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第1章

第25話:フェアレ様とグレイ様の関係が気になります

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2人に続いて、私も家の中に入って行く。すると

「ちょっと、そこのあなた。使用人でしょう?早くお茶を入れなさい」

私を見つけ、すぐさまお茶を催促するフェアレ様。一応お客様だものね。お茶くらい入れないと。そう思い、台所に行こうとしたのだが

「フェアレ殿、彼女はメイドではない!あいにくこの家には使用人はいない。悪いがこのまま帰ってくれ。スカーレット、君もお茶を入れる必要はない」

「まあ、メイドがいないですって?それじゃあ、あの女は誰なの?調べた結果、あなたはまだ結婚していないと聞いたわよ」

「彼女は、その…」

気まずそうに言葉を濁すグレイ様。

「私はスカーレットと申します。訳あって、グレイ様の家に居候させていただいているのです」

グレイ様の代わりに答えた。

「あぁ、居候ね。それならメイドと似たようなものでしょう?主の婚約者が来たのよ、さっさとお茶を入れなさい。それにしても、貧相な家ね。やっぱり庶民の暮らしは嫌ね。まあいいわ、グレイ、あなたが私と結婚すると言うまで、この家にいるから」

「ふざけないでくれ。そもそも君の様な男爵令嬢が、平民の暮らしができるのか?メイドもこの家にはいない。ここに居るなら、君も居候と一緒だ。掃除洗濯、食事の準備、全て自分で行ってもらう!それが出来ないなら、さっさと出て行ってくれ!」

「あら、あなたは騎士団長なのでしょう?お金はたくさんあるのだから、今すぐメイドを雇ってくれたら済むわ」

「断る!俺は今まで、こうやって生きて来たんだ。ここに居たいのなら、自分の事は自分でしてもらう。イヤなら、どうぞお帰り願いたい!それから俺たちは今から出かけるから、赤の他人をこの家には置いておけない。さあ、とにかく出て行ってくれ」

「ちょっと、グレイ…待ちなさいよ…」

有無も言わさず、フェアレ様を追い出すグレイ様。まだ何か叫んでいたが、そのまま家から追い出した。ドアを閉め、内側から鍵を掛けたグレイ様。

「スカーレット、本当にすまない。少し遅くなってしまったが、街に買い物に行こう」

「あの…本当にフェアレ様の事、追い出しても宜しいのですか?」

「ああ、構わない。すまないが、もう彼女の話はよそう。ほら、早く行こう」

グレイ様に手を引かれ、再び玄関のドアを開けると、もう彼女の姿はなかった。そう言えば、フェアレ様は男爵令嬢と言っていたわね。どうして男爵令嬢の彼女と、婚約を結ぶと言う話がでたのかしら?

そういえば、お金の問題で貧乏な貴族がお金持ちの家の平民と結婚すると言う話もあるし、グレイ様もそう言う感じだったのかもしれないわね。そう自分を納得させた。

本当は詳しくグレイ様に聞きたい。でも、フェアレ様の事はこれ以上話したくはないといった雰囲気を醸し出しているグレイ様に、聞く勇気はない。

そもそも私はグレイ様の事を何も知らない。どういった家庭で育ったのか、ご両親や兄弟はどうしているのか、故郷はどこなのか、本当に何も知らないのだ。どうしてグレイ様は、自分の事を話してくれないのだろう。

私はもっともっとグレイ様の事が知りたいのに。もし私が聞いたら、教えてくれるかしら?でも…もし話をはぐらかされたら…やっぱり駄目ね、結局私は昔のまま。肝心な事を聞けないのだから。

ふとグレイ様の方を見ると、何やら難しい顔をしていた。きっと、フェアレ様の事を考えているのだろう。もしかしたら、グレイ様はフェアレ様の事がお好きなのかしら?でも、何らかの理由があって、気持ちを伝えられない?

もしかしたら、居候の私に遠慮しているのかしら?自分でもびっくりするぐらい、ネガティブな事を考えてしまう。

結局その日のお出かけはあまり楽しめなかった。そんな私に気が付いたグレイ様。

「スカーレット、せっかくのお出かけだったのに、フェアレ殿のせいで水を差すような形になってしまってすまなかった」

帰り道、急に私に謝るグレイ様。

「そんな、謝らないでください。今日のお出かけもとても楽しかったですわ。こんなにも可愛い靴を買ってくださり、ありがとうございます。大切に使いますね」

今日は靴を買ってもらったので、そのお礼を伝えた。

「それならよかった。そう言えば腹が減ったな。この前行ったレストランを予約してあるんだ。早速その店に向かおう」

「まあ、私のお誕生日のお祝いに連れて行って下さったレストランですか?あそこはとても夜景が奇麗なのですよね。お料理も美味しいし。とても楽しみですわ」

フェアレ様とグレイ様の事は物凄く気になるが、これ以上どうする事も出来ない。グレイ様と一緒に出掛けているのだから、今という時間を楽しもう。いつまでグレイ様と一緒に居られるかわからないのだから…

その後2人で仲良く夜景を見ながら、美味しいお料理を食べた。楽しそうに食事を頬張るグレイ様。でも、時折ものすごく切なそうな目をして夜景を見つめる姿を何度も目撃した。

今までそんな姿を見た事など、一度もなかった。もしかしたらグレイ様は、やっぱりフェアレ様の事がお好きなのかもしれない。

でも…グレイ様をフェアレ様に取られたくはない。いっそのこと、自分の気持ちを伝えてしまおうかしら…

焦り…不安…動揺…そんな感情に押しつぶされそうになる中、必死に今を楽しもうとするスカーレットであった。
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