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第2章
第29話:やっと平和な日々が戻ってきました
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馬車の中でもずっと私の側に寄り添っているグレイ様。ふとグレイ様を見ると、小さな傷がいくつも出来ていた。それに、明らかにやつれている。きっとこの2ヶ月、かなり過酷な戦いを強いられてきたのだろう。
「グレイ様、家に帰ったら美味しいお料理をたくさん作りますね。何が食べたいですか?牛タンのシチューですか?それとも肉入りサンドウィッチ?」
「そうだな、スカーレットの料理なら何でも食べたいな。でも、君はまだ怪我をしている。出来たら、家でゆっくり休んで欲しい」
「あら、大した怪我ではありませんので、大丈夫ですわ」
そんな話をしている間に、家に帰って来た。家の前には心配そうに立つベスさんの姿が。
「スカーレット、無事だったんだな。お前の家のガラスが割られているうえ、姿が見えないから心配していたんだ」
そう言って駆け寄って来たベスさん。
「心配をかけてごめんなさい。実はちょっと誘拐されておりまして。でも、夫に助けてもらったので大丈夫ですわ」
「誘拐だって!そんな事をさらりと言うなよ。でも、無事でよかった。そうか、やっと旦那が帰って来たんだな。よかったな」
そう言って笑ったベスさん。本当にベスさんには色々とお世話になった。
家に帰ると、犯人たちに荒らされた家の片づけを行おうと思ったのだが、すぐに業者を呼んだグレイ様。私が片付けると言ったのだが
「スカーレットは疲れているんだ。こんな時くらい休んでいてくれ」
そう言われてしまった。見る見る綺麗になっていく家。さらにガラスも直してもらった。部屋が片付いたところで、グレイ様と一緒に買い物に出かけた。グレイ様の顔を見るなり、お店の人たちが
「騎士団長様が来てくれてから、一気に街の治安が良くなりました。本当にありがとうございます」
そう言ってお礼を言ってくれるのだ。グレイ様たちがアジトを攻めこんでいる2ヶ月の間に、みるみる治安が良くなった。正直もう1人で夜街を出歩いても問題ないくらい、治安がいい。
もちろん、そんな事はグレイ様が許してはくれないけれどね。その後、ベスさんのパン屋さんに2人で買い物にも行った。これからはこうやって、グレイ様と街に買い物に行く事も出来るだろう。
なんたって、こんなに治安が良くなったのだから。家に帰ると、早速夕ご飯の準備だ。なぜかずっとべったりのグレイ様。料理を作っている間も、私のそばを離れない。正直作り辛いが、それでもずっとそばに居てくれるのは嬉しい。
完成したお料理を食卓に並べ、食事スタートだ。でも何を思ったのか、私の隣にやって来たグレイ様。
「食事の時間も、隣にいたいんだ」
少し恥ずかしそうにそう言って、食事をしていた。その後は一緒にお風呂に入り、ベッドに入る。久しぶりに感じるグレイ様のぬくもり…これからはずっと一緒に眠れるのね。
翌日
「それじゃあ行ってくる。今日からは早く帰れると思うから」
「はい、行ってらっしゃいませ」
いつもの様に、騎士団へと向かうグレイ様。ずっと働き詰めだった騎士団員たちは、今日から交代で長期休暇を頂けることになっているらしい。ただ、騎士団長でもあるグレイ様は、アジトで捕まえたボスたちの取り調べや、フェリーチェ伯爵への報告があるらしく、長期休みを貰えるのは1ヶ月後になるらしい。
それでも、今日からは毎日晩御飯までに帰って来てくれる。それが嬉しくてたまらないのだ。
今までは当たり前だった平穏な生活。でも、この街に来てからは平穏な生活がいかに尊く、当たり前に訪れるものではないという事を、身をもって体験した。こうやって平和な日々を送られるのも、グレイ様含め、騎士団員が日々頑張って働いてくれているからなのよね。
さあ、グレイ様が帰ってくる前に、掃除に洗濯、それから買い物も行わないと。それに、きっと今日はミミリィさんがやってくるだろうから、お茶とお菓子も準備しないと。
何気なく空を見上げると、雲一つない真っ青な空が広がっていた。そう言えば、こんな風に空を見上げたのはいつぶりだろう。ふと腕に付いているブレスレットを手で触った。
これからもこの地で、グレイ様と手を取り合って生きていくのね。もしかしたら、また治安の悪い街に異動になり、心配な日々を過ごすかもしれない。それでも、きっともう大丈夫だろう。だって、こんなに大変な危機を乗り越えたのだから。
いつも自分に自信がなく、周りに流されて生きて来た。グレイ様に出会って、少しだけ強くなれた気がした。それでも、自分の弱さに押しつぶされそうになったこともある。
でも今は…
この街に来て、間違いなく私は強くなった。これからもグレイ様の妻として、自分に自信をもって生きていこう。そして、どんなことがあっても、グレイ様の手を離さない。
美しい青空を見つめながら、そう誓ったスカーレットであった。
おしまい
~あとがき~
これにて本編完結です。
最後までお読みいただき、ありがとうございましたm(__)m
「グレイ様、家に帰ったら美味しいお料理をたくさん作りますね。何が食べたいですか?牛タンのシチューですか?それとも肉入りサンドウィッチ?」
「そうだな、スカーレットの料理なら何でも食べたいな。でも、君はまだ怪我をしている。出来たら、家でゆっくり休んで欲しい」
「あら、大した怪我ではありませんので、大丈夫ですわ」
そんな話をしている間に、家に帰って来た。家の前には心配そうに立つベスさんの姿が。
「スカーレット、無事だったんだな。お前の家のガラスが割られているうえ、姿が見えないから心配していたんだ」
そう言って駆け寄って来たベスさん。
「心配をかけてごめんなさい。実はちょっと誘拐されておりまして。でも、夫に助けてもらったので大丈夫ですわ」
「誘拐だって!そんな事をさらりと言うなよ。でも、無事でよかった。そうか、やっと旦那が帰って来たんだな。よかったな」
そう言って笑ったベスさん。本当にベスさんには色々とお世話になった。
家に帰ると、犯人たちに荒らされた家の片づけを行おうと思ったのだが、すぐに業者を呼んだグレイ様。私が片付けると言ったのだが
「スカーレットは疲れているんだ。こんな時くらい休んでいてくれ」
そう言われてしまった。見る見る綺麗になっていく家。さらにガラスも直してもらった。部屋が片付いたところで、グレイ様と一緒に買い物に出かけた。グレイ様の顔を見るなり、お店の人たちが
「騎士団長様が来てくれてから、一気に街の治安が良くなりました。本当にありがとうございます」
そう言ってお礼を言ってくれるのだ。グレイ様たちがアジトを攻めこんでいる2ヶ月の間に、みるみる治安が良くなった。正直もう1人で夜街を出歩いても問題ないくらい、治安がいい。
もちろん、そんな事はグレイ様が許してはくれないけれどね。その後、ベスさんのパン屋さんに2人で買い物にも行った。これからはこうやって、グレイ様と街に買い物に行く事も出来るだろう。
なんたって、こんなに治安が良くなったのだから。家に帰ると、早速夕ご飯の準備だ。なぜかずっとべったりのグレイ様。料理を作っている間も、私のそばを離れない。正直作り辛いが、それでもずっとそばに居てくれるのは嬉しい。
完成したお料理を食卓に並べ、食事スタートだ。でも何を思ったのか、私の隣にやって来たグレイ様。
「食事の時間も、隣にいたいんだ」
少し恥ずかしそうにそう言って、食事をしていた。その後は一緒にお風呂に入り、ベッドに入る。久しぶりに感じるグレイ様のぬくもり…これからはずっと一緒に眠れるのね。
翌日
「それじゃあ行ってくる。今日からは早く帰れると思うから」
「はい、行ってらっしゃいませ」
いつもの様に、騎士団へと向かうグレイ様。ずっと働き詰めだった騎士団員たちは、今日から交代で長期休暇を頂けることになっているらしい。ただ、騎士団長でもあるグレイ様は、アジトで捕まえたボスたちの取り調べや、フェリーチェ伯爵への報告があるらしく、長期休みを貰えるのは1ヶ月後になるらしい。
それでも、今日からは毎日晩御飯までに帰って来てくれる。それが嬉しくてたまらないのだ。
今までは当たり前だった平穏な生活。でも、この街に来てからは平穏な生活がいかに尊く、当たり前に訪れるものではないという事を、身をもって体験した。こうやって平和な日々を送られるのも、グレイ様含め、騎士団員が日々頑張って働いてくれているからなのよね。
さあ、グレイ様が帰ってくる前に、掃除に洗濯、それから買い物も行わないと。それに、きっと今日はミミリィさんがやってくるだろうから、お茶とお菓子も準備しないと。
何気なく空を見上げると、雲一つない真っ青な空が広がっていた。そう言えば、こんな風に空を見上げたのはいつぶりだろう。ふと腕に付いているブレスレットを手で触った。
これからもこの地で、グレイ様と手を取り合って生きていくのね。もしかしたら、また治安の悪い街に異動になり、心配な日々を過ごすかもしれない。それでも、きっともう大丈夫だろう。だって、こんなに大変な危機を乗り越えたのだから。
いつも自分に自信がなく、周りに流されて生きて来た。グレイ様に出会って、少しだけ強くなれた気がした。それでも、自分の弱さに押しつぶされそうになったこともある。
でも今は…
この街に来て、間違いなく私は強くなった。これからもグレイ様の妻として、自分に自信をもって生きていこう。そして、どんなことがあっても、グレイ様の手を離さない。
美しい青空を見つめながら、そう誓ったスカーレットであった。
おしまい
~あとがき~
これにて本編完結です。
最後までお読みいただき、ありがとうございましたm(__)m
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