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第2章
第19話:俺は一体何をしているんだ~グレイ視点~
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アジトの捜査を命じてから早2週間。やはりあの場所にアジトを構えていた様で、森の中にかなり大きな建屋が立っている様だ。さらに、俺たち騎士団に見つかった時に逃げられる様、地下にもいくつかの通路があり、さらに奥にもいくつかのアジトがあるとの事。
第一部隊と第二部隊からの報告では、アジトは全部で6つ。それぞれボスと呼ばれる人物が住んでいるらしい。さらにアジトとアジトの距離は、それぞれ5キロ程度離れているらしく、木々が生い茂っている為、普通に探しても見つからない場所だったらしい。
それにしても、この短期間でよくそこまで調べたものだ。ただ、6つもあるアジトを一気に攻め込むことは不可能だ。そのため1つづつ、時間をかけて攻め込む予定だ。
幸いそれぞれのボスたちはあまりアジトを行き来していないとの事だったので、1つづつ攻めたとしても、きっとすぐには気付かれないだろう。
さらに、フェリーチェ伯爵からも全面バックアップしてもらえると言う約束も取り付け、早速伯爵家の護衛騎士たちもこの街に集まっている。とにかく、1つづつ確実に落としていかないといけない。
ただアジトを攻めこむためには、まだ情報が足りない。今潜入している部隊からの報告を待って、入念に計画を練る必要がある。でも調査を進めている間も、街では毎日の様に事件が起きている。
その対応に追われながら作戦も進めていく必要があるため、物凄く忙しいのだ。既に10日近く、家に帰れていない。少しでもスカーレットの顔が見たい。そんな思いから、家の近くまで向かうのだが、そういう時に限って事件が起こる。
クソ、俺に恨みでもあるのか?そう思うほど、タイミングよく事件が起きるのだ。そんな中、副騎士団長でもあるスティーブンは、毎日の様に妻に会いに行っているらしい。クソ、あいつは昔から要領がよかったからな!
そしてこの日は朝から北の森に向かい、実際アジトを見て回る。もちろん、騎士団の格好で行くと怪しまれるため、木こりの格好をして向かった。
「お前、その格好よく似合っているぞ。騎士団を辞めたら、木こりになるといい」
そう言ってからかってくるのは、スティーブンだ。こいつ、昨日も嫁に会って来たと言っていたな。俺は10日もスカーレットに会っていないと言うのに!クソ、今日は何が何でも家に帰ってスカーレットの様子を見に行こう。
そう心に決め、調査を進めた。ただ6つものアジトを見て回ろうと思うと、物凄く時間がかかる。それも馬は使えないので、歩いて移動するのだ。結局今日は、3つのアジトしか見る事が出来なかった。
残りは3日後に見に行くことになった。ふと時計を見ると、夜の7時を過ぎていた。今頃スカーレットは晩御飯を食べている頃だろう。運が良ければ、スカーレットの美味しいご飯にありつけるかもしれない。
「悪いがスティーブン、ちょっとだけ騎士団を抜ける。すぐに戻るから」
そう言い残して、急いで家に帰る。家の前まで来ると、なぜか家のドアが開いている事に気が付く。なぜ家のドアが開いているんだ?まさか、スカーレットに何かあったのか?
そんな思いから、急いで中に入った。
「スカーレット!どこにいるんだ、スカーレット!」
何度叫んでも、家中を探し回っても返事はない。一体どこに行ったんだ。まさか、誘拐されたのか?そんな不安が俺を襲う。とにかくスカーレットを探さないと!そう思い家の外に出ると、パン屋の息子と出くわした。
「君、スカーレットを知らないか?」
俺の問いかけに、なぜかものすごい表情で睨むパン屋の息子。
「スカーレットなら、今治療が終わってベッドで寝ている」
治療とは一体どういう意味だ?ベッドで寝ているだと?
「すまない、言っている意味が分からない。詳しく教えてくれるか?」
「スカーレットは、レスティンと言う細菌に感染していたんだ。免疫力が低下すると、掛かりやすくなる病気だ。最初は食欲がなくなり、体に湿疹が出来る。それが悪化すると、発熱や頭痛などが起こり、体が動かなくなるんだ。スカーレットは随分進行していた。あんた、夫だろう?どうしてあんなにも悪化するまで放っておいたんだ!もう少し遅ければ、スカーレットは助からなかったんだぞ!」
涙を流しながらそう訴えるパン屋の息子。スカーレットが病気だっただと?頭を鈍器で殴られた様な衝撃を受けた。もうすぐで俺は、スカーレットを失うところだったと言うのか。
「それで、今スカーレットはどこにいるんだ?なぜすぐに俺に知らせなかった?」
「今病院にいる。でも、今日はもう面会は出来ないよ。それにまだ意識は戻っていないし…それから、スカーレットがあんたには知らせないでくれと言ったんだ。あんた、夫なのにスカーレットに全然頼りにされていないんだな。騎士団長か何か知らないけれど、自分の妻も守れないなら、結婚なんかすんなよ!」
そう言って去っていったパン屋の息子。スカーレットが俺には知らせないでくれと言ったか…俺は一体、何のために働いているのだろう…一番守りたい人を守れないなんて…
とにかく今すぐスカーレットに会いたくて、病院へと向かった。
「夜分すみません、こちらに入院しているスカーレットの夫です。どうか妻に会わせて下さい!」
受付で必死に訴えるが
「申し訳ございません。今日の面会時間は既に終了しております。どうか、明日またいらしてください」
そう断られてしまった。それでも諦めきれず
「せめて一目だけでもいいので、会わせていただけませんか?お願いします」
何度も何度も頼んでみたものの、結局病室には入れてもらえなかった。その時だった、俺の通信機に通信が入る。
“グレイ、いつまで家でのんびりしているんだ。早く騎士団に戻って来い”
スティーブンからだ。正直今騎士団に戻っても、仕事が手に付かないだろう。それでも、このまま何も出来ず家にいるよりはマシだ。そう思い、重い足取りで騎士団に戻ったのであった。
※グレイ視点とスカーレット視点、行ったり来たりですみません。
次回スカーレット視点に戻りますm(__)m
第一部隊と第二部隊からの報告では、アジトは全部で6つ。それぞれボスと呼ばれる人物が住んでいるらしい。さらにアジトとアジトの距離は、それぞれ5キロ程度離れているらしく、木々が生い茂っている為、普通に探しても見つからない場所だったらしい。
それにしても、この短期間でよくそこまで調べたものだ。ただ、6つもあるアジトを一気に攻め込むことは不可能だ。そのため1つづつ、時間をかけて攻め込む予定だ。
幸いそれぞれのボスたちはあまりアジトを行き来していないとの事だったので、1つづつ攻めたとしても、きっとすぐには気付かれないだろう。
さらに、フェリーチェ伯爵からも全面バックアップしてもらえると言う約束も取り付け、早速伯爵家の護衛騎士たちもこの街に集まっている。とにかく、1つづつ確実に落としていかないといけない。
ただアジトを攻めこむためには、まだ情報が足りない。今潜入している部隊からの報告を待って、入念に計画を練る必要がある。でも調査を進めている間も、街では毎日の様に事件が起きている。
その対応に追われながら作戦も進めていく必要があるため、物凄く忙しいのだ。既に10日近く、家に帰れていない。少しでもスカーレットの顔が見たい。そんな思いから、家の近くまで向かうのだが、そういう時に限って事件が起こる。
クソ、俺に恨みでもあるのか?そう思うほど、タイミングよく事件が起きるのだ。そんな中、副騎士団長でもあるスティーブンは、毎日の様に妻に会いに行っているらしい。クソ、あいつは昔から要領がよかったからな!
そしてこの日は朝から北の森に向かい、実際アジトを見て回る。もちろん、騎士団の格好で行くと怪しまれるため、木こりの格好をして向かった。
「お前、その格好よく似合っているぞ。騎士団を辞めたら、木こりになるといい」
そう言ってからかってくるのは、スティーブンだ。こいつ、昨日も嫁に会って来たと言っていたな。俺は10日もスカーレットに会っていないと言うのに!クソ、今日は何が何でも家に帰ってスカーレットの様子を見に行こう。
そう心に決め、調査を進めた。ただ6つものアジトを見て回ろうと思うと、物凄く時間がかかる。それも馬は使えないので、歩いて移動するのだ。結局今日は、3つのアジトしか見る事が出来なかった。
残りは3日後に見に行くことになった。ふと時計を見ると、夜の7時を過ぎていた。今頃スカーレットは晩御飯を食べている頃だろう。運が良ければ、スカーレットの美味しいご飯にありつけるかもしれない。
「悪いがスティーブン、ちょっとだけ騎士団を抜ける。すぐに戻るから」
そう言い残して、急いで家に帰る。家の前まで来ると、なぜか家のドアが開いている事に気が付く。なぜ家のドアが開いているんだ?まさか、スカーレットに何かあったのか?
そんな思いから、急いで中に入った。
「スカーレット!どこにいるんだ、スカーレット!」
何度叫んでも、家中を探し回っても返事はない。一体どこに行ったんだ。まさか、誘拐されたのか?そんな不安が俺を襲う。とにかくスカーレットを探さないと!そう思い家の外に出ると、パン屋の息子と出くわした。
「君、スカーレットを知らないか?」
俺の問いかけに、なぜかものすごい表情で睨むパン屋の息子。
「スカーレットなら、今治療が終わってベッドで寝ている」
治療とは一体どういう意味だ?ベッドで寝ているだと?
「すまない、言っている意味が分からない。詳しく教えてくれるか?」
「スカーレットは、レスティンと言う細菌に感染していたんだ。免疫力が低下すると、掛かりやすくなる病気だ。最初は食欲がなくなり、体に湿疹が出来る。それが悪化すると、発熱や頭痛などが起こり、体が動かなくなるんだ。スカーレットは随分進行していた。あんた、夫だろう?どうしてあんなにも悪化するまで放っておいたんだ!もう少し遅ければ、スカーレットは助からなかったんだぞ!」
涙を流しながらそう訴えるパン屋の息子。スカーレットが病気だっただと?頭を鈍器で殴られた様な衝撃を受けた。もうすぐで俺は、スカーレットを失うところだったと言うのか。
「それで、今スカーレットはどこにいるんだ?なぜすぐに俺に知らせなかった?」
「今病院にいる。でも、今日はもう面会は出来ないよ。それにまだ意識は戻っていないし…それから、スカーレットがあんたには知らせないでくれと言ったんだ。あんた、夫なのにスカーレットに全然頼りにされていないんだな。騎士団長か何か知らないけれど、自分の妻も守れないなら、結婚なんかすんなよ!」
そう言って去っていったパン屋の息子。スカーレットが俺には知らせないでくれと言ったか…俺は一体、何のために働いているのだろう…一番守りたい人を守れないなんて…
とにかく今すぐスカーレットに会いたくて、病院へと向かった。
「夜分すみません、こちらに入院しているスカーレットの夫です。どうか妻に会わせて下さい!」
受付で必死に訴えるが
「申し訳ございません。今日の面会時間は既に終了しております。どうか、明日またいらしてください」
そう断られてしまった。それでも諦めきれず
「せめて一目だけでもいいので、会わせていただけませんか?お願いします」
何度も何度も頼んでみたものの、結局病室には入れてもらえなかった。その時だった、俺の通信機に通信が入る。
“グレイ、いつまで家でのんびりしているんだ。早く騎士団に戻って来い”
スティーブンからだ。正直今騎士団に戻っても、仕事が手に付かないだろう。それでも、このまま何も出来ず家にいるよりはマシだ。そう思い、重い足取りで騎士団に戻ったのであった。
※グレイ視点とスカーレット視点、行ったり来たりですみません。
次回スカーレット視点に戻りますm(__)m
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