嘘だろ…
この子が傲慢で我が儘で豚の様な見た目と言われていた、ミシェル・ミューティングなのか?あり得ない。どう見ても美少女だ。それにどちらかと言うと、庇護欲をそそる女性だ。
それに僕が笑顔を向けても、明らかに怯えている。何だこの反応は。今までどんな令嬢だって、僕がほほ笑めば頬を赤らめたのに…
さすがに第二王子の僕に挨拶をしないのはまずいと思ったのか、レオからゆっくり離れると
「初めまして、ミシェル・ミューティングです。どうぞお見知りおきを」
それはそれは美しいカーテシーを決めるミシェル嬢。でも次の瞬間、またレオにしがみつく。
そのしぐさが物凄く可愛い。何なんだ、この子は。
その後なぜかレオから、ミシェル嬢に何かしたのかと問い詰められたが、そんな事するはずがない。なぜなら、僕とミシェル嬢は今日初めて会ったのだから。
その日はミシェル嬢が体調が悪いからと、そのまま2人とは別れた。王宮に戻ってからも、思い出すのは怯えるミシェル嬢の姿だ。
僕に怯えるあの姿、可愛かったな。笑ったらもっと可愛いのかな。それにしても、ずっとレオにくっ付いていたな。
そう思ったら、無性にレオが憎らしくなってきた。ミシェル嬢が欲しい…もっとミシェル嬢の色々な姿を見てみたい…
僕の中で眠っていた何かが、目覚めようとしている瞬間でもあった。
父上や母上も僕を大切にしてくれている。
「ユーグラテス、お前の為に領地を取ってあるから、あえて跡取りを探している令嬢と結婚する必要は無いから安心しなさい」
それが国王でもある、父上の口癖だった。
ただ母上は
「陛下が準備してくれている領地は、以前伯爵家が管理していたものよ。そんなものではなくて、あなたはもっと爵位の高い家の令嬢を捕まえなさい。そうね、例えばミューティング公爵家なんてどうかしら?あそこはグラデス王国で3本の指に入る名門貴族よ。確かあなたと同い年の令嬢が居たわ」
そう言ってにっこり笑う母上。確かミューティング公爵家の令嬢と言えば、我が儘で傲慢だと有名だ。さらに見た目も豚みたいだと誰かが言っていた。そんな女と結婚させようなんて。
いくらグラデス王国で力を持っている貴族だからって、そんな女と結婚するくらいなら、僕は伯爵程度の領地をひっそりと経営した方がいい。
でも、僕は良い子で通っている。そう、僕は自分の意見を言うのが苦手だ。つい人の顔色を伺ってしまうのだ。今だって母上の機嫌を損なわない様、”ミューティング公爵令嬢と結婚なんて嫌だ”と言う事すら出来ない。
僕は自分と言うものを持っていないのだ。いつも人の意見に流されてしまう。それでも第二王子という身分と、母上譲りの美しい顔立ちで、令嬢たちからは物凄くモテる。
僕が軽くほほ笑むだけで、みんな頬を赤らめて嬉しそうにすり寄って来る。正直僕にしてみれば、すり寄られて気持ち悪い事この上ない。そもそも、こっちは社交辞令で微笑んでいるんだ。それなのにすり寄って来るなんて、本当に令嬢という生き物は図々しい。
そう思いつつも、令嬢たちをあしらう事すら出来ないのだ。本当に、僕は自分では何も意見出来ない。
そんな中、僕がほんの少しだけ安らげる場所がある。それは騎士団だ。7歳の時、騎士団に入れられた。正直剣を振るったり体を鍛えたりするのはあまり好きではないが、ここは男ばかり。
あまり気を使う事がない。ただやはりここでも、僕は意見を言う事が苦手だ。それでも、なんだかんだで友達も出来た。と言っても、幼馴染のレオのおかげではあるが。
ミューティング公爵家と肩を並べる名門貴族のレオ。小さい時から、僕の遊び相手としてよく王宮にも顔を出していた。そんなレオは全然貴族らしくなく、誰にでも気軽に話す。
人懐っこいレオと一緒に居たら、自然と僕にも友達が出来たという訳だ。ただレオ以外の奴には、未だに敬語で話しかけられるが、それはまあ仕方ないと思って諦めている。
そんなある日、レオが物凄く怖い顔をしていた。そう言えば明日は騎士団の試合がある日だ。レオは強いから選手に選ばれている。
僕が声を掛けると、いつものレオに戻った。なぜか僕に、明日の試合を見に来るかどうか聞いて来た。正直行くつもりは無かったから、”行かない”と答えた。
その瞬間、一瞬だけ物凄く嬉しそうな顔をしたレオ。その時はあまり気にならなかったのだが…
翌日、1人で本を読んで過ごしていたのだが、昨日僕が試合を見に行かないと言った時の嬉しそうなレオの顔が忘れられない。どうしてレオは、あんなに嬉しそうな顔をしたのだろう。もしかして僕が試合を見に行ったら、都合が悪い事でもあるのかな?
なんだか物凄く気になって来て、試合会場へと向かった。来るのが遅かったみたいで、既にレオの試合が終わった後だった。
もうレオは帰っちゃったのかな?そう思って帰ろうとした時、レオが女の子と一緒に居るのが目に入った。
ストロベリーブロンドの美しい女の子だ。あんな可愛い子と一緒に居るなんて、レオの奴中々やるな。そう思って、レオに声を掛けたのだが…
なぜか僕の顔を見るなり、レオの後ろに必死に隠れる女の子。明らかに怯えている。目には涙まで溜めて…
それでも何とかレオの背中から離れ、レオの隣まで来た女の子。近くで見ると、さらに美しい。こんな美しい女の子は初めて見た。
そんな彼女を、僕に文句を言いつつもレオが紹介してくれた。
「ユーグラテス、何でお前が居るんだよ!今日は来ないって言っていただろう?まあいい、こっちは俺の幼馴染のミシェルだ」
えっ?今、ミシェルって言ったよね。
嘘だろ…
この子が傲慢で我が儘で豚の様な見た目と言われていた、ミシェル・ミューティングなのか?あり得ない。どう見ても美少女だ。それにどちらかと言うと、庇護欲をそそる女性だ。
それに僕が笑顔を向けても、明らかに怯えている。何だこの反応は。今までどんな令嬢だって、僕がほほ笑めば頬を赤らめたのに…
さすがに第二王子の僕に挨拶をしないのはまずいと思ったのか、レオからゆっくり離れると
「初めまして、ミシェル・ミューティングです。どうぞお見知りおきを」
それはそれは美しいカーテシーを決めるミシェル嬢。でも次の瞬間、またレオにしがみつく。
そのしぐさが物凄く可愛い。何なんだ、この子は。
その後なぜかレオから、ミシェル嬢に何かしたのかと問い詰められたが、そんな事するはずがない。なぜなら、僕とミシェル嬢は今日初めて会ったのだから。
その日はミシェル嬢が体調が悪いからと、そのまま2人とは別れた。王宮に戻ってからも、思い出すのは怯えるミシェル嬢の姿だ。
僕に怯えるあの姿、可愛かったな。笑ったらもっと可愛いのかな。それにしても、ずっとレオにくっ付いていたな。
そう思ったら、無性にレオが憎らしくなってきた。ミシェル嬢が欲しい…もっとミシェル嬢の色々な姿を見てみたい…
僕の中で眠っていた何かが、目覚めようとしている瞬間でもあった。
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