お妃候補に興味はないのですが…なぜか辞退する事が出来ません

Karamimi

文字の大きさ
1 / 50

第1話:面倒な話を両親が持ってきました

しおりを挟む
「お嬢様、また木になんて登って!万が一落ちて怪我をなされたら、どうするおつもりですか?すぐに降りて来てください」

今日も専属メイドのクロハが、顔を真っ赤にして怒っている。相変わらずね。

「分かったわ、すぐに降りるから、少し待っていて」

スルスルと木から降りる。

「お嬢様は侯爵令嬢でございますよ。どうか令嬢らしくなさって下さいませ。もし今のお嬢様の姿を旦那様や奥様がご覧になられたら、どんなにショックを受けられるか…」

クロハがシクシクと泣きまねをしている。

「大丈夫よ。きっと元気になった私の姿を見たら、涙を流して喜ぶわ」

クロハに向かってにっこりとほほ笑んだ。

私、ヴィクトリア・シーディス、13歳。侯爵家の次女で、7歳上の姉と、5歳上の兄がいる。そんな私は、子供の頃から体が弱く、空気が綺麗な領地で療養という名目で暮らしている。最初は家族に会えなくて悲しかったが、今は固苦しい王都よりも、自然豊かな領地で伸び伸びと暮らしている方が幸せだ。

「全くお嬢様は。もうすっかりお元気になられたのに、旦那様や奥様をうまく丸め込んで、貴族学院に入学する14歳まで領地でゆっくり暮らしたいだなんておっしゃって」

「あら、私が体が弱かったのは本当なのだから、別にいいじゃない。それに、王都に戻った時に困らない様に、きちんと侯爵令嬢としてのお勉強やマナーは全てマスターしているわ」

一応私は侯爵令嬢、それなりのレッスンは受けて来たのだ。文句を言われる筋合いはない。

「確かにお嬢様のマナーは完璧ですが…だからって木登りはお止めください!それに乗馬や剣の扱いまでマスターするだなんて…て、こんな話をしている暇はなかったのでしたわ。急遽旦那様と奥様が、今夜いらっしゃるとの連絡が入りました。すぐにお着替えを」

「今日お父様とお母様が?ちょっと急すぎない?王都から領地までは、半日以上かかるのよ」

「ええ、ですから今朝早く王都を出られたとか…とにかく急いでお着替えを」

クロハに促され、急いで部屋と向かい着替えを済ます。

「それで、お父様とお母様は一体何をしに来るの?」

「それは私にも分かりかねます。ただ、使いの者の話では、かなり急を要する様でして…」

クロハも分からないらしい。ただ、両親が急いで来るだなんて、ろくな話ではないのだろう。とにかく、適当に対応して、早く王都に帰ってもらおう。

そんな事を考えているうちに、日が沈んだ。

「お嬢様、旦那様と奥様が間もなく到着するそうです」

「分かったわ。適当にあしらって、さっさと追い返しましょう」

「お嬢様!なんて事をおっしゃるのですか?本当にあなた様は」

隣でクロハが怒っているが、はっきり言って私は、この快適な領地生活を奪われるなんて御免なのだ。急ぎ足で玄関まで向かい、両親が来るのを待つ。しばらく待っていると、両親の乗った馬車が入って来た。

「私の可愛いヴィクトリア!会いたかったよ」

「また一段と美しくなって!可愛いヴィクトリア」

馬車から降りるや否や、ギューギュー私を抱きしめてくる両親。相変わらず熱烈ね。

「お父様、お母様、お久しぶりですわ。長旅でお疲れになったでしょう?どうぞこちらへ」

貴族令嬢らしく、微笑を浮かべ両親を中に通す。

「それで、今日はどのようなご用件でいらしたのですか?」

「それがだな、実は先日王太子殿下が、13歳のお誕生日を迎えられたのだよ。それで、本格的にお妃候補者を決めると言う話になって。その候補者に、ヴィクトリアが選ばれたんだ」

何ですって?私が王太子殿下のお妃候補にですって!なんて迷惑な話なの!

「お父様、私は王都にはずっとおりませんでした。そんな私が、なぜ?それに王宮で半年間、別の候補者たちと一緒に王宮で暮らさないといけないと伺っております。私は体が弱く、王都の、それも王宮で熾烈なお妃候補の戦いになんて参加させられたら、命が持ちませんわ…」

我が国では、王太子殿下が13歳になると、殿下と歳の近い侯爵以上の爵位を持った令嬢の中から、より優れた令嬢がお妃候補として選ばれる。そして選ばれたお妃候補者たちは、半年間王宮で生活をしながら、王妃教育を受ける事になっている。

そして半年後、お妃候補者の中から正式に王太子殿下の婚約者が選ばれることになっているのだ。

そんな面倒な世界に、誰が好き好んで入るものですか?何が何でも断らないと!そんな思いで、ポロポロと涙を流し、ゴホゴホと咳をして必死に訴えた。体が弱く、今にも消えてしまいそうな儚い令嬢を演じれば、両親は大体私の言う事を聞いてくれるのだ。

案の定

「可哀そうに。そうよね。あなた、ヴィクトリアにはお妃候補なんて、やっぱり無理よ。この子はただでさえ、体が弱いのだから。お妃候補になんてさせられたら、私たちの可愛いヴィクトリアが本当に死んでしまうわ」

ギュッと私を抱きしめ、必死にお父様に訴えているお母様。よしよし、いい流れね。このままうまく丸め込んで、両親には帰ってもらおう。


~あとがき~
皆さま、お久しぶりです。
少しサボっておりましたが、また少しずつ稼働し始めました。
今回はラブコメです。
よろしくお願いしますm(__)m
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

離婚寸前で人生をやり直したら、冷徹だったはずの夫が私を溺愛し始めています

腐ったバナナ
恋愛
侯爵夫人セシルは、冷徹な夫アークライトとの愛のない契約結婚に疲れ果て、離婚を決意した矢先に孤独な死を迎えた。 「もしやり直せるなら、二度と愛のない人生は選ばない」 そう願って目覚めると、そこは結婚直前の18歳の自分だった! 今世こそ平穏な人生を歩もうとするセシルだったが、なぜか夫の「感情の色」が見えるようになった。 冷徹だと思っていた夫の無表情の下に、深い孤独と不器用で一途な愛が隠されていたことを知る。 彼の愛をすべて誤解していたと気づいたセシルは、今度こそ彼の愛を掴むと決意。積極的に寄り添い、感情をぶつけると――

【完結】見返りは、当然求めますわ

楽歩
恋愛
王太子クリストファーが突然告げた言葉に、緊張が走る王太子の私室。 この国では、王太子が10歳の時に婚約者が二人選ばれ、そのうちの一人が正妃に、もう一人が側妃に決められるという時代錯誤の古いしきたりがある。その伝統に従い、10歳の頃から正妃候補として選ばれたエルミーヌとシャルロットは、互いに成長を支え合いながらも、その座を争ってきた。しかしーー 「私の正妃は、アンナに決めたんだ。だから、これからは君たちに側妃の座を争ってほしい」 微笑ながら見つめ合う王太子と子爵令嬢。 正妃が正式に決定される半年を前に、二人の努力が無視されるかのようなその言葉に、驚きと戸惑いが広がる。 ※誤字脱字、勉強不足、名前間違い、ご都合主義などなど、どうか温かい目で(o_ _)o))

私が生きていたことは秘密にしてください

月山 歩
恋愛
メイベルは婚約者と妹によって、崖に突き落とされ、公爵家の領地に倒れていた。 見つけてくれた彼は一見優しそうだが、行方不明のまま隠れて生きて行こうとする私に驚くような提案をする。 「少年の世話係になってくれ。けれど人に話したら消す。」

【完結】レイハート公爵夫人の時戻し

風見ゆうみ
恋愛
公爵夫人である母が亡くなったのは、私、ソラリアが二歳になり、妹のソレイユが生まれてすぐのことだ。だから、母の記憶はないに等しい。 そんな母が私宛に残していたものがあった。 青色の押し花付きの白い封筒に入った便箋が三枚。 一枚目には【愛するソラリアへ】三枚目に【母より】それ以外、何も書かれていなかった。 父の死後、女性は爵位を継ぐことができないため、私は公爵代理として、領民のために尽くした。 十九歳になった私は、婚約者に婿入りしてもらい、彼に公爵の爵位を継いでもらった。幸せな日々が続くかと思ったが、彼との子供を授かったとわかった数日後、私は夫と実の妹に殺されてしまう。 けれど、気がついた時には、ちょうど一年前になる初夜の晩に戻っており、空白だったはずの母からの手紙が読めるようになっていた。 殺されたことで羊の形をした使い魔が見えるようになっただけでなく『時戻しの魔法』を使えるようになった私は、爵位を取り返し、妹と夫を家から追い出すことに決める。だが、気弱な夫は「ソラリアを愛している。別れたくない」と泣くばかりで、離婚を認めてくれず――。

婚約破棄に乗り換え、上等です。私は名前を変えて隣国へ行きますね

ルーシャオ
恋愛
アンカーソン伯爵家令嬢メリッサはテイト公爵家後継のヒューバートから婚約破棄を言い渡される。幼い頃妹ライラをかばってできたあざを指して「失せろ、その顔が治ってから出直してこい」と言い放たれ、挙句にはヒューバートはライラと婚約することに。 失意のメリッサは王立寄宿学校の教師マギニスの言葉に支えられ、一人で生きていくことを決断。エミーと名前を変え、隣国アスタニア帝国に渡って書籍商になる。するとあるとき、ジーベルン子爵アレクシスと出会う。ひょんなことでアレクシスに顔のあざを見られ——。

冷酷侯爵と政略結婚したら、実家がざまぁされました

鍛高譚
恋愛
「この結婚は、家のため。ただの政略結婚よ」 そう言い聞かせ、愛のない結婚を受け入れた公爵令嬢リゼット。 しかし、挙式後すぐに父が「婚約破棄しろ」と命じてきた!? だが、夫であるアレクシス・フォン・シュヴァルツ侯爵は冷たく言い放つ。 「彼女を渡すつもりはない」 冷酷無慈悲と噂される侯爵が、なぜかリゼットを溺愛し始める!? 毎日甘やかされ、守られ、気づけば逃げ場なし! さらに、父の不正が明るみに出て、公爵家は失墜―― リゼットを道具として利用しようとした者たちに、ざまぁの鉄槌が下される! 政略結婚から始まる、甘々溺愛ラブストーリー! 「愛なんてないはずなのに……どうしてこんなに大切にされるの?」

「わざわざ始まるまでまたないで、今のうちに手を打ったってよくない?」

イチイ アキラ
恋愛
アスター公爵令嬢エステルは、夢をみる。それは先を映す夢。 ある日、夢をみた。 この国の未来を。 それをアルフレッド王太子に相談する。彼女を愛して止まない婚約者に。 彼は言う。 愛する君とぼくの国のためなら、未来を変えるのも仕方なくない?

【完結】うちの悪役令嬢はヒロインよりも愛らしい

らんか
恋愛
前世の記憶を思い出した今なら分かる。  ヒロインだからって、簡単に王子様を手に入れていいの?  婚約者である悪役令嬢は、幼い頃から王子妃になる為に、厳しい淑女教育を受けて、頑張ってきたのに。  そりゃ、高圧的な態度を取る悪役令嬢も悪いけど、断罪するほどの事はしていないでしょ。  しかも、孤独な悪役令嬢である彼女を誰も助けようとしない。    だから私は悪役令嬢の味方なると決めた。  ゲームのあらすじ無視ちゃいますが、問題ないよね?

処理中です...