もう長くは生きられないので好きに行動したら、大好きな公爵令息に溺愛されました

Karamimi

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第22話:覚悟はしていたけれど…

屋敷に戻ると、すぐに刺繍を入れ始める。ただ、手指が思ったように動かず、何度も何度も指を針で刺してしまった。

「私ったら、いつからこんなにどんくさくなったのかしら?」

ついため息が出てしまう。とりあえず大切なハンカチに血が付かない様に、1針1針、ゆっくりと縫っていく。

来週から貴族学院は1週間の休みに入る。それまでにどうしても完成させたいと考えているのだ。ブラック様のジュースのお陰で、最近は体調も安定しているが、いつまた治癒魔法の依頼が入るか分からない。

多分私の体の状況から考えて、次治癒魔法を掛けたら、もう命はないだろう。そう思っている。今までの経験上、そろそろ治癒魔法の依頼が来る頃だろう。あの人たちは、大体1ヶ月に1回のペースで治癒魔法の依頼を受けているからだ。

とにかくあと1週間でなんとかこの刺繍を完成させたいのだ。寝る間も惜しんで一生懸命刺繍を入れていく。こんな風に誰かの為に何か出来るだなんて、嬉しくてたまらないのだ。

ただ…

「ゴホゴホゴホ…」

無理をした途端、久しぶりに吐血してしまった。やっぱり私の体、もう限界なのね。とにかく今日はもう寝よう。あまり無理をして、学院に通えなくなると大変だ。

そう思い、今日は眠る事にした。翌日、朝早く起きて、少しだけ刺繍を入れた。

「痛っ!」

また針で指を刺してしまった。本当に私の手、もうダメね…さあ、そろそろ学院に行く準備をしないと。

既に体が思う様に動かなくなっている私は、着替えるのも一苦労。ゆっくり時間をかけて着替えるのだ。そして馬車に乗り込み、学院へと向かう。今日もブラック様が待っていてくれた。

「おはようございます、ブラック様」

「おはよう…て、ユリア。この手の傷、どうしたんだい?まさか誰かに!」

「いえ、違うのです。ちょっと針仕事をしていて、指を刺してしまっただけです」

「針仕事だって?君は伯爵令嬢だ。その様な事は、メイドにやらせればいいだろう。もしかして、君のお世話をしてくれるメイドがいないのかい?」

怪訝そうな顔で、問いかけてくるブラック様。

「いえ、針仕事と言っても、私が好きでやっているだけでして。だからその、気にしないで下さい!」

「そうか、それならいいのだが…今日は一段と顔色が悪い。とにかく、無理をするのは控えてくれ」

「はい、分かりましたわ。これからは気を付けます」

ブラック様に心配をかけてしまった。あまり無理をしない様にしないと。

その日から無理をしない程度に、刺繍を入れて行く。ただ、私の指の傷もどんどん増えていった。そのたびにブラック様に怒られるが、それでも刺繍を入れる事をやめるなんて出来ない。

彼の事を思いながら、1針1針丁寧に縫っていく。そしてついに

「出来た!」

ちょっと失敗してしまったが、それでも上手に出来たわ。綺麗にラッピングしたいところだが、私の部屋にはラッピング用のものなんてない。

う~ん、何かないかしら?

必死に探していると、昔友人からお誕生日に貰ったラッピングがでてきたのだ。有難い事にリボンもある。ピンク色のリボンだけれど、仕方ない。早速ラッピングをして、リボンで結んだ。

ブラック様、喜んでくれるといいな?そう思いながら何度もラッピングしたプレゼントを見つめる。

その時だった。

「旦那様がお呼びです」

メイドが私を呼びに来たのだ。急いで叔父様の元に向かうと

「明日、お前に治癒魔法を掛けて欲しいという方がいらっしゃる。本来なら学院を休ませたいところだが、ブラック殿が乗り込んでくると面倒だ。いいか、明日は昼食を食べたらすぐに帰ってこい。ブラック殿も、昼食まで一緒に居られれば、文句はないだろう」

ついにこの時が来たのね…

「承知いたしました」

覚悟はしていた。でも…あと少し…あと少しだけ生きたい。ブラック様や友人たちと一緒にいたい。そんな欲が出てしまうものだ。

フラフラと自室に戻ると、ベッドに横になった。きっと今回治癒魔法を掛ければ、私の命は尽きるだろう。それくらい私の体は、もう限界を迎えている。私達魔力持ちは、自分の死期を何となく分かっている。

私は次の治癒魔法で命を落とすことを。たとえ魔法を掛けた後、しばらくは生きられたとしても、それも数日の事だろう。

という事は、明日がブラック様や友人たちを会う、最後の日か…

ふとブラック様の為に作った刺繍入りのハンカチを手に取った。既に私の命が尽きる事が決まっている中で、こんなハンカチなんて渡したら、ブラック様にとって迷惑かしら?

でも…

数日以内に死ぬことが分かっているからこそ、今まで私に優しくしてくれたブラック様には、感謝の気持ちを伝えたい。それに、もしハンカチをブラック様に渡さなかったら、心残りのままあの世に行く事になる。

やっぱり渡そう。

それから、今まで仲良くしてくれた友人達にも、きちんと感謝の気持ちを伝えたい。ある意味、明日治癒魔法の依頼者が来てくれてよかったわ。休みのうちに来たら、私は皆ときちんとお別れを言えないまま、あの世に行く事になるところだったものね。

せっかくだから、友人達にも何かしたいが、今の私には何もできない。

とにかく明日、後悔しない様に過ごそう。そう心に誓い、眠りについたのだった。

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