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第23話:ルシアナお姉様から聞いた真実【後編】

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「私、本当に今までデイズお兄様に甘えていたのですね。デイズお兄様がそこまで私の事を考えて下さっていただなんて。デイズお兄様ったら、私がいつ帰って来てもいい様にと、私の部屋と整えてくれていたり、ドレスを準備してくれていたり、中庭に私の好きなダリア畑を作ってくれたりしていたのですよ。本当にお優しい方」

改めてデイズお兄様のすごさ、優しさを実感した。

ただ…

「デイズ様ったら、フランソアが帰ってくる前から、そんな事をしていたの?やだ、気持ち悪い。あの男の事だから、もしかしたらフランソアがお妃候補を辞める様に仕向けたのかしら?あり得るわね」

なぜかとんでもない事を、ルシアナお姉様が言い出したのだ。確かルシアナお姉様とデイズお兄様は、昔からあまり仲が良くなったが、そこまでお兄様の事を悪く言うだなんて!

「ルシアナお姉様、デイズお兄様の事を気持ち悪いとは何ですか!さすがに失礼ですよ。それに私がお妃候補を辞退したのは、殿下が一夫多妻制にすると言ったからです。デイズお兄様は全く関係ありませんわ」

さすがに腹が立ったので、お姉様に抗議をした。

「ごめんごめん、そんなに怒らないでよ。フランソアが怒るなんて、珍しいわね。よほどデイズ様の事が好きなのね。よかったわ、少しだけ心配していたのよ。またあなたが、殿下の元に戻りたいなんて言わないかどうか」

「そんな事、言う訳がないでしょう?本当に訳の分からない事を言って」

「ごめんなさい。フランソア、そんなに怒らないで。普段怒らない子が怒ると、ちょっと怖いわね」

そう言って笑っているルシアナお姉様。もう、お姉様ったら!自由奔放なお姉様と結婚した、シャーレス侯爵も大変よね…て、そう言えばどうして侯爵も付いて来たのかしら?

「ルシアナお姉様、どうしてシャーレス侯爵もいらしたのですか?デイズお兄様と話がしたいとおっしゃっておりましたが、何かあったのですか?」

「…変なところで勘が働くのよね、フランソアって…」

「先ほど“シャレティヌ公爵家の行動一つで、今後この国が大きく変わる事も十分ある”とおっしゃっておりましたよね。それと関係があるのですか?」

この家に来た時にルシアナお姉様が呟いた言葉が、引っかかっていたのだ。

「本当に変に勘のいい子なのだから…実は今回の件で、王太子殿下に不満を抱いていた貴族たちが動き出しているのよ。あなたは知らないかもしれないけれど、王太子殿下には腹違いの兄がいるの。元王妃殿下が産んだ子供なのだけれど。本来なら彼が王太子になるはずだった。でも、体が弱いという理由で辞退して、今は母親の実家でもある侯爵領でひっそりと生活をしているの」

「そんな理由で王太子を辞退するだなんて…もしかして王妃殿下が、第一王子に何かしたのかしら?あの王妃殿下なら、やりかねないわね…」

「…本当に変なところ勘が働く子ね…そうよ、王妃殿下が裏で何度も第一王子を暗殺しようとしたの。第一王子の命を守るため、王位を放棄して侯爵領に避難したのよ。保護した元王妃殿下の実家でもある、パーソティ侯爵家を始め、保守派がずっと第一王子でもあるラファエル殿下を王太子にすべく、密かに動いていたの。それが今回の件で、一気に動き出し始めているという訳。ちなみに我がシャーレス侯爵家も、ラファエル殿下派の貴族なのよ」

何と!そんな動きがあったのね。

「それで今日、デイズお兄様にラファエル殿下派に付いてくれないかと、打診にいらしたのですか?私がお妃候補ではなくなった今、ジェーン殿下に遠慮する必要はありませんから。むしろ我が家は今回の件で、ジェーン殿下に恨みすら抱いていると考えても不思議ではありませんから」

「まあ、そんな所よ。というより、既に公爵家はラファエル殿下派に加わっているわ。今日は具体的な打ち合わせをしに来たのよ。それにしても、デイズ様の事に関してはびっくりする程疎いくせに、こういう事になると恐ろしいほど鋭くなるのね…さすが公爵令嬢だわ…」

ルシアナお姉様が苦笑いしている。いくら私が5年間王宮に閉じ込められていたからって、これでも公爵令嬢だ。こういった話には、敏感なのである。

「ただ、ラファエル殿下が王位を取り戻すとなると、一筋縄ではいかないでしょうね。王妃殿下はもちろん、陛下も反対するでしょうし…いくら一部の貴族たちが訴えたところで、そう簡単には覆らないでしょう」

「そうなのよ。ただ、ラファエル殿下も今がチャンスと思っている様で、近々王都に戻って来る予定になっているの。私も殿下に会った事があるけれど、とても誠実で、この人こそ王にふさわしいというタイプの人間だったわ」

「そうなのですね…」

確かにジェーン殿下は、自分の事ばかりであまり国王の器ではない。でも…

「フランソア、そんな顔をしないで。やはりあなたはジェーン殿下が王位を継いでほしいと思っているの?」

「いえ…私もジェーン殿下は国王の器ではないと思っております。ただ、もう王族には関わりたくはないというのが正直な感想ですわ。私は公爵家で、静かに暮らしたいのです。デイズお兄様と一緒に…」

王家のゴタゴタに巻き込まれるのはもう嫌なのだ。それに万が一、デイズお兄様が危険に晒されたら…そう思うと心配でたまらない。
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