悲劇の公爵令嬢に転生したはずなのですが…なぜかヒーローでもある王太子殿下に溺愛されています

Karamimi

文字の大きさ
9 / 55

第9話:クリス殿下の様子が変です

しおりを挟む
 ビックリして声の方を振り向くと、そこには必死に走って来るクリス殿下の姿が。そして、何を思ったのか、私とカーラの間に割って入ると、私を庇うような形で立ったのだ。

「カーラ嬢、何をしにリリアナの元を訪れたのですか?まさかこんなにも早い段階から、リリアナに近づいていただなんて!油断も隙も無い女だ!」

 ちょっと待って、クリス殿下は何を言っているの?いつも穏やかなクリス殿下が、こんな風に怒鳴るだなんて。怒鳴られたカーラも、びっくりして固まっている。

「クリス殿下、こんにちは。カーラ様は昨日の件で、私に会いに来てくださっただけですわ。ねえ、カーラ様」

「はい、私は昨日、リリアナ様にろくでなしの兄から救って頂いたのです!本当にリリアナ様には、感謝してもしきれない程の恩があります。今日も私の為に、肌に良い化粧水とカロリーの低いこのお菓子をくださって。リリアナ様は、私にとって神様の様な方なのです!リリアナ様の為なら、この命を差し出しても構いませんわ!」

 完全にスイッチが入ってしまったカーラが、クリス殿下に熱弁している。

「カーラ様、どうか私の為に、お命を差し出すような真似は絶対にしないで下さいね。クリス殿下、私たちは昨日色々とあり、本日友人になったのです。どうか私の大切な友人に、酷い事をおっしゃるのはお止め下さい」

 穏やかな表情で、クリス殿下に語り掛けた。

「リリアナとカーラ嬢が、友人だって…一体どうなっているのだ?こんな危険な女…」

 何やら訳の分からない事を、ブツブツと呟いているクリス殿下。

「クリス殿下、どうされましたか?」

「イヤ…何でもないよ。カーラ嬢、先ほどは失礼な態度を取ってしまって、申し訳なかった。今帰るところだったよね。気を付けて帰ってくれ」

 笑顔でカーラを見送るクリス殿下。

「ええ…それでは私は失礼いたしますわ。リリアナ様、ぜひ今度は我が家に遊びに来てくださいね」

「ええ、ぜひお伺いさせていただきますわ」

 私も笑顔でカーラを見送る。さて、カーラも見送ったし…

 ゆっくりとクリス殿下の方を向いた。すると、バッチリ目が合ったのだ。

「リリアナ、急に押しかけてすまなかった。ただ…昨日のお茶会で、リリアナの姿が急に見えなくなったから心配で。門番の話では、早々に帰ってしまったと聞いて。もしかして、王宮内で何か嫌な事があったのかと心配で心配で。いてもたってもいられなくて、つい公爵家に来てしまったんだ」

「そうだったのですね。申し訳ございません、昨日はカーラ様の件で色々とありまして。立ち話では何ですから、どうかお屋敷の中にお入りください」

 すぐにお屋敷に案内する事にした。

「クリス殿下、どうぞ」

 クリス殿下にはソファに座って頂き、私は向かいに座ろうとしたのだが…なぜかクリス殿下に腕を掴まれ、そのまま隣に座らされたのだ。どうして隣なのかしら?

 …まあ、いいわ。

「それでクリス殿下は、昨日のお茶会で私の姿が見当たらなかった為、心配して今日足を運んでくださったのですね。それは申し訳ございませんでした」

「君が謝る必要はないよ。それよりも、カーラ嬢と随分仲良くなった様だが…」

「ええ、昨日王宮でカーラ様が彼女の兄とその友人達から、酷い暴力と暴言を受けておりましたので、お助けしたことがきっかけで仲良くなりましたの。昨日は怪我をしたカーラ様を、お屋敷まで送り届けておりました。殿下にご挨拶もせずに帰ってしまい、申し訳ございませんでした」

 改めて昨日の件を、謝罪した。やはり主催者でもあるクリス殿下には、ご挨拶をした方がよかったわよね。私としたことが、ご挨拶を忘れるだなんて…

「そんな出来事があったのだね。優しいリリアナらしいな…ただ、カーラ嬢には気を付けた方がいいよ。彼女は…いいや、何でもない。もしかして僕に会うのが嫌で、早々に帰ってしまったのではないかと思って、心配で…」

「どうしてクリス殿下にお会いするのが嫌だと思われたのですか?」

 クリス殿下の言っている意味がよく分からず、首をコテンとかしげた。確かに漫画の世界でのクリス殿下には、良い印象を持っていないのは確かが…

「嫌われていないならいいんだ!よかった、リリアナはその…何でもないよ。リリアナは昔から面倒見がよかったから。昔皆でピクニックに行った時も、怪我をしたウサギを手当てしてあげていたよね。動物だろうが人間だろうが、傷つき困っているものには手を差し伸べる…こんなにも優しいリリアナに、僕は…」

 なぜか唇を強く噛み、今にも泣きそうな顔をしているクリス殿下。この人、一体どうしたのかしら?明らかに様子が変なのだが…
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【12月末日公開終了】これは裏切りですか?

たぬきち25番
恋愛
転生してすぐに婚約破棄をされたアリシアは、嫁ぎ先を失い、実家に戻ることになった。 だが、実家戻ると『婚約破棄をされた娘』と噂され、家族の迷惑になっているので出て行く必要がある。 そんな時、母から住み込みの仕事を紹介されたアリシアは……?

挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました

結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】 今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。 「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」 そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。 そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。 けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。 その真意を知った時、私は―。 ※暫く鬱展開が続きます ※他サイトでも投稿中

『二流』と言われて婚約破棄されたので、ざまぁしてやります!

志熊みゅう
恋愛
「どうして君は何をやらせても『二流』なんだ!」  皇太子レイモン殿下に、公衆の面前で婚約破棄された侯爵令嬢ソフィ。皇妃の命で地味な装いに徹し、妃教育にすべてを捧げた五年間は、あっさり否定された。それでも、ソフィはくじけない。婚約破棄をきっかけに、学生生活を楽しむと決めた彼女は、一気にイメチェン、大好きだったヴァイオリンを再開し、成績も急上昇!気づけばファンクラブまでできて、学生たちの注目の的に。  そして、音楽を通して親しくなった隣国の留学生・ジョルジュの正体は、なんと……?  『二流』と蔑まれた令嬢が、“恋”と“努力”で見返す爽快逆転ストーリー!

転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど⁉︎

水月華
恋愛
ヘンリエッタ・スタンホープは8歳の時に前世の記憶を思い出す。最初は混乱したが、じきに貴族生活に順応し始める。・・・が、ある時気づく。 もしかして‘’私‘’って悪役令嬢ポジションでは?整った容姿。申し分ない身分。・・・だけなら疑わなかったが、ある時ふと言われたのである。「昔のヘンリエッタは我儘だったのにこんなに立派になって」と。 振り返れば記憶が戻る前は嫌いな食べ物が出ると癇癪を起こし、着たいドレスがないと癇癪を起こし…。私めっちゃ性格悪かった!! え?記憶戻らなかったらそのままだった=悪役令嬢!?いやいや確かに前世では転生して悪役令嬢とか流行ってたけどまさか自分が!? でもヘンリエッタ・スタンホープなんて知らないし、私どうすればいいのー!? と、とにかく攻略対象者候補たちには必要以上に近づかない様にしよう! 前世の記憶のせいで恋愛なんて面倒くさいし、政略結婚じゃないなら出来れば避けたい! だからこっちに熱い眼差しを送らないで! 答えられないんです! これは悪役令嬢(?)の侯爵令嬢があるかもしれない破滅フラグを手探りで回避しようとするお話。 または前世の記憶から臆病になっている彼女が再び大切な人を見つけるお話。 小説家になろうでも投稿してます。 こちらは全話投稿してますので、先を読みたいと思ってくださればそちらからもよろしくお願いします。

転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。

琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。 ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!! スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。 ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!? 氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。 このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。

【完結】旦那様、どうぞ王女様とお幸せに!~転生妻は離婚してもふもふライフをエンジョイしようと思います~

魯恒凛
恋愛
地味で気弱なクラリスは夫とは結婚して二年経つのにいまだに触れられることもなく、会話もない。伯爵夫人とは思えないほど使用人たちにいびられ冷遇される日々。魔獣騎士として人気の高い夫と国民の妹として愛される王女の仲を引き裂いたとして、巷では悪女クラリスへの風当たりがきついのだ。 ある日前世の記憶が甦ったクラリスは悟る。若いクラリスにこんな状況はもったいない。白い結婚を理由に円満離婚をして、夫には王女と幸せになってもらおうと決意する。そして、離婚後は田舎でもふもふカフェを開こうと……!  そのためにこっそり仕事を始めたものの、ひょんなことから夫と友達に!? 「好きな相手とどうやったらうまくいくか教えてほしい」 初恋だった夫。胸が痛むけど、お互いの幸せのために王女との仲を応援することに。 でもなんだか様子がおかしくて……? 不器用で一途な夫と前世の記憶が甦ったサバサバ妻の、すれ違い両片思いのラブコメディ。 ※5/19〜5/21 HOTランキング1位!たくさんの方にお読みいただきありがとうございます ※他サイトでも公開しています。

見た目は子供、頭脳は大人。 公爵令嬢セリカ

しおしお
恋愛
四歳で婚約破棄された“天才幼女”―― 今や、彼女を妻にしたいと王子が三人。 そして隣国の国王まで参戦!? 史上最大の婿取り争奪戦が始まる。 リュミエール王国の公爵令嬢セリカ・ディオールは、幼い頃に王家から婚約破棄された。 理由はただひとつ。 > 「幼すぎて才能がない」 ――だが、それは歴史に残る大失策となる。 成長したセリカは、領地を空前の繁栄へ導いた“天才”として王国中から称賛される存在に。 灌漑改革、交易路の再建、魔物被害の根絶…… 彼女の功績は、王族すら遠く及ばないほど。 その名声を聞きつけ、王家はざわついた。 「セリカに婿を取らせる」 父であるディオール公爵がそう発表した瞬間―― なんと、三人の王子が同時に立候補。 ・冷静沈着な第一王子アコード ・誠実温和な第二王子セドリック ・策略家で負けず嫌いの第三王子シビック 王宮は“セリカ争奪戦”の様相を呈し、 王子たちは互いの足を引っ張り合う始末。 しかし、混乱は国内だけでは終わらなかった。 セリカの名声は国境を越え、 ついには隣国の―― 国王まで本人と結婚したいと求婚してくる。 「天才で可愛くて領地ごと嫁げる?  そんな逸材、逃す手はない!」 国家の威信を賭けた婿争奪戦は、ついに“国VS国”の大騒動へ。 当の本人であるセリカはというと―― 「わたし、お嫁に行くより……お昼寝のほうが好きなんですの」 王家が焦り、隣国がざわめき、世界が動く。 しかしセリカだけはマイペースにスイーツを作り、お昼寝し、領地を救い続ける。 これは―― 婚約破棄された天才令嬢が、 王国どころか国家間の争奪戦を巻き起こしながら 自由奔放に世界を変えてしまう物語。

『有能すぎる王太子秘書官、馬鹿がいいと言われ婚約破棄されましたが、国を賢者にして去ります』

しおしお
恋愛
王太子の秘書官として、陰で国政を支えてきたアヴェンタドール。 どれほど杜撰な政策案でも整え、形にし、成果へ導いてきたのは彼女だった。 しかし王太子エリシオンは、その功績に気づくことなく、 「女は馬鹿なくらいがいい」 という傲慢な理由で婚約破棄を言い渡す。 出しゃばりすぎる女は、妃に相応しくない―― そう断じられ、王宮から追い出された彼女を待っていたのは、 さらに危険な第二王子の婚約話と、国家を揺るがす陰謀だった。 王太子は無能さを露呈し、 第二王子は野心のために手段を選ばない。 そして隣国と帝国の影が、静かに国を包囲していく。 ならば―― 関わらないために、関わるしかない。 アヴェンタドールは王国を救うため、 政治の最前線に立つことを選ぶ。 だがそれは、権力を欲したからではない。 国を“賢く”して、 自分がいなくても回るようにするため。 有能すぎたがゆえに切り捨てられた一人の女性が、 ざまぁの先で選んだのは、復讐でも栄光でもない、 静かな勝利だった。 ---

処理中です...