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第29話:今更そんな事を言われても
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「アレックス様、一体どうされたのかしら?」
「私にもわからないわ。ただ、何度も我が家に尋ねて見えて。ユーリは領地に行っているからいないと伝えたのだけれど…そうしたら“ユーリに会いたいから領地にお邪魔させてもらいたい”と言い出して。さすがにお断りしたのよ。ユーリ、あなた、アレックス様にはっきりとフラれたのよね?」
「ええ、6度も告白して、6回ともフラれましたわ。それにはっきりと“私との結婚は考えられない”と言われましたし。もしかしたら、女としては見られないけれど、今まで通り幼馴染として仲良くしたいという事ではないでしょうか?それに私、アレックス様にフラれてから、学院をお休みしていましたし。単純に心配してくれただけかもしれませんし」
幼馴染として、私の事を単純に心配してくれていたのかもしれない。
「そんな感じではなさそうよ…ユーリ、もしアレックス様に会いたくないのなら、私からお断りしましょうか?明日もいらっしゃると言っていたし」
「大丈夫ですわ、お母様。明日私から、もう私に気を使って頂く必要はありませんと、はっきりと伝えます。それにアレックス様は、近々セレナ様と婚約されると伺っておりますし。いくら幼馴染であったとしても、アレックス様が私の事を令嬢として見ていなくとも、セレナ様の事を考えると距離を置いた方がいいと思いますの。その事も、はっきりと伝えますので」
「ユーリ、その事なのだけれど…」
「とにかく私は大丈夫ですわ。さすがに今日は少し疲れましたので、自室に戻りますね」
まだ心配そうなお母様に笑顔を向け、自室に戻ってきた。
今日アレックス様に会ったけれど、動揺や胸の痛みもなかった。私、きっとアレックス様の事を、ちゃんと過去の人に出来たという事よね。だから明日、2人で話をしても大丈夫だろう。
こう思える様になったのも、もしかしたらディアンのお陰かもしれない。
そっと窓の外を見た。ちょうど夕暮れ時の様で、空が真っ赤に染まっている。ディアン、今頃どうしているかしら?丘の上から、美しい夕日を見ているかしら?
でも王都と領地はかなり離れているから、同じ夕焼けを見る事は出来ないわね。それでも夕焼け空を見ると、なぜか幸せな気持ちになる。
またいつか、ディアンと一緒に美しい夕日を見られたらいいな…そのためにも、私も前に進まないと!
この日は私の為に、料理長が豪華な晩御飯を準備してくれた。その心使いがまた嬉しくて、沢山食べた。
そして翌日。
「アレックス様、ようこそお越しくださいました。どうぞこちらへ」
お昼過ぎ、アレックス様が我が家を訪ねて来たのだ。そんな彼を、客間に通す。
「ユーリ、これ。以前ユーリが並んで買ってきてくれた王都のお菓子だよ。僕もユーリの為に、自ら並んで買って来たよ。ユーリ、あの時はごめんね。自分で並んでみて、ユーリがどんなに大変な思いをしてお菓子を買ってきてくれたか、痛感したよ」
「わざわざあのお菓子を、並んで買ってきてくださったのですか?ありがとうございます。せっかくなので、一緒に頂きましょう」
メイドがすぐにお菓子とお茶を出してくれた。せっかくなのでお菓子を頂こうと、フォークを握った。それにしても、急にどうしてあの時のお菓子を買ってきてくれたのかしら?私にお使いを頼んだ時は、結局セレナ様と一緒に召しあがっていたのよね。
あの時の事を思い出した瞬間、どうしてもお菓子を食べる事が出来ずに、フォークを置いた。
「ユーリ、どうしたのだい?このお菓子、とても美味しいんだよ」
「申し訳ございません、なんだか食欲がなくて…」
「そうか、ユーリは昨日王都に戻ってきたばかりだものね。それじゃあ、後で食べてね。ユーリ、ずっと君に謝りたかったんだ。ユーリは今までずっと僕の傍にいてくれたよね。僕はいつの間にか、それが当たり前に感じていた。ユーリは何があっても、僕から離れる事はない。そう思っていたんだ。ユーリと会えなくなって、僕はユーリの大切さを知ったんだ」
この人は何を言っているのだろう。アレックス様の言っている意味が、私には理解できない。
「アレックス様、何をおっしゃっているのですか?あなた様は近々、セレナ様と婚約を結ぶのでしょう?」
「セレナ嬢と僕が?彼女とはただの友人だよ。確かに美しい彼女に惹かれたこともあったが、やっぱり僕は、ユーリの方が大切だって気が付いたんだ。ユーリ、今まで随分と待たせてすまなかった。ユーリと離ればなれだった1ヶ月間、ユーリに会いたくてたまらなかったよ。僕が鈍いばかりに、君には辛い思いをさせてしまってごめん。これからは、ユーリだけを大切にするよ」
「何をおっしゃられているのですか?あなたは私の事を、令嬢として見る事が出来ないのでしょう?私はもう、アレックス様の事は忘れて、前を向いて歩き始めております。どうかアレックス様も、私には気を遣わず、お好きな令嬢とご婚約なさってください。私もあなたに負けない様な、素敵な令息を見つけますわ。私、少し体調がすぐれませんので、これで失礼いたします」
すっと立ち上がり、部屋を後にする。
「待ってくれ、ユーリ。僕の話を聞いてくれ」
後ろからアレックス様の叫び声が聞こえるが、とても振り返る事なんて出来ずに、そのまま部屋を後にしたのだった。
※次回、アレックス視点です。
よろしくお願いします。
「私にもわからないわ。ただ、何度も我が家に尋ねて見えて。ユーリは領地に行っているからいないと伝えたのだけれど…そうしたら“ユーリに会いたいから領地にお邪魔させてもらいたい”と言い出して。さすがにお断りしたのよ。ユーリ、あなた、アレックス様にはっきりとフラれたのよね?」
「ええ、6度も告白して、6回ともフラれましたわ。それにはっきりと“私との結婚は考えられない”と言われましたし。もしかしたら、女としては見られないけれど、今まで通り幼馴染として仲良くしたいという事ではないでしょうか?それに私、アレックス様にフラれてから、学院をお休みしていましたし。単純に心配してくれただけかもしれませんし」
幼馴染として、私の事を単純に心配してくれていたのかもしれない。
「そんな感じではなさそうよ…ユーリ、もしアレックス様に会いたくないのなら、私からお断りしましょうか?明日もいらっしゃると言っていたし」
「大丈夫ですわ、お母様。明日私から、もう私に気を使って頂く必要はありませんと、はっきりと伝えます。それにアレックス様は、近々セレナ様と婚約されると伺っておりますし。いくら幼馴染であったとしても、アレックス様が私の事を令嬢として見ていなくとも、セレナ様の事を考えると距離を置いた方がいいと思いますの。その事も、はっきりと伝えますので」
「ユーリ、その事なのだけれど…」
「とにかく私は大丈夫ですわ。さすがに今日は少し疲れましたので、自室に戻りますね」
まだ心配そうなお母様に笑顔を向け、自室に戻ってきた。
今日アレックス様に会ったけれど、動揺や胸の痛みもなかった。私、きっとアレックス様の事を、ちゃんと過去の人に出来たという事よね。だから明日、2人で話をしても大丈夫だろう。
こう思える様になったのも、もしかしたらディアンのお陰かもしれない。
そっと窓の外を見た。ちょうど夕暮れ時の様で、空が真っ赤に染まっている。ディアン、今頃どうしているかしら?丘の上から、美しい夕日を見ているかしら?
でも王都と領地はかなり離れているから、同じ夕焼けを見る事は出来ないわね。それでも夕焼け空を見ると、なぜか幸せな気持ちになる。
またいつか、ディアンと一緒に美しい夕日を見られたらいいな…そのためにも、私も前に進まないと!
この日は私の為に、料理長が豪華な晩御飯を準備してくれた。その心使いがまた嬉しくて、沢山食べた。
そして翌日。
「アレックス様、ようこそお越しくださいました。どうぞこちらへ」
お昼過ぎ、アレックス様が我が家を訪ねて来たのだ。そんな彼を、客間に通す。
「ユーリ、これ。以前ユーリが並んで買ってきてくれた王都のお菓子だよ。僕もユーリの為に、自ら並んで買って来たよ。ユーリ、あの時はごめんね。自分で並んでみて、ユーリがどんなに大変な思いをしてお菓子を買ってきてくれたか、痛感したよ」
「わざわざあのお菓子を、並んで買ってきてくださったのですか?ありがとうございます。せっかくなので、一緒に頂きましょう」
メイドがすぐにお菓子とお茶を出してくれた。せっかくなのでお菓子を頂こうと、フォークを握った。それにしても、急にどうしてあの時のお菓子を買ってきてくれたのかしら?私にお使いを頼んだ時は、結局セレナ様と一緒に召しあがっていたのよね。
あの時の事を思い出した瞬間、どうしてもお菓子を食べる事が出来ずに、フォークを置いた。
「ユーリ、どうしたのだい?このお菓子、とても美味しいんだよ」
「申し訳ございません、なんだか食欲がなくて…」
「そうか、ユーリは昨日王都に戻ってきたばかりだものね。それじゃあ、後で食べてね。ユーリ、ずっと君に謝りたかったんだ。ユーリは今までずっと僕の傍にいてくれたよね。僕はいつの間にか、それが当たり前に感じていた。ユーリは何があっても、僕から離れる事はない。そう思っていたんだ。ユーリと会えなくなって、僕はユーリの大切さを知ったんだ」
この人は何を言っているのだろう。アレックス様の言っている意味が、私には理解できない。
「アレックス様、何をおっしゃっているのですか?あなた様は近々、セレナ様と婚約を結ぶのでしょう?」
「セレナ嬢と僕が?彼女とはただの友人だよ。確かに美しい彼女に惹かれたこともあったが、やっぱり僕は、ユーリの方が大切だって気が付いたんだ。ユーリ、今まで随分と待たせてすまなかった。ユーリと離ればなれだった1ヶ月間、ユーリに会いたくてたまらなかったよ。僕が鈍いばかりに、君には辛い思いをさせてしまってごめん。これからは、ユーリだけを大切にするよ」
「何をおっしゃられているのですか?あなたは私の事を、令嬢として見る事が出来ないのでしょう?私はもう、アレックス様の事は忘れて、前を向いて歩き始めております。どうかアレックス様も、私には気を遣わず、お好きな令嬢とご婚約なさってください。私もあなたに負けない様な、素敵な令息を見つけますわ。私、少し体調がすぐれませんので、これで失礼いたします」
すっと立ち上がり、部屋を後にする。
「待ってくれ、ユーリ。僕の話を聞いてくれ」
後ろからアレックス様の叫び声が聞こえるが、とても振り返る事なんて出来ずに、そのまま部屋を後にしたのだった。
※次回、アレックス視点です。
よろしくお願いします。
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